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プロローグ
男の名はたかし。どこにでもいるような名の平凡な男だ。
だが、こいつには唯一自分でもわからない癖のようなものがある。
それは、“人に嘘をついてしまうこと”だ。
どれだけ本当のことを言おうとしても、何かしらひとつ嘘を交えてしまう。
例えば、この前付いてしまった嘘は、大学の友人に対してのことだった。
「お前さ、かっこいいんだから彼女とかいないの?」
「ん?そうだな、常に付き合ってて、キープは百人くらいいるかな?」
「すっげぇ!!!」
もちろん嘘である。
生まれてこの方モテたことなどないし、彼女がいたこともない。
告白もなければ、そういうことに発展しそうな女友達さえいない。
友達、知人と呼べる者はみな男だし、顔もそんなにいい方ではない。
ただ、強いて言えば“鼻が高い”と言ったところだろうか?まぁ、それも、日本人にしては…というだけで、外国人には負けるのだが。
平凡男が主人公のこの物語、彼の嘘は大きいものから小さいものまで、全て規格外だが、お付き合いいただければ幸いだ。