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神無き世界  作者: ヤング丸
序章 始まる物語
9/20

序章 第六話 深緑の獣


 天空大陸 下層 観客席


 時間が進むにつれ医療班と【翼の守り人】に仕事が舞い込んでくる。


 シュミター作ブレスレットのおかげもあり、死人こそ出ていないものの強制転移(テレポート)されてきた受験者は皆重症。


 そんな彼らの仕事とは他ならないリタイア者の治療と救助。

 中には骨折しているものすら居る。

 そんな彼らを癒す。


 傷ついた受験者を【翼の守り人】が運び、主にエルミーゼ直属の医者達が癒しの魔法や特注のポーションなどで回復させる。


「傷が完治したら意識ある人は観客席に!!意識の戻らない人は隣のベッドルームに運んで!!」


 そんな彼女等、看護師(ナース)は次々に来るリタイア者のヒールを難なく熟す。


「今年はリタイア者が多いわね」


 もうすぐで4時間が経とうとしている現在。

 リタイア者は400以上。

 例年よりも三割増しだった。


「Dランクモンスターが暴れてるのかしら?」

「さあ?私は去年も担当したけれどここまで居なかったもの」


「コラ!!そこ!!いつまでも話してないで仕事する!!」


「ひぃいいい!!」


 彼女等の上司が雷を落した。


 医務室はかなりの逼迫を見せておりヒーラーの数が足りない。

 一人で三人は同時に癒さなければ間に合わないほど。


「主任~エルミーゼ様を読んでくださいよ~」

「ダメよ。このくらいで頼るわけにはいかないでしょ。それにエルミーゼ様が離れれば観客の目に留まる。混乱なんて起こしちゃいけない。」

「それはそうだけど~」


 例年とは違う雰囲気を肌で感じながら看護師(ナース)達は己の任務を遂行し続ける。


 そうして時刻は試験終了まで残り8時間。

 ここから試験の本番が始まる。


「ここからよ!!疲労によるリタイア者が更に増えるわよ!!」

『ひぃぃぃぃぃいいいいい!!』


────────────────────────────────────


 次々に襲い来るモンスターを一匹また一匹と討伐を繰り返し、イルファルド達はポイントを稼いでいた。

 ミーナの魔法のおかげで、中域と同等の出力を持って戦い続ける。


 Fランクモンスター 討伐数 42匹

 Eランクモンスター 討伐数 5匹


 獲得ポイント 62p


「ミーナ。レスト(休憩)を挟もう」

「分かったわ」


 岩と岩の間、奇跡的に部屋のようになっているところで一度、荷物を下ろした。


 外からは隙間以外、中は見えずモンスターとの遭遇(エンカウント)を減らせる。

 飛行モンスターはどうにもならないが外よりは遥かにいい環境であることは間違いない。

 僕は【フィア・ナイフ】をいつでも抜けるように構えながら腰を下ろした。


 ミーナも僕と荷物を下ろし腰を下ろしたが、その顔から疲れが感じ取れ、大粒の汗も見える。

 理由は他ならない、魔法の行使が原因だろう。


 合流後一時間、常に魔法を使用し続けた結果、魔力が底を付こうとしている。


 魔法【リセル・アールグリム】は一度に三名までを対象として使用でき、効果も全ステータス上昇と破格を誇っている。

 しかしその分、消費魔力も大きく連続で使用すれば自分たちの首を絞める。


 既に連続三回。


 限界一歩手前。


「気が利かなくてごめん。」

「大丈夫よ。こっちこそごめん。足を止めて」


 不甲斐ない。

 僕が弱いせいでミーナにこんなに頼って謝らせてしまった。


 この作戦。誰の目から見てもミーナに頼りすぎている。

 僕以上にミーナは負担が大きく、アシストなど僕には何もできない。


「今、自分を責めてるでしょ?」

「え…なんで…?」

「分かりやすいのよ」

「っ!?」


 そんな顔に出てた!?

 僕が分かりやすく動揺を見せるとクスッとミーナが笑う。


「好きなだけ頼ってよ。仲間、パーティーである以前に友達なんだから」


 少し救われた気がした。


「勝つために何でもするわ。絶対に勝ちましょう」


 拳をこちらに突き出しニヤッと笑った。


「ありがとう。」


 突き出された拳に合わせる。

 本当に頼もしい。

 僕は弱いけど一人ではない。


「礼言う時間があるならもう行くわよ!!」

「それはそうとダメだ。まだ休もう」


 無理やり身体を起こしたミーナは、僕の静止であっさりと止まった。

 普段なら【身体強化】で絶対にミーナの方が押し勝つ筈なのに。


「僕の力に負けてる。まだ回復してないでしょ」

「もう大丈夫よ。このくらい」

「まだ大丈夫だよ。それにこの後は魔法の使用も控えよう」


 いざって時が来るかもしれない。

 その時まで温存し、これ以上の乱用はしない。


「作戦はある。任せて」


 ソロだった時に実行しようとしていた作戦。

 魔法に頼らずとも勝つためにやるしかない。


「少しは男らしいところ見せるよ」

「へー。なら大船に乗った気でいるわ」

「任せてよ」


 時間にはまだ余裕がある。

 南東の岩山地帯にはもう間もなく到着する。

 ここで勝負するしかない。


「イルファ。聞いてもいい?」

「何を?」

「色々あって聞けてなかったけど、セシルと何を賭けて勝負してるのよ」


 確かに何かとあって言えていなかった。


「ごめん。教えるべきだった。」

「話す時間がなかったもの。謝らなくていいわ」


 僕は昨日あったこと、事の顛末を語った。

 家から出ろと言われたこと。ランクルスを名乗るなと。

 そして僕が勝った際には数年前に何があったのか、それを聞く予定だと。


「姓の剥奪なんて…なんでそこまで」


 ミーナは勿論、僕も知らないセシルの思い。


「それに仲が悪くなったのに関係しているの?」

「それが僕にも覚えてないんだ」

「覚えてないって…」


 僕は何をセシルにしたのか。まったく覚えていない。

 仲が拗れたのは、恐らく二人で森に入った日。

 でもその日の記憶がすっぽりと抜けきっている。

 思い出そうとしてもまるで霧がかかっているように思い出せない。


「森に入った日。何が…」

「森って確かBランクモンスターに遭遇(エンカウント)したっていうやつ?」

「うん。あの日」


 当時二人で森に入り武器や防具の素材を集めていた。

 中層でモンスターが出たとしてもF、しかもかなり弱っている個体。

 当時から勇者と【翼の守り人】、それぞれに憧れていた僕達はそこで鍛錬を積んでいた。


 そんなある日。

 覚えていない空白の一日。

 僕達はBランクモンスター【フィア・ファルコ】に出会った。


「奇跡的に生還。それどころかセシルがあの年でBランクモンスターを討伐したって噂になったわよね。」

「うん。でも本人は討伐していないって言ってたけどどうなんだろう。」


 僕の装備している【フィア・ブリンガー】と【フィア・ナイフ】もその時の遺産。

 あの時、セシルは全ての素材を僕に譲ろうとしていたが、僕がそれを拒みセシルの槍にも使用されることになった。


 どんなに考えても答えは出てこない。


 そんな僕達の気持ちを無理やり切り替えるように、上空からモンスターの鳴き声が響いた。


「そろそろ限界ね」

「うん。行こう」


────────────────────────────────────


 イルファルド達が休憩を終え、再び進みだしたのと同刻。


 セシルは森林地帯に来ていた。


「案の定遭遇(エンカウント)が少なくなっている」


 イルファルドとすれ違うように森林地帯に入ったセシル。

 既に最初の遭遇(エンカウント)祭りは終わり、効率が落ちていた。

 その速度は試験開始直後のイルファルドとそこまで違いがない程度。


 既にポイントは162pと合格は確定。

 試験官はモンスターの討伐だけではなく、危機管理能力や環境の理解度など冒険者にとって必須の項目も審査するが、セシル程の得点が稼いでいれば無条件合格と言ってもいい。


 だがセシルの定めた規定(ポリシー)は違う。


「圧勝しに行く」


 完璧な勝利。

 それしか求めない。


「良いのが居た」


 効率も悪く、ちまちまFランクやEランクは狩らない。

 求めたのはセシルの魔力に逃げず、荒ぶる獣。

 そいつから立ち込める殺気を。


 木々を抜け少し開けた場所。

 そこに居る。


 筈だった。


「なにがあった…?」


 残っているのは今も鬣から魔力が流れている【グリアル・リーベ】その亡骸。

 ボロボロの亡骸は尻尾や後ろ足などが痛々しく切断され、胴体には大きな打撲痕が残っている。


「まだ新しい」


 未だ立ち込める魔力や殺気が【グリアル・リーベ】から出ている。

 きっと数分前の出来事。


「他の受験者か?」


 この試験でDランクモンスターを討伐。

 しかも周りはそこまで荒れていない事実から勝負は一瞬、即ち圧勝している。

 それは間違いなくセシルと同格であることを示す。


「そんな奴は…」


[居るとしたらあの猫獣人(キャットヒューム)ぐらいか。試験開始前、俺達の前ではわざと隙を作っているように見えた。それでもここまで…]


 セシルの見立てでは試験会場にそんな人物は居ない。

 故に違和感が拭えない。


「何が起こっている」


 この一件はセシルに大きな謎と危機感を残す結果となった。


────────────────────────────────────


「ミーナ。手筈通りお願い」

「いいけど…ソロだったらこんなのを一人でしようとしてたの?」

「勿論。実際僕にとって一番安全だし」

「ほぼ暗殺者じゃない」


 無事南東まで来たイルファルドとミーナ。

 二人はイルファルドの言う作戦の最終打ち合わせをしていた。


 今回の要となる地面が薄く光っている渓谷。


「僕がこれを地面に投げるからそしたら作戦開始だ」


 右手に持っているのは、紙でぐるぐる巻きにされた球体。

 それを地面に投げつけたら作戦開始だ。


「こういうところはクレイジーよね。はぁ。気をつけなさいよ」

「勿論。大量のモンスターに追いかけられるの、慣れてはいるし!!」


 そうして少し時間が進み、30分後。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 足音とは思えない轟音が響いていた。

 大量のモンスター、複数にもわたる群れの集合体。

 総数は70以上。


 ゴブリンやコボルト、スライラビットなどそれはまあ沢山のモンスターに追いかけられていた。

 誰がって?

 勿論僕、イルファルドだよ。


「自分の作戦といえどコワ!!」


 イルファルドも普段の経験で逃げ慣れているとはいえ、ここまで大量のモンスターから逃げた事は無い。


「でも想定以上に集まった!!これなら…」


 アイテムポーチから取り出したのは、先ほどミーナに見せていたアイテム。

 普段から逃げる用のアイテムとして持ち歩いていたが、今回は討伐の為に使う。


 大群を引きつれちょっとした渓谷に入ったこのポイント。


「いくよ!!」


 作戦開始地点。

 ミーナが潜伏している渓谷。


 僕はここでアイテムを地面に投げた。

 するとアイテムは爆散し、中からは大量の黒煙が溢れ出した。

 黒煙はどんどん面積を広げていき、渓谷全体に広がる。


 濃く広範囲に展開された黒煙は、モンスターに混乱を呼び統率能力を失わせる。


「はあ!!」


 煙の中で僕は暗殺者の如くモンスターを攻撃した。


「もうやってるわ」


 時間は少し巻き戻り、まだ移動中の頃。


「それで作戦ってのは?」


 もう少しで着くという頃。

 ミーナが策について聞いてきた。


「煙玉で大量のモンスターを討伐する」

「煙玉って…確かにモンスターは混乱するでしょうけど、イルファも煙の中じゃ見えないでしょ?」


 全くもってその通りだがもう一つ秘密がある。

 煙玉とは別のアイテム。

 それを取り出し見せた。


「これって苔?」

「そう。本来は野外でのキャンプとかで使う苔なんだけど。普通の苔じゃないんだ」


 名称 光吸苔(こうきゅうこけ)


 値段もそこまで高い訳ではなく、全大陸共通で取れる。

 冒険者が野外で生活するにおいて必須級とも言えるアイテム。


「確か昼は光を吸収して夜の間は光るっていう?」

「うん。これを使う」


 そして時間は戻り現在。

 その光は流石の効果だった。


 前もって光吸苔(こうきゅうこけ)を渓谷に散布させ僕達の狩場を用意していたのだ。


[光が消えたり現れたりする場所。そこに居る!!]


 黒煙と光吸苔(こうきゅうこけ)が飛んでいきにくいように渓谷を選び、イルファルドにとって有利な狩場を制作した。

 それは少し離れた場所に待機(スタンバイ)していたミーナからもしっかり分かる程効果を発揮し、黒煙の中から光が漏れ出ている。


「私も合格のために便乗させてもらうよ!!」


 これならFランクやEランクのモンスター相手では、どうにもできない。

 黒煙から聞こえるのはイルファルドとミーナの攻撃音。

 二人は次々にモンスターを屠る。


「これなら追いつける」


 ここに来てイルファルドの効率は最高到達点を更新した。

 効率は最初のセシルと大差がない。


 イルファルドは罠を作ることで疑似的に追いついた。


 時間にして30分ほど。

 黒煙は晴れていきモンスターの殲滅完了。

 獲得ポイント 52p

 現在のポイント 120p


「イルファ!!これなら追いつけるわよ!!」

「このままもう一回行くよ!!」


 残る煙玉は一つ。

 次の一回で必ず追いつける。


 既に背中は見えた。

 光吸苔(こうきゅうこけ)の状態、アイテムを確認し再びモンスターを集める。

 このチャンスは逃してはいけない。


 そんな次の瞬間。

 イルファルドに。

 ミーナに。


 警鐘が鳴る。


────────────────────────────────────


 医療班の待機する医務室。

 最も早く異変が起きたのはここだった。


 「どうなっているの!?」


 次々に流れ込んでくるリタイア者。

 既に限界を迎えていた医務室は瓦解し始めた。


 ポーションが切れ、看護師(ナース)の魔力は限界ギリギリ。

 皆が死力を尽くすも波は一向に収まらない。


「早くエルミーゼ様を!!」


 彼女達ではどうにもならないことが起きていた。


「何がどうなっているの!?」


 引っ掻き傷や打撲した痕。

 受験者の中には全身の骨が折れ、そう簡単に治らないような傷を負う者も。

 皆が苦痛を露わにし、痛みに喘ぎ、悲痛の叫びを上げる。


 そして遂には看護師(ナース)の何人かが魔力切れで倒れだした。

 決壊しこのままでは死人が出るかもしれない。


「あなた!!エルミーゼ様を!!」


 まだ若くアイテムヒーラーだった看護師(ナース)をエルミーゼの元へと急がせた。

 混乱を呼ぶことは分かっている。

 しかしそれでも死人を出すわけにはいかない。


 ここで若い芽を摘ませてはいけない。

 その一心で治療に取り掛かった。


────────────────────────────────────


 未だ熱狂冷めぬ観客席。

 こちらにも医務室と同時刻に異変が起こっていた。


「リシータ!!」

「分かっている!!」


 突如シルヴァとリシータが飛び出したのだ。

 向かう先は真下の島。

 試験会場。


『おっと!?いったい何が!?』


 団長二人の離脱。

 会場はどよめきに包まれた。


「今の感覚。転移(テレポート)を邪魔された?」


 シュミターも明確な異変を感じ取る。

 アイテムの故障など彼にとっては一番不甲斐ない事。


「何者かが一枚噛んでおるな」


 そんな呟きを零したのはシャミエール。

 何かを感じ取ったのか、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。


「急ぐのだぞ。シルヴァ。リシータよ」


────────────────────────────────────


 山の頂上でたった一人、感覚を研ぎ澄ませ()()()を補足するために魔力を鋭く尖らせていた。


「居た」


 彼女、ニャシミアは島の東側。

 渓谷の方角へ走り出した。


────────────────────────────────────


 『カカカカカカカカカカ』そんな鳴き声。

 歯を振動させ不気味な音を出すそれは遂に森を抜けた。


「なんなんだよ!?お前は!?」


 一瞬で蹂躙された目の前の二人。

 受験者は腰を抜かし怯えていた。


 大型級の体躯はまさに別格。

 フォレストグリーンの身体は森だと完璧な保護色になるであろう。


 馬のような顔を持ちながら、奴の尻尾からはカラカラカラと音が鳴り、骨が剥き出しになっている。

 不気味な程大きい前足は見た目よりも静かに動くことを可能にしている。


 つい先ほど受験者を薙ぎ払ったのはその前足であり、当たり所が悪ければ死んでいてもおかしくはない攻撃力。


「誰かあああ!!助けて!!」


 薙ぎ払われた受験者はまだ転移(テレポート)されない。

 このままでは死が待っている。


『カカカカカカカカカカ!!』


 大きく前足を振りかぶりゴオオン!!という衝撃音が響いた。


「!!」

「テメェか。【グリアル・リーベ】をやった異常事態(イレギュラー)は」


 まさに間一髪。

 セシルが怯えていた受験者を助け出していた。


「倒れてる二人連れて離れてくれ」


 助け出した受験者に倒れている者の救助を命令した。

 何よりここから離れろと。

 受験者は「ありがとう!!」と言葉をを残し去っていく。


「それにしても何で居やがる。Bランクモンスター。【モルディル・キメラ】」


 戦う相手がセシルに変わりまだ仕掛けないBランクモンスター【モルディル・キメラ】。

 しかし【モルディル・キメラ】は焦りは見せずセシルに恐怖心を持たない。

 その次の瞬間。


 ドン!!と大きく音を立てて【モルディル・キメラ】が踏み込んだ。

 普段は静かに狩りをするためここまでの加速はしないが、相手がセシルだからこそ本気を出してきた。

 その速度はセシル以上であり一気に間合いを詰めた。


「くっ!!」


 何とか【フィア・ハルバ】を使い守り切ったものの、シルヴァは大きく弾き飛ばされた。

 道中の岩を何個も粉砕させるほどの威力。


「この個体【猛種】か…!!」


 【猛種】それは言わば強個体。

 長い年月を生き、多くの戦闘経験を積んだモンスターの総称。

 通常種とは一線を画しており、この場合ほぼAランクモンスターと言ってもいい。


「本当に何が起こっている…!?」


────────────────────────────────────


 受験場上空。

 リシータと共に異常事態(イレギュラー)を排除するため動いたシルヴァは、島の東側へと向かっていた。


「ヤロ!!会場にBランクモンスターの乱入を確認!!早急に受験者の保護、他に侵入していないか確認しろ!!」

『りょうかい』


 連絡用アイテム アウリス。

 それを使用しヤロに連絡を取った。


「リシータはこの事件に絡んでる容疑者の確保を頼む。」

「分かった。急げよシルヴァ!!」

「分かっている!!」


 今や受験場が死地と化している。

 こんなこと今までなかったというのに。

 しかし異常事態(イレギュラー)はまだ続く。


 パキパキパキ


 そんな音を立てながらそれは構築されていく。

 魔力の壁。

 魔力の結界。

 それが島の東側を大きく包み込んだ。


「壊す!!」


 結界だけで止まるような男ではない。

 〈聖翔槍・天帝〉〈聖翔槍・地帝〉をそれぞれ構え魔力を装填する。


「はあああああ!!」


 王級の魔力を持って結界に攻撃した。

 ピキピキと音を立てながらぶつかり合い結界にヒビをいれる。


 結界はシルヴァの魔力に耐え切れない。

 そう確信した次の瞬間だった。

 ひび割れた部分から再生を始めたのだ。


「っ!!古代魔法!?」


 修復時間、数秒程度で再生しきった。


「セシル、イルファルド…!!少しだけ耐えてくれ」


 シルヴァは唇を噛みしめながら己の不甲斐なさを悔いた。


────────────────────────────────────


「ミーナ。今の」


 イルファルドとミーナが感じたのは魔力のぶつかり合い。

 しかも感じ取れる距離からのだ。


「そしてあの魔力…」

「うん。片方はセシルだ」


 魔力で誰か分かるほど器用ではないが、あの猛々しさはセシルの魔力で間違いない。

 そうしていると目の前から受験者が走ってきた。

 ひどく身体を汚し、背中には二人の受験者を背負っている。


「大丈夫ですか!?」


 酷く傷ついた身体や表情を見て身体が動いていた。

 そして近づくにつれ、背負っている人の傷が想像以上に酷いと認識する。


「ミーナ!!」

「分かってるわよ!!」


 僕が言うよりも早く詠唱を始めていたミーナが、回復魔法【ラグリエス・ヒール】を展開した。

 すると全回復には至らないものの、かなり顔色がよくなった。


 何よりシュミターのアイテムが作動していない事実。

 状況は決して良くない。


「いったい…」


 何があったのか聞く前に受験者は僕の肩を掴んだ。


「頼む!!俺達を助けてくれたあの人を!!金髪の受験者を助けてやってくれ!!」


 彼は震える手で言葉を紡いでいた。


「それって槍を持った?」

「あ、あぁ!!そうだ!!最後に見たのは防戦一方の姿だった」

「!!」


 まさかあのセシルが。

 そんな感情だった。


「相手はBランクモンスターだ。危険すぎるのは分かる。だから無理を承知で頼む!!」


 セシルが負ける?

 それは考えずらいがどこか負けてしまうのではないかという不安もあった。

 だから僕は。


「わかりました。方角は?」

「本当にありがとう!!方角は俺が来た方角に一直線だ!!」

「あなたはこの受験者を運んで!!イルファ。私も行くわ!!」

「でも…!!」


 危険だ。巻き込みたくない。


「何度言わせるのよ。パーティーよ私たち。それに私の方が強いし回復もできる」

「わかった。でも危なくなったら僕を置いて逃げて」

「はーい。それじゃあ行くわよ!!」


 僕達の目的地はここから北。

 セシルの居る場所へ。


────────────────────────────────────


 周りは荒れ果て、複数の傷を負った【モルディル・キメラ】が居た。


「ガハッ!!」


 そしてボロボロになり膝を付く天空人が一人。

 彼の名はセシル。


「クソッ…」


 この戦いで左腕が折れていた。

 傷は深く口から吐血するほど。


『カカカカカカカカカカ』


 まるで笑うように。

 それはセシルを見ていた。


────────────────────────────────────


次回  夢見る少年(イルファルド)


【ドラグマ大陸】

 世界一戦力を保有しており主に竜人族が住んでいる。


 彼らの王、竜帝の独裁政治であり現在キャラクタル大陸とは停戦状態。

 謎が多い国であり未だ開拓が進んでいない。


────────────────────────────────────


あとがき


 今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 そして更新が水曜になり申し訳ございません。

 少し読み返していて所々修正を入れたりしていました。


 次回は文字数次第で分割するかもしれないです。

 序章も次回、もしくはその次には終了。

 イルファルドの雄姿を見届けてくださると幸いです。

 

 更新は私個人の予定で少し遅くなりますが、今週の土日になると思います。


 今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークなどもとても励みになります。


 何卒よろしくお願いします。


 それではまた!!


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