表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/107

 ラランは床の上に寝転がり、

 窓から朝日が差しこむのを充血した目で眺めていた。


(眠れなかった……)


 視線を横にむける。

 ベッドの上の毛布がこんもりと盛り上がって、

 ゆっくりと上下していた。



 ***



 昨晩、部屋に入ってすぐ、二人は明かりを消して眠った。

 ラランは床にシーツを敷いて横になった。

 着の身着のままであるため、身支度などはなく、

 即座に就寝体勢に入った。

 ラランが雨風をしのげる温かい宿に感謝しながら、

 うつらうつらしていると、

 遅れて支度を整えたアリエスがベッドに入っていった。


 ラランは誘惑にまけて、薄目を開けた。

 カーテンは半分開いていて、月光が差していた。

 月明かりに照らされた後ろ姿のアリエスが、

 視界に飛びこんでくる。

 ラランは一気に目が覚めてしまった。

 身内以外、ろくに女の子と触れ合ったことの無い、

 齢十八の少年ラランには刺激の強すぎる光景だった。


 当たり前だが、アリエスは鎧と兜を脱いでいた。

 後ろ姿だけでもそうとわかる美少女がいた。

 それも身体のラインが透けて見えそうな寝間着姿の……。


「おやすみ、ララン」アリエスの眠そうな声が聞こえた。

「明日はがんばろうね」

「おう。おやすみ……」


 ラランは必死で、平静を装って返事をした。

 元気よく高鳴る心臓の音が聞こえやしないかと、

 ヒヤヒヤしながら。

 しばらくして、

 アリエスの規則正しい寝息が聞こえてきた。

 悶々とするラランを夜に残して、

 アリエスは眠りの世界へ行ってしまったのだ。



 ***



 結局ラランは一睡もできずに朝をむかえた。


 アリエスが起きたとき、彼女は小さく悲鳴をあげた。

 窓から朝日が差していたことに驚いたのだ。

 カーテンがちゃんと閉まっていないことに驚いたし、

 日が差す前に起きて身支度を整えるつもりでもあった。

 みごとにどちらも失敗したわけだ。


 アリエスが起きて兜をかぶり、身支度を整えだした。

 その間もラランはじっと目をつぶっていた。

 アリエスに起こされるまで目は開けない、と決めていた。

 さもないと、このうっかり屋はきっと、

 とんでもない格好でそこにいるに違いない。

 少年騎士のふりなんて、

 どう逆立ちしてもできないような格好で。


 しばらくしてアリエスは身支度を終えたらしかったが、

 ラランを起こそうとはしなかった。

 かわりに鼻歌と、暖炉に薪をならべる音が聞こえてきた。

 次に火の呪文。

 その次は部屋の小さなテーブルで食材を切る音だった。


 どうやら朝食を作っているらしい。

 ラランはアリエスが料理する音を聞いていると、

 不思議と気分が落ち着いていくのを感じた。


 ラランはいつのまにか眠りに落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ