「よし、やってみよう 可愛い子だらけのスタジオへ」
「いよいよレッスン見学か…緊張するな」
週末の午後、しおりはまどかが用意してくれた地下アイドルの練習スタジオに足を運ぶことになった。
薄暗いビルの階段を上がると、そこには音楽が漏れ聞こえる扉がある。
「ここかな…」
ドアを開けると、そこには数人の女の子たちが鏡の前で振り付けの確認をしている姿が見えた。
「しおりさん、こっちこっち!」と呼ぶ声に振り向くと、まどかが笑顔で手を振っている。
「ごめんね、急に呼び出して。でもぜひ見てほしくて」
そう言われ、しおりは「う、うん。みんなすごい可愛いし…」と少し面食らった表情を浮かべた。
実際に目にする彼女たちは思った以上に華やかで、しかも笑顔がきらきらしているから眩しいほどだ。
「私、ああいう場所で踊ったらどうなるんだろ…」とついイメージが先走る。
まどかは「女性メンバーばかりだし、スタッフもわりと女性が多いから大丈夫。男性もいるけど、優しい人ばかりだよ」と言い添えるように笑う。
そんな言葉にしおりはほっとする一方で、まだ不安も拭いきれない。
「ねえねえ、もしかしてあの子が新しく来てくれる子?」
奥から、明るい茶髪の女の子が駆け寄ってきた。
「私はこのグループのセンターやってるリナっていうの。よろしくね!」
リナはしおりの両手をぎゅっと握って、「一緒に踊れるの楽しみ!」と目を輝かせる。
あまりの距離感の近さに、しおりは顔を赤くして「え、えっと…よろしく…」と照れ笑いしかできない。
他のメンバーも集まってきて、「ダンスすごいって聞いたよ」「男の人苦手らしいけど、女の子同士なら一緒に楽しもうね!」と口々に声をかけてくれる。
その温かい雰囲気に、しおりの警戒心はすーっと溶けていくかのようだった。
「こんな環境なら、もしかしたらやっていけるかも…」と胸がじんわり熱くなる。
するとまどかが、スピーカーのそばで操作パネルをいじりながら「しおりさん、せっかくだしちょっと踊ってみませんか?」と誘ってきた。
「え? 私、一応見学に来ただけで…」 遠慮するしおりに、リナたちメンバーが「見たい見たい!」と手を叩いて盛り上がる。
その盛り上がりに背を押されるように、しおりは「じゃあ…ちょっとだけ」とOKサインを出す。
音楽がかかり、ビートがスタジオに響く。
一度踊り始めれば、しおりは自然とリズムに乗って身体を動かす。
ヒップホップの動きに慣れた足取りと、ちょっとキレのあるアクションに、メンバーが「おお…すごい…」と感嘆の声を上げる。
踊り終わる頃には、しおりも心地よい汗をかいていて、「楽しい…やっぱりダンス、最高だな」と笑みをこぼす。
まどかは目を輝かせながら拍手し、「やっぱりしおりさんならステージ映えすると思います! 一緒に頑張りましょうよ!」と手を差し出す。
その手を握る瞬間、しおりの頬は少し熱を帯びていた。
「私、やる…!」
その言葉を口にしたとき、確かにしおりは新しい世界へ足を踏み入れたのだと感じた。
男性が苦手でも、可愛い女の子とのステージに挑む気持ちが勝った。
まどかの笑顔と、メンバーの歓迎ムードに包まれながら、しおりは自分の中で「一歩進もう」という想いを固めるのだった。