ただいま
「また、いつか会おうな」
今思えば、あれが最後の会話だったっけな
あれからどのくらいたったのかな
私が大学に行くときだから、3年前くらいかな
あいつ、馬鹿みたいに泣いてたっけな
あの日の桜、綺麗だったな
あの頃通った高校までの通学路
商店街の喧騒とは逆に、しんと静まり返った国道沿いをゆっくりとゆっくりと歩く
まるで、あの頃の記憶を取り落とさないように
一歩、一歩、ゆっくりと確かに踏みしめながら
国道沿いから外れ、徐々に草木が目立ち始めると、
青々とした草木に紛れ、孔雀草の花が時折恥ずかしそうに顔を覗かせる。
改めて、地元に帰ってきたのだと実感する
ふと、孔雀草のそばに咲く花に目がいく
「あっ、この花、、、」
帰ってきてからずっとしていた強烈な匂いの正体を見つけ、思わず独り言を漏らす。
強く、甘い、どこか儚く懐かしい匂いの花
強い匂いとは裏腹に、小さい、直径1㎝にも満たないくらいの花
そういえばこの匂い、あいつが大好きだった金木犀の花だったな。
「なぁなぁ、知ってるか?こいつの花言葉はな「謙虚、謙遜」つってな。強烈な匂いのくせしてちっせえ花咲かすからそう言われてんだ。だから俺はな、俺はこいつらみてーに強く、優しく、謙虚に生きるのが夢なんだわ」
それが、あいつの口ぐせだった
そう話すあいつの目はいっつもキラキラしてた
あいつの、馬鹿正直なところ
泣いて、笑って、怒って、笑って、笑って、
いっつも必死で生きてた。
そんなあいつが大好きだった。
「また、会いたかったよ
なんで勝手に死んじゃうの。。。
いっつも勝手なんだよ。。。ばか。。」
会いたかったのに、言い訳ばかりして
会いに来なかった自分に涙が出た。
「遅くなってごめんね。帰ってきたよ。ただいま。」
金木犀の香りが少し優しくなった気がした。