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「日常の仕事と誘惑 夜ご飯の誘いが運命を動かす」

 翌朝、しおりはいつものアパレルバイトに向かうため、少し早めに家を出た。 下町の狭い路地を抜けて駅へ向かう道すがら、やっぱり頭をよぎるのは可愛い女の子のこと。

「昨日の子にまた会いたいな…」などと思いつつ、スマホでSNSをチェックすると、みちるからメッセージが届いていた。

「夕方、らんが『夜ご飯行こう』って言ってるけど、しおりはどう? それから、まどかさんがしおりに会いたがってるって! カタラーナ奢ってくれるらしいよ」

それを読んだ瞬間、しおりは思わず「まどか…誰だろ?」と首をかしげる。

ただ、「カタラーナを奢ってくれる」というフレーズに魅力を感じないわけがない。


 店に到着すると、女性客の多いそのアパレルショップはすでに何人かのお客さんでにぎわっている。

しおりは「おはようございまーす」と軽く挨拶しつつ、店内を見回してドキリとする。

通路の奥に、また可愛い系の女の子がいるのだ。

「いや、仕事しなきゃ」と自分に言い聞かせながらも、ついつい目が追ってしまう。

彼女が試着室に向かう様子をちらっと見ると、頭の中で「きゃー、似合いそう…」なんて盛り上がってしまうのが、しおりの悪い(?)癖である。


 「しおりちゃん、また可愛い子狙ってるでしょ?」と同僚の先輩が小声で笑ってくる。

しおりは「ち、違いますよー!」と否定するが、先輩はからかうようにウインクをする。

店長も「まあ、女性客に人気があるのは良いことだしね」と笑ってくれるが、しおり本人は内心落ち着かない。

男性苦手を理由にバイト先を選んだわけではないけれど、結果的に女性客の多いこの店は居心地がいい。

「ダンスでごはんを食べていきたいな…」と思う気持ちと、「ここで女の子と絡めるのも楽しそう」という気持ちがせめぎ合うのだ。


 夜が近づくころ、バイトを終えたしおりはスマホをのぞき込む。

みちるから新しいメッセージが来ていて、「らんさんが予約してくれたお店、駅前のイタリアンだって」と書かれている。

「もう…らんさん、相変わらず豪華そうなチョイス」

そう呟きながらもしおりは「よーし、可愛い女の子を見られるチャンスかも」と期待感をふくらませる。


 キャバクラNo.1の星川らんは、普段は夜仕事をしているはずなのに、こうしてしおりをかわいがって何かと誘ってくれる。

「昨日面白い話を手に入れたんだけど、あんたも参加してよ」と言われれば断る理由も見当たらない。

それに、みちるも一緒に来るとなれば、気兼ねなく楽しめるに違いない。

「それで、まどかって人…何者なんだろ?」

しおりは駅へ向かうホームでそう考えながらスマホをいじるが、みちるのメッセージには詳しいことが何も書いていない。

ただ、「カタラーナを奢るから会いたいって」なんて、よほどしおりのことを気にしているのだろうか。

甘いスイーツと可愛い女の子を想像しただけで、しおりの胸は早くもときめいていた。

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