表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/107

一回休み

 ラランが目を覚ますと、ファルと目があった。


「あ! アリエス! アリエス!

 ララン、起きたよ!」

「! 本当!?」


 アリエスの顔がアップで目の前に現れた。

 ラランは少し血圧が上がるのを感じた。

 起き上がろうとすると脇腹に差すような痛みが走った。


「わっ!? 起きちゃダメ、寝てて!

 傷をいやす魔法はかけたけど、

 ものすごく簡単なもので、気休めだから……」

「ララン兄ちゃん、あんなに血ィ吐いたんだから、

 寝てなきゃダメだよ」


 ファルが手を頭の後ろで組みながらも、

 心配そうな表情で言った。


「血……? 血ィ、吐いたのか、おれ……?」


 声がうまく出ない。口を動かすとたしかに血の味がした。

 口の周りをこすると、

 赤黒い血がすこし固まってこびりついていた。

 腕が重い。

 血の味が気持ち悪くて、唾を吐こうとしたが、

 唾も出てこない。


「寝てて、寝てて。いいから」


 アリエスが肩をそっとつかんでラランを寝かせた。

 ラランは素直に横になり、ため息をついた。


「悪いな……。お前たちはケガなかったか?」

「うん。なかった。ラランのおかげだよ」

「おいらも大丈夫だ」

「そうか……」


 目を薄く開けて、周りの状況を確認する。

 あたりは薄暗い、森の中だ。

 暗く、木々がうっそうとしているせいで、

 見上げてもよくわからないが、

 馬車がころがり落ちていたことを考えると、

 ここはシルバ手前の谷だろう。

 日が沈んで夜になっているようだ。


 馬車は大破していた。

 原型をとどめておらず、

 あちこちに馬車だったものとおぼしき破片が、

 散らばっている。

 見える範囲に馬はいなかったが、確認するまでもない。

 死んでしまっただろう。


 明かりは……、アリエスが火を焚いている。

 上から、ディーノたちから、

 見つかるのではないかと思ったが、

 アリエスもその辺りは気を使ったらしい。

 枝や葉で簡易的なテントのようなものが組まれ、

 その中で小さく火を起こしていた。

 煙もほとんど出ていない。


 アリエスはその中で料理を作っているようだった。

 食材を切り、鍋の中に入れている。

 ファルがあちこち走り回って、

 焚き木にする枝や木の実をとっているようだ。

 自分の身体に目をむけると、

 わき腹のあたりに包帯が巻きつけてあった。

 お世辞にも上手とはいえないような巻き方だった。

 地面の上に直接寝かされているのではなく、

 大きめの葉っぱを何枚も重ねてクッションにしてあった。


 と、アリエスと目があった。

 じろりとにらまれ、下を指さされた。

「寝ていろ」ということだろう。

 あるいは「大人しく寝ないとお前も鍋で煮るぞ」、

 という意味かもしれない。

 ラランは大人しく背中を葉っぱのベッドの上に横たえた。

 そこらじゅうから虫の声がする。

 どこからか獣の鳴き声も聞こえてきた。

 肉食獣のうなり声、とかではない。

 サルかなにかが喧嘩しているような声だ。

 だが、時々騒がしくなることを除けばおおむね、静かだ。

 アリエスが火に薪をくべている。

 ファルの足音があっちこっちから聞こえてくる。


 ラランは目を閉じた。

 正直まぶたはずっと重かった。

 起きていないといけないと思っていたが、

 そう思っているのはどうやら自分だけのようだ。

 怖い怖いリーダーにこれ以上にらまれる前に、

 自分から眠ってしまおう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ