インコンプリート 4 -だがそれは彼の罪ではないー
彼に与えられた役割は、ボタンを一つポンと押すだけのことだった。
そのことに彼が気付いたとき、すでに肉体は激しい大気の嵐と重力の作用でたわみ、ねじれ、もはや朽ち始めていた。と同時に意識の中で、憎悪が芯に張り付いていくのを感じた。それでも、彼はその突起に手を伸ばしたが、それも手遅れだった。
かよわく響く電子音の中、腕の細胞が組成と崩壊を繰り返すのを見つめながら、彼は生まれた意味を自問したが、それは無意味なことだった。いや無意味と感じる暇さえ彼にはなかった。