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8話 美波が異世界召喚されて63日目 前半

***美波が異世界召喚されて63日目 前半***


「升田さん良いお年を~」

「娘さんによろしくね~」


「皆さんも良いお年を~」

同僚に声をかけ手を振って、私はタイムカードを押し今年最後の仕事を終えた。


パパも今年の仕事納めは今日。

明日は1日大掃除をして翌日は美波の所……異世界に立っている。

おかしいわ

私、最近思考回路がおかしい。

異世界に立ってるって何なの?

常識が欠落して言っている感じがする…私の中二病は何十年も前に過ぎ去ったはずなのに!


はぁ。


そうだ、美波の使っていた洗顔やシャンプーとか…

持って行ってあげた方が良いのかしら?今更かな…?

まあトラベルセットに入れて渡してみよう。100均行こう。

私もパパも異世界への旅行の仕度しないとな…ウェットティッシュとか、エチケット袋とか要るかしら?

どうかな…タオルはとりあえず5枚ずつくらい持って行こう。

あぁ、掃除用のカビキラー買っておかなきゃ。

セスキも居るかしら?ガラスマイペットも必要かしら…


休み前の準備に思考を当てながら買い物をして、

玄関を開けた瞬間――私は固まった。


日焼けを起こしていた壁紙、靴箱。

時と共に古くなって、欠けてしまった靴箱の扉や玄関タイル、

すべてが巻き戻ったように色鮮やかに煌めいて、まるで新品みたいに…


築23年の平屋の戸建て。家族3人プラス猫2匹が暮らすには十分な我が家のマイホームが…

おかしい…


「…まるで新品みたいにきれいになってる…」


私は辺りを見回し、ある一点で視線が止まった。

私の視線を釘付けにしているのは、

きれいな姿勢で直立している――猫だった。


知らない、きれいな青い目の白猫がいる。

お腹のあたりで組んでいる前足は、まるで灰色の手袋を履いているようだった。


え?


その猫と目が合うと猫は深々と頭を下げてお辞儀をした。


『ママ様おかえりなさいませ』


「ママ様?え?」


『わたくし、お手伝い妖精のパールと申します。今後ともよろしくお願いいたします』


「妖精?パールちゃん?」


『はい。美波様の「年末の大掃除の手伝いヨロ」というご指示で、

ママ様のお掃除のお手伝いをするべく派遣されました』


(美波!また!何を!やっているのよ!)


「そ…そうなのね。じゃあここをこんなに綺麗にしてくれたのはパールちゃん?」


『わたくしが、掃除を。食事は同僚のスノーが担当いたしております』


優雅に笑っているその姿の後ろからドドドドという音と共に猫が3匹飛び込んできた。


『マママ様!お会いしたかったです!マママ様!!』


話しかけたのは、我が家の黒猫の大福と、灰色のトラ猫の空豆に噛みつかれている白猫が話しかけた。

白猫は元気に立ち上がって私に向かって礼をした。


「”マ”が多いわ…えっとスノーちゃんかしら?」


『はい!スノーでございます。マママ様。

“マ”が多いのはスノーがママ様に敬意をこめて多めに気持ちをぶつけるせいで多くなってしまうのです。そこのところを踏まえてよろしくお願いしますです。』


(あぁ……美波的な何かだ。そう、強烈なデジャブを感じる……)


「そ…う…わかったわ。えっと、スノーちゃんはなんで我が家の猫たちに噛みつかれているの?」


『美波様のご指示で新鮮カツオのチュールをおつくりしていたのです。

大福氏。空豆氏。食事の続きを致しましょう。

マママ様、御前失礼いたします』


「え…ええ。」


スノーちゃんも綺麗な白い毛並みの金目の猫…妖精さんなのね。あぁでもスノーちゃんは後ろ足にクリーム色の靴下を履いてる毛並みなのね。

3匹が台所に去っていくのを玄関で立ち尽くして見ていたら、パールちゃんがスリッパをそっとセットしてくれた。


『ママ様冷えますので、中にお入りください。居間も片づけは終わっておりますので、こたつで温まってくださいませ』


「え?あ…ありがとう。パールちゃんも一緒に暖まりましょう?」


パールちゃんに話しかけながら履いたスリッパは中の綿もおろしたての様にふかふかで、見るからに新品に見えた。どんな事したら新品みたいになるのか…聞いておきたいわ。お掃除の秘訣があるのかしら?


「今日、帰りに買い物行った時に、たい焼き買ってきたの。皆で食べましょう」


『たい焼き?』


「たい焼き」


『たい焼きとはどんなものでしょうか?』


「フフフ、お口に合えばいいんだけど。さぁパールちゃんもスノーちゃんも休憩しましょうね」


私がそう言うと、パールちゃんと、台所から会話が聞こえたのかスノーちゃんが顔を出して、口々に反応した。


『はっはい。ありがとうございます』


『マママ様優しい…美波様と違う……』


『こら、スノ――』

『あ!』


パールちゃんがすぐさま言葉をかぶせたけど、スノーちゃんの言葉に聞き捨てならないものが混じってることに気づいて私はニッコリ笑顔になる。

2匹は青ざめたように私の顔を見る。


そんな2匹に笑顔のまま言葉を紡ぐ。


「スノーちゃん、そのお話詳しく聞かせてほしいな――

私たちが知らない美波の向こうでの生活教えてくれるかな?」


私の笑顔の圧に身をすくめながら二匹は全力で首を縦に振るのだった。

年末年始の短い旅行期間に、美波の矯正に明け暮れないといけない。

そう心に誓った年の暮れだった。

読んで頂きありがとうございます✿次回更新は26日12時です。

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