10話 他愛もない話+α
今回から裏幻想郷編です。
あっ、今頃ですが原作設定を無視するシーンがあると思うので気をつけてください。二次創作設定等がもう出てるので遅いかもしれませんが(チルノを⑨とかetc)……。
今回は咲夜とうどんちゃん編です。あと5話以上はこのまま鈴咲編かと思います。思います(大事なことなので2回)。
また今回、うどんちゃんがチョロかったりします。
「ここは……?」
ぽつりと呟く声が漏れた。
ウサミミを立てながら周波が守矢神社と異なる確信を得て、場所はそこでは無いと解る――つまり、
「無事に裏幻想郷に到着した……ということでしょうか?」
「ええ、恐らくね」
会話相手は完全で瀟洒な従者――十六夜咲夜だ。
風が強いのが原因なのか二人とも髪が靡く。
「……確か……さとりから連絡が来るんでしたっけ?」
「そのはず……だけれど先に霊夢たちに連絡を取っているようね。今こちらに連絡が来て無いから」
咲夜の発言は的中してるだろう。だがそれよりも――
「――ここは、巨大な扉があって、そこから風を感じられる……。そして霊気が強い。幻想郷にありましたっけ、こんなの?」
ウドンゲはこの場所が分からない。正確には把握しきれていない。それに対して咲夜は把握しており淡々と応えた。
「恐らくだけれど、現世と冥界にある境に存在する結界――幽明結界よ。……幻想郷と違い、結界の効力が薄くなってないことね」
「咲夜、それってどういう?」
当然疑問が発生する。それはなぜ結界の名を所持するのに結界の役目をほぼ果たしていない方向で話を進めるのかということだ。
「鈴仙は来たことが無いのね。幽明結界は『春雪異変』で結界の力が弱まってそのままのはず……。それが弱まって無いなら裏幻想郷では『春雪異変』は発生しない……もしくはまだ起きてないわね」
咲夜は淡々と喋りながら情報を整理する。恐らく鈴仙と情報を共有したいのだろう。そう思った鈴仙も情報を共有する。
「あの……当たり前かもしれませんが…………幻想郷と少し違う部分があるというか……」
「――? それはどこかしら?」
「どこというか……全体的にです。例えば重力が若干だけど弱い、酸素量も幻想郷より少ない気が……、それ以外は今のところ判りませんけど……」
「……本当のようね」
なんとなく自然体にしてれば解ることだ。裏幻想郷は幻想郷にある理とは少しずれが生じている。……恐らくだが。
それを理解した咲夜は、
「鈴仙、白玉楼に行くわよ」
「……どういうことですか?」
「この先に白玉楼があるはずよ。そこで何かを得られるはずよ」
「いえ、そういう意味ではなく……重力や酸素量の話でなんで白玉楼に行くことになっているのかってことなんですけど……」
それは最もな意見だ。今の会話で白玉楼に行く案を提案するのは意味が分からない。
「簡単な話よ。藍が話してたことを思い出して。裏幻想郷には協力者が1人いる。それが幽々子だと、そう話してたわね?」
「――なるほど。つまり、白玉楼で幽々子に会えば今回の異変の手がかりを掴めるということですね!」
手を合わせて納得し、ウドンゲは少しはしゃぐ。
「ええ、そうよ。でも連絡が取れないのは結界が邪魔で紫が境界を行使しても白玉楼に侵入することができない……からかしら。それとも別の意味が――」
『もしもし、聞こえる?』
「――その声はさとりね?」
「わあっ!」
何処からか急に声が聞こえたのでウドンゲはその場で驚いてしまう。反して咲夜はすぐにさとりかどうかの確認をとっていた。
『ええ。さっそくで悪いけど白玉楼に行ってほしいそうよ。白玉楼の近くまできたらまた連絡するわ。もし着いても連絡が来なければ、そちらから連絡を。小型カメラから連絡できるわ』
「――?」
「ええ、分かったわ」
『ではまた』
何処からか現れた声は消える。そのとき何処からかプチッという音がした。
「小型カメラから連絡ってどういうことですかね? 咲夜が持ってるの?」
「……2つ分あるわよ。1つは私に、もう1つは鈴仙にね」
「私の分もちゃんとあるんですね!」
ウドンゲは嬉しがっているが咲夜は焦る表情を見せる。それに気付きウドンゲは咲夜を心配する。
「咲夜? ……もしかして小型カメラ持って無いってオチ?」
咲夜が苦悶の表情を浮かべる理由は多分そのぐらいのことだと思ってウドンゲは恐々と咲夜に問いかける。
「最悪よ……」
「えっ?」
咲夜がこんな言葉を放つということは相当なことだ。ウドンゲも呆然としてしまう。
「鈴仙、私たち小型カメラを無断で忍ばせられたらしい」
「――!?」
ウドンゲは驚きのあまり後ろに仰け反る。だがそれ以上の災厄がウドンゲに襲いかかる。
「……特に鈴仙は酷いわ。小型カメラがスカートの裏に……」
「――す、スカートの裏ですかぁ!?」
ウドンゲは慌てる。いくら女同士だからと言っても盗撮なんてあってはならない。そう思いウドンゲはすぐさまスカートを自分からめくる。
「どっ、どこ!? ……あれ? ない……?」
「――縞パンね」
「ひぐぅ!?」
咲夜に見られてしまい、ウドンゲは思わず声が漏れる。
ウドンゲは自身の眼と同じくらい赤面し、赤っ恥をかくこととなった。
「咲夜ぁ、騙したわねー」
「ふふっ、悪かったわね。――本当は右ウサミミの先端にあるわよ」
「え? 小型カメラはあるんですか?」
「もちろんよ。ほら」
咲夜はウドンゲの耳の先端にある小型カメラをとる。
「あっ、ホントだ。疑ってすいませ……あれ、でも咲夜は私を騙したよね。お礼は……すべきなの……?」
「これで貸し借りなしにして欲しいからお礼はしなくていいわね」
ウドンゲの戸惑いはここで止まる。それと同時に咲夜に訊きたい用件を訊く。
「そうですか……。そういえば咲夜はどこに小型カメラはあったの? あっ、実は咲夜のはスカートの裏に有って私が知らない間にめくってて。その赤っ恥を私に体験させようとしたのね」
ウドンゲはさっきのお返しとばかり咲夜を責める、が咲夜は感情の変化を殆ど見せない。
「いえ、私に付いてるカメラはまだ取ってませんわ」
「えっ? じゃあどこに?」
当然そう聞き返す。
すると咲夜は、
「ここよ」
そう言いながら手を伸ばすのは自身の胸だ。その谷間に手を伸ばし小型カメラを取る。
そこにはしっかりと小型カメラの姿が有った。
「――な、なんか負けた気分」
ウドンゲはその場でため息をつくようにそう言った。
「そろそろ白玉楼に向かいましょう。――? 鈴仙? 大丈夫?」
「……咲夜って天然だよね」
「そうかしら?」
これが天然で無ければ悪意の塊でしかないとウドンゲは思う。
「まぁ、それはそれとして……。この扉の先でしょ、白玉楼は? どうやったら行けるのかしら? 扉に結界があるなら無理じゃない?」
結界があるなら扉の先を行くことは不可能。なら結界を壊すしかない。普通ならそう考えるのが普通だろう。しかしこの巨大な扉を囲む結界の破壊は二人では難しい。だが、実はそれよりも圧倒的に簡単な方法がある。
「それは簡単よ。扉に入るのではなく、扉の上を越えればいいのよ」
「あっ、それなら簡単ですね」
実にシンプル。それ故に分かりにくいかもしれないが。
そして空を飛び、二人は裏幻想郷の白玉楼に向かった。




