終末論者の終わりのハジマリ
つい最近のある日ある時、ある街のこと。
独りな一人の終末論者がやって来た。
「どうせいつか世界は終わる」
「なら何をしたって意味がない」
そんなことを考えながら、日々を無気力に受け流しながら。
独りな一人の終末論者がやって来た。
朝、枕から顔を上げる度に、
終末論者は溜め息をつく。
「今日もまだ世界は続くのか」
がっかりとしたような表情で。
そして今日も終末論者は、
「生きる」という作業を繰り返す。
方舟のないノアの洪水。
神も人も生き残らない最終戦争。
X年Xデーの終末。
そんなソレらを待ち望みながら、
今日も「生きる」という動詞を繰り返す。
そんな終末論者も昔は、
とても幸せな男の子。
ある日突然全てを失い、
感情に任せて人を傷つけた。
その傷を癒そうにも、見えない傷は治しようがない。
無理矢理治そうとした結果、傷痕はただ広がるばかり。
ついに幼き終末論者も、深く見えない傷を負った。
その傷痕は今でも彼を、チクリチクリと苛んでいる。
「もしも世界が終わるなら、誰も傷つけないで良いのかな?」
「もしも世界が終わるなら、誰にも傷つけられないのかな?」
終末論者はそう思い、今日も酸素を吸い、二酸化炭素をちょっと多めに吐き出す。
「ホんトニソウオもッてるノ?」
そんな声が聞こえた気がした。