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神剣伝説 ガルディフォアラード  作者: りんか
【序幕】第二幕 『戦車と法王の奇想曲』
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5.彼女の行方 (1)

 キン、キン、キィン。

 金属同士のぶつかる音が、周りの空気を振動させる。

 金色のみつあみが跳ね、繰り出された横からの斬撃を、蒼色のポニーテールをなびかせた少女の大剣がそれを受け止める。

 迫る、黄金の瞳と蒼の瞳。

 真剣な眼差しの黄玉を捉え、湧き上がってくる昂りに自ずと笑みが零れ落ちた。

「なかなかやるじゃない。さすが、剣聖と謳われた血筋ね。だけど――!」

 グッと大剣に力を籠め、一気に押し返す。

 支えきれない、と判断したらしい細身が屈められ、無防備な足元を狙った回し蹴りが放たれた。

 ガッ、脹脛ふくらはぎに響く鈍痛。

「きゃあっ」

 思わず短い悲鳴を上げながら、崩れる均衡に周りの景色が旋回する。

 慌てて伸ばされた手に受け止められるものの、そのまま地面へ二人一緒に雪崩れこむ。瞬間、彼女の視界は真っ黒に塗りつぶされた。



 5.彼女の行方



「う……」

 不意に浮かび上がった意識に、ノラリダは緩々と瞳を開けた。飛び込んでくる、薄汚れた木目の天井。目を瞬かせながら、ゆっくりと上半身を起こす。途端、ズキズキと訴えられる頭痛に、額を押さえ呻き声を漏らした。

「気持ち悪い……。あたし、いつの間にベッドで寝ていたわけ……?」

 今にも混濁としていく意識にノラリダは軽く首を動かすと、昨夜の記憶を辿る。が、全く思い出せない自分に辟易へきえきとなりながら、唯一残されていた新しい内容を口にした。

「さっきのは夢、よね? 随分、懐かしい夢だったわ……。スゼルナたちと初めて会ったときの夢。帰り際にそうそう。あたし、あの子に一戦申し込んだのよね。そんなに乗り気じゃなかったけど、何とか押し切って……。接近戦で、あたしに勝てるやつなんていない! って思ってたから、あの時は悔しかったわ」

 クスクス、その時の自分を思い返しノラリダから自ずと微笑が零れる。それがキュッと引き結ばれ、彼女の表情が強張った。

 『ハルバイトラ北部の大森林が一夜にして謎の壊滅をした』――脳裏を過ぎっていく低めの声色に、彼女はこみ上げるもどかしさを吐き出すように、握り締めた拳を寝台に叩きつけた。



 ***



「……誰?」

 階下を見下ろしたノラリダが開口一番に呟いたのは、そんな疑問だった。

 黒いローブを身体にまとい、黒いフードで覆われた顔立ち、怪しい雰囲気全開のそんな男が、重い頭を抱えながら酒場の方へと降りてきた彼女の視界に、くっきりと映りこんでいた。

 彼が座っているテーブル席の両隣には、見知った幼馴染二人の姿。どこかしら険しい光を灯していた灰白色とオーキッドの瞳が、彼女を見止めた瞬間かすかに和らいだ。

「遅いっつーの」

「やっと起きてきましたね、ノラリダ」

「おはよう、セルム、ミハロス。今、どのくらい……?」

 額に手を当て前髪をそっと払いのけながら、ノラリダは気だるそうに問いかけた。

 すると、セルムが呆れたように腕を組み鼻を鳴らす。

「おはよう、じゃねえよ。もう昼近いぜ。おまえ、いつまで寝る気だったんだ?」

「あたし、そんなに寝てたの? ゴメン、何だか頭がズキズキしてさ……。昨日、セルムに貰ったやつ飲んでから、その後の記憶が全然ないんだけど……」

「でしょうね。派手にいろいろぶっ壊してくれましたから、貴女」

「は? 何のこと、ミハロス?」

「あとで、きっちり清算して貰いますからね。それより、ノラリダ。彼なんですが……」

 ミハロスのうながしに、ノラリダもまた黒フードの男へ視線を変えた。

 ふ、と沸き起こる違和感に彼女は眉をひそめると、あんたは……と口にしながら小首を傾げる。

(こいつ、どこかで見覚えがあるような気がするんだけど――、ってああ!)

 不意に蘇った記憶と目の前の人物が重なり、ノラリダはビシッと人差し指を突きつけ確認するように叫んだ。

「そうよ、あの時の変態男じゃない!」

「変態は余計だ。昨夜は、君が話を出来る状態ではなかったからな、今朝方改めて寄らせて貰った」

「そんなことどうでもいいわよ! ねえ、どうだったの? あの噂の真相は……!」

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