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番外編 帰宅したくないパパ VS 帰宅するママ

一階の大きな窓のある部屋は、夕方になっても窓を開けたまま風を通している。

窓の外にはそのまま庭に出て、景色を見ながらお茶が出来るテーブルセットがあり、そこに私は座り沈む太陽を眺めていた。


長い休みも終わり明日には、年明けの出社。

久々に休みを満喫し、羽を伸ばして楽しかった。


異世界の美波の周りの人たちや、環境、友人…

どれをとっても一癖・二癖…百癖くらい、ある方々だったけれど――

楽しそうに美波が笑う姿に安心した。


コトンと、目の前に湯呑が置かれ、その中には可愛い白い花と緑のお茶が入っていた。

私は漂ってくる香りに笑顔になる。


「パールちゃんが淹れてくれるこの緑茶は、美味しいわ。ありがとうね」


『いいえ、ママ様が喜んでくださって私も嬉しゅうございます』


軽く会釈したパールちゃんはお仕事に戻っていった。

二足歩行で歩く猫の妖精パールちゃん。

彼女の仕事も、美波の生活改善にお説教してからだいぶマシになったみたいで良かった。

願わくは私たちが帰宅した後、妖精ちゃん達に甘えて元に戻らない事を祈るばかりだわ。

そう思いながらパールちゃんの入れてくれたお茶を飲んで一息ついた私は席を立って荷物を持った。そうしてずっと視界から背けていた現実と向き合う。


「嫌だ―帰りたくない―――!!

美波ちゃんと一緒にいる―――!!」


帰宅に駄々をこねるパパ


「まだ美波ちゃんと一緒に冒険する!絶対する―――!」


「パパ凄かったもんね。もうすぐあのレッドドラゴンも単独討伐出来るんじゃない?」


「だよね――!僕才能あるよね!」


先ほどから帰りたくないパパ&帰したくない娘がタッグを組んで

ピーチク・パーチクさえずっている。

かれこれ昼過ぎからだから…何時間騒いでいるのかしら…困ったわね。


「そう。わかった」


私の言葉に二人は嬉しそうに顔を上げこちらを見てきたので、私はニッコリ笑って


「ママは帰ります」


「えぇぇぇ―――!!」


二人の声が広い庭に響いた。まるで現実の世界まで反響しそうな勢いで。

私はジト目で二人を見て、静かに告げる。


「わがまま言うなら、もうご飯は作りません。以上。」


パパの肩がスライムみたいに萎んだ。

美波はしゅんとしながらも、唸りながらもコクリと頷いてくれた。

良い子、良い子と頭を撫でると、撫でてる手に頭を寄せてきてもっと 私の手に頭をこすりつけてくる。

まるで「もっと撫でて」をする犬みたいに素直だ。


「次はゴールデンウィーク。案内、頼んだわよ」


美波は小さく「……うん」とうなずき、笑った。


さて、その横で砂地に”の”の字を書き始めたパパの肩に手を置き私は笑いながら言う。


「こっちに来たら娘に日本のお菓子貢げなくなるけど良いの?

そして私に”離婚”の2文字を突き付けられるけど、それでもいい?」


パパはブンブンと首を横に振り、荷物をもって立ち上がる。


「だって、だって…冒険したい!

斧とか、モーニングスター振り回してもいい世界なんて、

男のロマンなんだぞ!

美波からもらったモーニングスターには痛風くん1ゴウって名前を付けたんだ!」


いやいや……なんだその名前…美波が横で「痛風って…」と呟いている。

本人は涙を目に溜めながら必死に言ってるので、苦笑してしまう。


「じゃあ、明日からの仕事頑張って、また長期休暇にここに遊びに来よう

その時はその、モーニングスター使ったらいいでしょ」


「次は有給含めて1ヵ月くらいの長期休暇取っていい?」


「夏休みか!……まぁ良いけど…私そんなに休めないけどね―――」


次来るときは、ダンジョン探索行きたいと少年の様に語るパパに苦笑しながら

愛猫の空豆と大福もキャリーに入れて、ようやく帰るように支度が出来た。

寂しそうにする美波に笑顔を向ける。


「ねー美波」


「なーに?」


「楽しかったわ。だからまた呼んで。一緒に過ごしましょうね」


私の言葉に美波も笑う。

そうこれが最後じゃない。

また長期休みに会えるから。


「も―――分かった。きちんと送るから!」


そう言うとここに来る前に現れた黒い丸いものが現れた。それが少しずつ広がり

私達くらいの大きさになったところで、パパが叫ぶ


「美波ちゃん身体大事にして無理しないようにね」


「またね!美波」


そう言った私達を黒い空間が飲み込み次の瞬間

我家の台所の冷蔵庫前に私達夫婦は立っていた。


家の中は出かける前の掃除された状態で、少し空気がこもっている感じがする。

キャリーの蓋を開けて愛猫たちを出してから、ボーっとしているパパに言葉をかける。


「パパはお風呂沸かして。私洗濯するから」


私の言葉にパパは頭を掻きながら


「あぁ…そうだな。風呂な…風呂」


そう言いながらお風呂場に向かって歩いて行った。

旅行中に溜まった洗濯物を仕分けして、第一陣をセットしスタートボタンを押して一息つく。


「あ!休みの間の年賀状とポスト見ておかないと」


そう思い玄関を開けて外に出てびっくりした。

…美波の家の庭で見たあの大きな木が狭い庭にそびえていた…

我が家の庭に合う様多少変化しているけど


「何やってんのよ!美波――――!!」


帰ってそうそう、美波の暴走に振り回される母の声が住宅街に響くのだった。


(完)

読んで頂きありがとうございました✿完結になります。

ココまでお付き合い頂けてありがとうございました✿(●´ω`●)

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