命の名刀
L以外の四人は⑧へ入った。そこはこぢんまりとした部屋だった。中心に机がぽつんと置かれている。
「うわー、地面がぺちゃぺちゃしてる~」
「あの机には何かあるの? 調べてみましょう」
華桐が調べてみると、机には引き出しがついていることが分かった。しかし、鍵がかかっている。
「鍵開けお願いします」
ここまでの冒険の中で、華桐が鍵を開けることが得意なことは分かっていたので、当然の如くきりんせいじが華桐に頼んだ。
任せて、と早速鍵開けにとりかかった華桐だが、鍵穴の部分に針金が通らず、とうとう針金の方が折れてしまった。
「ごめん。錆びついていて上手くいかない」
「行くぜ、斬撃」
「中壊れないようにね」
開けられないなら、壊すのみ。
作戦変更し、きりんせいじは刀で斬りかかったが、運悪くスカッと空振り。るしのキックも上手いところには当たらなかった。結局、華桐が刀を借りて、引き出しを壊した。
無事、中身は安全に取り出すことができた。
中に入っていたのは、誰かの日記だった。
「せっかくだし、Lさんと一緒に読もうか」
「上に行こう」
④へ着き、Lと合流した。そして、中に引き出し付きの机があり、中から日記が出てきたことを説明した。
「私が読むね。ええと……」
『俺達はここの調査を命じられた探索者だ。
おかしな化け物が住み着いていると聞いた。
どうやら姿を変えられる特徴があるらしい。
その化け物は、玉座に行くと偽りの姿を脱ぎ捨てる。
そこへ行くヒントとして見つけられたものは、その場所では、秋、春、夏、冬、の順で季節が訪れ、一週間は金曜日から始まる。ということだけだ。
ゾンビから逃げてここに来たのはいいが、水が戻ってしまったらしく出られない。このまま死ぬしかないのか?』
日記はそこで終わっていた。
「……上にLさん残っていてもらってよかったね」
水の底にあった骨を思い出しながら、華桐が感想をこぼした。
「季節って、どういうことでしょう?」
「今はここにいても何もなさそうだ。メインルームまで行こう」
メインルームに入ろうとしたとき、
「ちょっと待ってください」
ニールが声をかけた。
「トラップがあるということ?」
るしの問いの答えは、すぐ目の前に存在していた。
ニールが制した先には、古くてゴテゴテとした装飾のある錆びたナイフが浮かんでいる。
突然の敵に、るし以外の三人の精神はまた削られることとなった。
「すみません、僕は戦闘専門外なんで」
一方ニールは、自分の役目以外では働く気はないらしく、一歩引いて戦闘には関わらないことを示した。
そんなニールに、せめて何か役に立ってもらえないかと、きりんせいじは尋ねた。
「ニールさん何か盾になるものない?」
「参考書なら持っています」
「それ使ったらアカン……」
「もう頭に入っているので!」
華桐の言葉に対し、ニールは顔をキリッとしてみせた。
そう話している間にも、ナイフはこちらに迫ってきた。きりんせいじは受け太刀を試みたが、はじき返しただけで、ナイフの動きを止めるには至らなかった。
「駄目みたいだ、借ります」
四人ともニールの参考書を受け取り、ナイフを受け止めようと機を伺った。そのときナイフよりも先に素早く動くことのできたるしが、飛んでくるナイフの前に参考書を構えた。
見事、ナイフは参考書にぶっ刺さった。
ナイフは自由を奪われてたまるかと、本から抜き出ようと振動を与えている。
本を持っているるし以外の三人が、力を込めてそれを封じようとしたが、全員失敗。
本からナイフが逃げてしまった。
「くそッ!」
自由になったナイフは、再びこちらに襲い掛かってくる。
きりんせいじが咄嗟に受け太刀しようとしたが、態勢が悪かったのか、刀の辺りどころが悪かったのか、最悪の事態が起こった。
それは全て、スローモーションのように見えた。
飛んでくるナイフが、名刀の切っ先に勢いよく当たると、刀にミシミシとヒビが入り、割れた。
砕け散った破片は、るしに向かって飛んでいく。
るしは、寸でのところで回避した。
きりんせいじの精神は、このときはなんとか削れずに耐えたが、名刀は失われてしまった。
武器を失ったきりんせいじに、Lがドライバーを二つそっと手渡した。
だが、まだ戦闘が終わったわけではない。
茫然としているきりんせいじを尻目に、今度は華桐が本で受け止めることに成功。再び、ナイフは本に刺さった状態となった。
今度こそと、Lが力を込めてナイフをしっかり掴まえた。
ナイフは動かなくなった。
「勝っタ!」
「名刀を折った罪、許さない……!」
きりんせいじは、残った刀身でナイフを粉々に砕いた。
怨みは相当深そうだ。
「……どんまい」
「刀の魂は拾っておくよ」
きりんせいじは見るからにしょんぼりしている。
ナイフを倒し、一行はメインルームへ入った。
華桐が、先ほどからの疑問を再び口にした。
「そうだ、食糧庫で見つけた鍵、どうしよう?」
「鍵開けたらトラップ出そう。①に行きます?」
「どうぞご勝手にー」
「きりんさん、元気出しなよー……ごはんでも食べません?」
「行ってみましょうか」
華桐の提案により、食糧庫である⑥へ寄り道。
「ジュース飲もうよ」
華桐は見つけて来たジュースを、皆に配った。
「俺は飲めなイ……」
Lだけは断り、他の人は喉を潤した。
「じゃあオイル飲む?」
「いヤ……」
「フルーツ食べるか」
るしと華桐は、フルーツも食べた。
きりんせいじは、食欲がないらしかった。
それから一行は、①の部屋の前に立っていた。
「ここって、鍵がかかっているんだよね」
「七つの台座で手に入れた鍵かな?」
華桐が聞き耳を立ててみたが、特に音は聞こえない。危ない気配も感じなかった。
華桐は、念のためニールにも訊いておいた。
「ニールさん、ここは安全ですか?」
「はい、安全なはずですよ」
「鍵がかかっているのに、安全……?」
Lが首を傾げていた。
昨日は更新し忘れたまま出かけてしまい、帰ったのが12時近かったのでお休みしてしまいましたm(._.)m
すみませんでした。