プロローグ
キン、キン、キィン。
金属同士のぶつかる音が、周りの空気を振動させる。
差し込む陽光を受け、金色の短髪が虚空に煌く。素早い動作で繰り出された横からの斬撃を、澄んだ大空を彷彿とさせる蒼髪の青年の大剣が受け止める。
迫る、黄金の瞳と蒼の瞳。かたや余裕を感じさせるほどに楽しげに、かたや少しばかりの焦燥と真摯さを伴って。
「やっぱ、おまえとの打ち合いが一番楽しいぜ」
そう感想を漏らしながら、金髪の青年が細身の剣を振るう。それをあっさりと捌くと、蒼髪の青年の大剣がブン、と重低音と共に宙を薙いだ。
おっと、と腰を屈めその一撃を見送った黄金の瞳が、一瞬だが冷酷さを纏う。ヒュン、と突き出された長剣が、蒼髪を数本斬り飛ばす。立て続けに放たれた流れるような剣舞に、大剣が翻弄される。
不利を悟った蒼の瞳が細められ、蒼髪が宙を踊った。二人の距離が十二分に開き、蒼髪の青年の掌が、スッと翳される。展開される、炎の精霊魔法。
「エフォード」
瞬間、疾る灼熱の光に、金髪の青年がぎょっとしたような表情を覗かせた。
迫る炎塊を剣の一振りでいなしながら、おいおい、と苦笑を浮かべる。
「魔法で遠距離攻撃とか、反則じゃね?」
「剣だけで、とは一言も言わなかっただろう、おまえは」
「ははは、そういやそうだ」
金に輝く前髪をかきあげ天を仰ぎながら、軽い口調で受け答える。
「じゃ、本気でやるか――久しぶりに」
トントン、と剣身の平部分で肩を叩きながら、確認するように一瞥される金色の瞳。
それに返されたのは、無言で真っ直ぐに向けられた大剣の切っ先だった。応、と読み取った金髪の青年の口元が綻ぶ。
「手加減なしだぜ? お互いに」
「ああ。……来い」
一触即発。高まる緊張に、真剣みを帯びた黄金の瞳と蒼の瞳が静かに絡み合った――瞬間。
不意に乱入してきた可愛らしい呼び声に、二人の青年の動きがピタリと止まる。一呼吸後、金髪の青年は右向きに、蒼髪の青年は左向きに――二人同時に、その声の持ち主へと視線が向けられた。