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「本番の大失敗 衝突する思いと涙の口論」

 二次審査当日は、想像以上に広いホールに通され、しおりたち受験者は緊張感のある雰囲気に飲まれそうになる。

ステージにはカメラが数台セットされ、審査員席には初老のプロデューサー風の男性や、女性スタッフらが並んでいる。

「うわぁ…私、大丈夫かな…」

しおりは衣装を直しながら、思わず弱音を吐く。

まどかは「しおりさん、平気ですよ。私がそばにいるから」と微笑んでくれるが、今はそれすらも心強いと感じられないほど不安が大きい。


 順番が来てステージに上がると、男性スタッフがカメラをこちらに向けながら「振り付け、もう一度カメラ目線でもらえます?」と指示を出す。

しおりは「は、はい…」と返事しつつ、体がこわばるのを感じる。

後ろに立っている他のメンバーが「がんばれ」と口パクで励ましてくれるが、その期待に応えなきゃと焦るほど足が動かなくなる。

曲が流れ始めて振り付けに入ろうとするが、リズムをうまく捉えられずステップがズレる。

いつもは簡単にこなせるヒップホップの動きも、頭の中が真っ白で振りを飛ばしてしまう。


「やばい、どうしよう…」と焦るほど体は堅くなり、笑顔も作れなくなる。

ステージ袖で見守っているまどかが小さく首を振っているのが視界の隅に入って、「ああ、失敗してるんだ」と自覚してしまう。

踊り終えるころには、すっかり落ち込んだしおりと、微妙な雰囲気に包まれた空気がステージに残されていた。

審査員の拍手は義務的で、ほかの子たちに比べると盛り上がりがない。


 舞台裏に戻ると、まどかが「あ、あの…本来の力が出せなかっただけだよね?」と声をかけてくれる。

しかし、しおりは「ごめん、私が準備不足だったのかも。男性スタッフ多いのに慣れなくて…」と弱々しく答えてしまう。

そこへ追い打ちをかけるように、まどかも少し責任を感じたようで「いえ、私が勝手に応募したのに練習時間も足りなくて…ごめんなさい」とうつむく。

しおりの胸の中に、ほんの少し苛立ちが芽生えて「あのとき、相談してくれてたら…こんな失敗しなかったかも」と口走ってしまう。

驚いたまどかは「でも、私はしおりさんのためを思って…」と声を震わせる。


「私のため? 結局、急に決められて練習も十分じゃなかったから、こんな結果になったんじゃないの?」

しおり自身も言葉がきついと感じながら、感情が制御できなくなる。

まどかが目を潤ませて「私だって好きで無理させたわけじゃないのに…」とつぶやくと、二人の間に気まずい空気が広がる。

周囲のメンバーが「大丈夫?」と近づくが、しおりは何も答えられずにステージを後にするしかなかった。

「勝手に応募して準備不足だったんだから…」という言い方を残してきたしおりに、まどかが心底ショックを受けた顔をしていたのが胸に刺さって、言いようのない重さが心に積もる。

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