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神無き世界  作者: ヤング丸
序章 夢と冒険
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序章 第三話 試験開始

 太陽が燦々と照らす昼時。

 僕達、受験生は試験会場に集まっていた。


 参加者の中には天空大陸外から来た、多種族や珍しい武装を手にしている者も居る。


「知ってはいたけど凄い人数ね」

「うん。去年の冒険者試験も見に行ったけど大体こんな感じだったよ」


 その数は四桁は軽く越している。


 【冒険者資格(ライセンス)】は年々需要が高まってきていると聞く。

 理由はいくつかあるが一つは、トレジャーハンターや研究者など、冒険者を目指さない人にとっても資格(ライセンス)を持っていると活動の幅が広がり、新たな発見をして名を上げる事もできる。


「モンスターの活発化もあるから冒険者はかなり稼げるらしいしね」


 そんなミーナの言葉通り、モンスターの活発化に伴いモンスターの一般人への被害は年々増加している。

 更にはモンスターの極一部が大量発生、その反対の絶滅危惧種の増加。

 冒険者はそんなモンスターの狩猟、保護も行う。


 こんなご時世では冒険者なんて何人いてもいいぐらいだろう。


「分かってはいたけど、どの受験者もそれなりにできそうね」

「うん。争うような試験内容だとかなり…」


 断言してもいい。

 僕はこの中で一番弱い。

 理由はもちろんある。


 世界には僕みたいに冒険者に向かない人がいる。

 幼い頃に共に歩んだ同世代にも冒険者を志した友人は居た。

 でも彼はここには居ない。


『俺、諦めるよ。もっと向いてる仕事につきたい』


 彼はそう言って僕の前から去っていたんだ。

 この時、彼の語った未来、聞いて感じていた彼の未来は崩れ去った。

 気持ちが分かるなんて言えない。

 僕は諦めきれずにここへ来たから。


 何度も痛感したセシルやミーナ、才能あるものはいつも高みにいるという事実。

 隔絶した世界に居る。


「イルファ…来たわよ」


 でも心に根付いた、焼き付いた憧れは消えない。

 諦めても憧れは消えない。


 ここでやめて、いつか後悔をする。

 それだけはしたくないから。

 きっと僕はこれからも、努力して、努力して、努力して。

 何度だって挑戦し続ける。


「セシル」

「イルファ…いや。イルファルド」


 君に勝ちたい。

 勝って僕も勇者になるための切符を手に入れたい。

 落ちこぼれでも夢を手にしたい。


「僕が…」

「俺が…」


「「勝つ!!」」


 冒険者になってセシルと兄弟のままでいる。


 僕の最初のクエストだ。


「イルファ…」


 その光景に息を飲んだのはミーナだけだった。


「あれって…今回の受験生で魔力総量TOPの子でしょ…」

「それに勝つって…」

「普通に無理無理」

「魔力感知苦手だから感じないのかと思ったら、そもそもあいつの魔力小さすぎない…?」

「まぁイケメンとかわいい系燃えるわね…!!」


 ミーナ以外はこの通り。

 『圧倒的トップに喧嘩を売る異端』そう見えるだろう。


 僕としても挑戦するのは初めてだ。

 周りの声を聴いて、もう戻れない所まで来たんだと再認識した。

 全身を刺す数々の視線と後は進むだけということに、僅かな汗をかいたその時。


 セシルの魔力が嵐の如く吹き荒れた。


「セ、セシル!?」


 【魔力封じ】を解除したんだ。

 封じられた魔力はどんどん大きくなり本来の高域まで大きさを取り戻す。


「は、離れろ!?」

「気絶するぞ!!」

「何であの子は立ってられるの!?あんなのほとんど爵域じゃない!?」


 周りの誰かが言ったようにその大きさはほとんど爵域。


 そもそも魔力は上から【神域】【王域】【聖域】【爵域】【高域】【中域】【低域】の全七段階があり、大半の人が努力してなれるのがおおよそ高域と言われている。

 その上は限られた者のみしか踏み入れない領域。


 そんな中セシルは十六の若さで爵域に達しようとしている。


「でっけぇ…」


 思わず言葉が零れていた。

 今からこんなのと勝負するんだ。

 でも不思議と怖くはなかった。


「やっぱり倒れないんだな」

「うん。昨日に引き続き、身体自体はピンピンしてるよ」


 するとセシルの魔力は、次第に小さくなり始めた。


 多分周りの人を退ける為に使ったんだろうな…

 何故かニヤニヤしてるし。


「少しは面白くなりそうだ」

「ハハ。こっちは面白くないけど」


[セシルは楽しんでいるのだろうか…こっちはこの人にとんでもない賭け勝負を申し込まれて、楽しくはないんだが!?]


 先程まで周りに居た人達は、軒並み二十(メルト)近く離れていた。

 本当に規格外。


「ニャニャ!!なにやらなにやらオモシロ発見ニャ!!」


 一悶着あったこの場にたった一人だけ人混みから現れ、興味津々な眼差しでこちらに近づいてきた。

 その声の主は、小柄で深紅の短い髪、しかし人族(ヒューマン)とは違い動物の如き耳が目立つ女性だった。


[獣猫人(キャットヒューム)…?初めて見た。天空大陸に獣人自体ほとんど来ないのに]


 そんな僕の感情を読んだように、彼女は「ニャニャ!!」とあまりにも猫すぎる笑い声を零した。


「初めましてニャ。お二人とも。」


 腰に手を置き、僅かに首を傾げながら言葉を綴った。


「ウチは【ニャシミア・C・ケット】。流浪商人ニャ。

ウチもその勝負に混ざってもいいかニャ?」

「え?」

「ニャ?勝負じゃないニャ?」

「えっと、確かにしてるけど何で…?」


 急に現れ自分も勝負すると言い出した。

 そんなまさかの出場(エントリー)に僕は戸惑いの声を隠せなかった。


「無論ウチが勝ったらお願いがあるニャ。そしてウチが負けた暁にはこれから一生、ウチの商会に仕入れてくるもの半額の権利を与えるニャ」


 彼女は不敵な笑みを浮かべこちらを見た。

 彼女が勝ったらそのお願いというのを聞かなければならず、負けたら商会の商品が半額で売るという。

 あまりにも大きいリスクを背負う、彼女の目的に僕は思わず息を飲んだ。


「その願いとはなんだ?」


これまで彼女に口を開いてなかったセシルは、ここで初めて会話に食いついた。


「なーに、難しいことじゃないニャ。たーだ君のお父様へのコネクトが欲しいのニャ」


 そこで僕は合点がいった。

 彼女の目的は現在、世界に五十人にも満たない、王域以上の人物への接触券。

 もっと言えば強力な協賛者(スポンサー)をつけたいという事だろう。


 恐らく彼女は、僕がシルヴァ・ランクルスの養子だとは気づいていない。

 それを示すように彼女の注目は、僕ではなくセシルにしか向けられていなかった。


「どうニャ?乗るかニャ?」

「……」


 ここでもセシルとの差を見せつけられた。

 その差があまりにも大きい事を試験前に突き付けられた気分だ。


 でもここで引き下がりたくない。

 セシルに勝つために少しでも追いつく。


「ニャシミアさん。仮にも僕もセシルと勝負するんだけどその報酬は僕にも貰えるのかな?」

「ニャニャ!!当たり前ニャ。ウチに勝てたらニャ」



 ここでも彼女の視線は直ぐにセシルに戻った。

 なら彼女を引き付けられるように蛇のように絡みつかなければ。


「一応自己紹介を。

イルファルド・ランクルス。よろしくお願いします」


 ピン、と彼女の耳が反応した。

 そして審議を問うようにこちらに近づいてきた。


 いつまでもセシルの後ろは走っていない。

 絶対にセシルに追いつき追い越す。


 僕は少しハイになっていたのだろうか。

 この時の僕はいつもよりも恐怖感や不安を感じなかった。


「へー。目的の少年は案外、君かも知れないニャ」


 ゾワッ、という感覚が全身に走った。

 きっと勝負の対象、もしくは興味の対象に入ったのを身体が感じ取ったのだ。


「俺も乗ろう。その勝負」

「お二人とも流石ニャ!!お目が高い!!」


 明確にセシル達のステージに立った。

 きっとこの勝負が終わった瞬間、勝っても負けても僕はまた下のステージに下がる。

 僕も乱入者であり挑戦者(チャレンジャー)だ。

 まだ早すぎるこのステージでセシルに勝つ。


「ではではウチもよろしくニャ。そして…」



『Ladies and Gentlemen!!待たせたなあ!!まだまだ青すぎるガキ共!!今年も【大右翼】の情報長、クルル・セルが実況していくぜ!!!』


 華やかに彩られた花火と魔力モニターによる中継が繋がり、実況の声が島全体に響く。


「そんじゃお二人とも、ウチに負けるニャよーー」


 ニャシミアは用が済んだのか手をひらひらと振り、その場を後にした。


「始まったか」


 セシルは一言だけ呟き、こちらを見た。


「負けないから。絶対に勝つ」


 ドン!!ドン!!と花火の光に照らされながら僕は決意した。


 ただその直後にセシルは背中を向け。


「まずはあの女に勝ってから言え」

「そう言うセシルこそ勝った気になってるなら大間違いだよ」


 普段の僕では絶対にない、挑発的な行動。

 「後に引けない。どうにでもなれ」という気持ちがあるのからなのか。


「僕も行こう」


 互いに背を向ける。

 これは一つの兄弟喧嘩。

 そんな喧嘩が始まった。


『少年よ!!少女よ!!ガキ共よ!!観戦席の皆々様よ!!まずは会場の北側!!上座をご注目!!』


 そんなセシルとの会話を終えたその頃、実況のそんな言葉が響いた。

 試験会場の上座、つまり天空大陸を統治する国王、各上位権力者達が座する場所。


『まずは冒険者試験を行う上で絶対必須なキーパーソンを紹介していくぜ!!!』


 今から紹介される人物は全て、天空大陸どころか世界に名を轟かせる有名人。

 毎年ここでの著名人の登場は試験会場も、観戦席を湧き出す。

 そんな中一番最初に現れたのは、美しい長い銀髪。細い手足にスラっとした体形、天空人にしては小さな翼を持ちそれはまるで天使のよう。


『天空大陸一の薬師ぃぃぃ!!彼女の作るポーションやマジックポーションは世界一!!魔大陸の【ゲルケイア】と双璧を成す存在!!【エルミーゼ・パイア】だああああああ!!』

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


 エルミーゼの姿に会場のエルミーゼ信者、もといオタク達からの熱狂が止まない。


「今日も最高のプロモーション!!」

「攻めすぎたその衣装!!男殺し!!男殺!!」

「その氷のような目でこっちを見てぇええええ!!」


「相変わらず変態的な衣装ね…」

「あはは。僕も父さんの仕事柄的に会う機会があるってだけだけど、先生に絡まれるの苦手だからね…」


 最早狂信的なまでに広がっているエルミーゼ専用の非公認組織、【エルミーゼ様に踏まれたい】に僕とミーナは苦笑いが出てしまう。


『収まらない!!収まらない!!【エルミーゼに踏まれたい】は止まらない!!』


 なんで収集が付かなくなるのに出禁にしないんだよ…と思うが組織が大きくなりすぎて止められないという。

 するとそこで。


『毛虫共黙れ』


 シーン


 そんな彼らにとっての神からの言葉、神託によりびっくりするほど静かになる。

 恐怖を覚えてもいいその団体は一つの生物のような一体感。


『お、おおぉ。

これで収まるとはここまで団結してると軍か疑いたくなる組織力だぁ…』

『そしてクルルと言ったな。非公認のゴミ以下組織をこんな場所で口にするな。貴様の体を新作ポーションの実験対象にするぞ』

『ひっ!!』


 かなりガチだ。

 あの声は怒りが籠っていた。

 噂に聞く、漬け、という行為だろうか。

 色々な方面でアウトすぎる!!


『さささ、さあ続いての人物に移るぞ!!

だからこれ以上、私を睨まないでくれ!!』


 残る椅子は四つ。

 次に出るのは誰か。


『我が天空大陸一、狂いに狂っている鬼才!!研究対象はこの世の森羅万象全て!!その才能で次は何を見せてくれる!?』


 熱狂は上がらない。

 めちゃめちゃ静か。

 そんな中、歩き出したのは、灰色の髪にひどくボロボロの翼でかなり小柄な男性。


『シュミター・ベスカー!!!!』


「ははは。どうもどうも」


 皆が熱狂しないのは彼の逸話。


 天才過ぎて魔大陸にある、マッドサイエンティストの集う街【タルターン】。

 そこの学校を飛び級で卒業。

 その後は天空大陸で自分の身体すら改造、研究を繰り返しているという噂がある。


「アカデミーでもそうだったけど…やっぱり…盛り上がらないよね」

「マッドサイエンティストってのが温く感じるもの…」


 「どうもどうも~」と現在、この会場でテンションが高いのはシュミターのみ。

 これ一大イベントの開会式だよな?と疑えるレベル。


『さぁーてここでインタビュー!!シュミターさん?』

「ふふ。コミュ障な僕が盛り上がったらいい空間になると思ったのに…ふふ」

『お、おお』

「なんだろうね。この気持ち。誰か見繕ってその思考を研究して…その後は…」


『うおおお!?それ以上はダメだ!!!完全にアウトだ!!!さあさあ矢継ぎ早に次に行くぞ!!』


 天空大陸一の鬼才。

 その才能は本物なのだが…


「あの人の存在が最早グロだわ」

「はは…」


 ミーナのそんな言葉に僕からはつい苦笑いが出た。


『ここからは皆が待っていたであろう騎士団長お二人の登場だああああ!!

【大左翼】団長!!シルヴァ・ランクルス!!そして【大右翼】団長!!リシータ・ヴェラ!!』

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 先程までの観客の静寂はどこえやら。

 今日一番の熱狂が会場に包んだ。


 まず会場の左から飛んできたのはシルヴァ。

 こちらは言わずもがなイルファルドの父親で【大左翼】団長。

 そして大人気である。


「父さん。見てて」


 シルヴァの専用武器〈聖翔槍・天帝〉〈聖翔槍・地帝〉を背中に収めている。

 その反対。

 右側もシルヴァと変わらぬ熱狂を誇っていた。


「いつもありがとおおおお!!」

「英雄様ああああああ!!!」


 彼女は天空大陸の英雄。

 深緑の長髪、大天使の如き巨大な白き翼。

 彼女に付いた二つ名は【戦乙女(ワルキューレ)


 【大左翼】がモンスター討伐に特化しているとしたら【大右翼】は都市や天空大陸の治安維持。

 まさしく天空大陸の盾。

 その治安維持能力は外ならぬ、団長リシータ・ヴェラと彼女に付いていく【大右翼】の団員達の貢献あってこそ。


「シルヴァ。ちゃんと団員は配置したんだろうな?」

「当たり前だろ。こちとらいつもより緊張してるんだ。リシータも息子達を少しでもいいから応援しててくれよ」


 それぞれ椅子の目の前で立ったまま軽口を叩く。


「今年の年代TOPらしいな。君の嫡男は。これは早くもおめでとうかな?」

「まぁ…何も起きなければ…正確には厄介ごとを起さなければいいけど…」

「何も起こさないように尽力するのが私たちだ。それに今日は一人じゃないだろ。兄弟に迷惑かけるような真似はしないだろ」

「…」


 シルヴァは返答しなかった。


 シルヴァとてこの舞台で危険区域への侵入、みたいな違反は起こさないと信じている。

 だが一抹の不安が拭えない。

 それはただ直感。


『我らが英雄!!【大右翼】【大左翼】は会場の警護、領域(フィールド)では試験官やリタイア者の警護などを行うぞ!!

 皆!!特に受験者共よ!!感謝を忘れるなああああああああ!!」


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 実況のクルルが言うようにこの試験は、騎士団の尽力あってこそ。

 もしもいなかったら普段から異常(イレギュラー)が起こりまくる、下層での試験など不可能。

 竜種などが現れたら受験者の全滅は必至だ。


 無論、騎士団側にもメリットはある。

 世界中で人員不足が嘆かれている現在で、逸材のスカウトは大きなアドバンテージになるからだ。


『さぁて!!

 皆!!待っただろ!?偉大なる天空大陸の代表者達。その最後はやはりこの方!!

 昨年、国王に即位した【シャミエール・ガブ・ミカル】様の登場だああああああ!!!』


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 もう聞き飽きたと言ってもいい四度目の歓声は試験場、観客席全てで上がる。

 だが僕は、顔を引きつらせてしまった。


『静粛に!!我こそが偉大なる『ガブ』と『ミカル』家の血を継ぐ、国王シャミエールである!!』


 顔立ちは超が付く程美形。

 更に未だ二十も行かない年齢でいくつもの英雄的逸話を残す。

 世界的に見ても、次の時代を担う新世代で最優秀候補。


 なんでもS級モンスターの討伐、全ての大陸をまたにかける大盗賊の逮捕、十年に一度しか咲かない【朱蓮翼の花】の確保、そして組織的保護の開始。

 しかも全て同じ時期に行うという常人離れした正しく天才の王。


 英雄譚にも近い逸話を複数持つ現国王に、何故僕から微妙な反応が上がるのか。

 それはシルヴァの愚痴が原因。


『あの皇太子め…!!国王からの任務を全て【大左翼】にほっぽり出した挙句、今まで貯めてた課題をまとめてやって来い!?仕事量バグりすぎて団員から刃を向けられるわ!!』


 酔っぱらった父さんの口から零れたそんな愚痴。

 外界には出ていないがそういう事である。


 上手く情報規制をしたおかげで一般的には知られていないが、S級のモンスターの討伐も大盗賊の逮捕も【朱蓮翼の花】の確保も、全て【大右翼】【大左翼】が担っていた。


「シャミエール様!!」

「美しいご尊顔をもっと見せて!!」

「今日もお美しい!!」


『よくぞ集まってくれた。我が国民。そして大陸外の旅人達よ!!』

 [くひひ!!そうだ。もっと!!もっと我に注目しろ!!]


 確かに顔は超が付く程のイケメンなのは確かだが。

 ちなみに魔力総量は爵域らしい。


「クルル君。いつやっちゃってもいいよ」


 シュミターは仕事をしたと言わんばかりに椅子に踏ん反り返ると、手元にあるスイッチを押した。

 すると上座全体を覆うように魔力でできた箱が現れ、パリン!!という音を立てながら一瞬で崩れ去った。


『よーし!!これにて全員集合!!ではでは改めまして。我らが国王!!やっちゃってください!!!』

「えーこほん」


 そのわざとらしい咳払いに皆の視線が集中する。

 高まる魔力。

 高まるボルテージ。


「ちょ!?」

「魔力が膨れ上がってる!?」


 流石にマジか、という他ない。

 そんな反応は僕とミーナだけではなく、魔力酔いを避けようと席を立った観客や同じ試験会場にいる受験者もだ。


『我が身姿、我が気品。今ここに降臨せし、真たる王』


 シャミエールに纏われる金色の魔力は、爵域の所以を示すように空まで伸びる。

 ゆらゆらと揺らめく魔力には確かな威圧感があった。


『キング・キング・プロジェクション』


 全長二十(メルト)、金色分身。

 シャミエールの持つ【投写魔法】。

 魔力を本来以上の大きさまで膨張させ分身を作り出す。

 

 しかし強みでもあるが弱点でもある、広範囲に魔力酔いを起させてしまうというかなり尖った性能を持つ。

 本来、爵域が使うと数十(メルト)は魔力に引っかかるだろう。

 だが範囲に居る、まだ逃げきれていない観客たちは、魔力酔いを起していない。


『安心しなよー』


 気だるそうな声。

 しかしそれは自慢するように語りだした。


『皆見てたでしょ~。僕達を覆うように展開した箱を』


 声の主はシュミター。

 クルルからマイクを受け取り話していた。


『あれは魔力を制限する箱。大気の魔力、魔素を集めて箱の中から溢れる魔力を相殺。魔力封じと同じ仕組みを展開させる。まあ作るのがとんでもなくめんどくさいけどねー』


 流石という他ない。

 天空大陸一の鬼才がその実力を披露した世界初の技術。

 世界一技術が進んでいる、中央大陸の科学者でも未だ作成できない。


『ええええええええええええええええええええええ!?』


 しばしの沈黙の後会場は驚愕で溢れかえった。

 前代未聞の成果。

 これは天空大陸内外に大きな影響を出すと言っても過言ではない。


「す、凄い」


 驚愕を隠せない。

 範囲はかなり小さいようだが拡大できれば、武器になってもおかしくない上に下層へ向かう飛空船など使用用途は多岐にわたるだろう。


『良くぞ作成した。シュミターよ。これからも励むがよい』

「へーい」


 やはり名誉など追い求めてはいないシュミターは、そこまで嬉しくはなさそうだ。

 それどころかここに来ること自体が面倒事だと思っていそう。


『では皆よ。受験者は武運を。観客は声援を。今日この日は歓喜こそ相応しい。』


 シャミエールは前置きをするように語りだした。

 そんなシャミエールの姿は【投写魔法】により全ての物を注目させる。


『ここに冒険者試験の開始を宣言する!!!』

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 冒険者試験。


 開始。


──────────────────────────────────────

 天空大陸 下層 クラス(セカンド)


 それは試験会場の島付近で起こった。


「ランクc以上のモンスターは誘導出来たか」


 【大右翼】の担当する地域。


「はい。c以上は討伐もしくは誘導済みです。確認でき…」


 バシュ、と。


 【大右翼】の団員は不自然な音を立てながら、そこで言葉が途切れた。

 そんな音を聞いたのは、団員の目の前を歩いていた三等級の小隊長のみ。


「おいどうし…」


 音の直後、振り返ったがもう取り返しがつかない。

 団員は木に打ち付けられ生死不明。

 そして自分達の真上には、フォレストグリーンの身体を持つモンスター。


『総員!!集合!!』


 連絡用アイテム、アウリスに言葉を投げかけた。

 しかしアウリスが繋がることはない。


「なぜ繋がらない!?」


 彼の目の前に現れたのはランクBのモンスター。

 カラカラカラ、と音を立て森の中で獲物を捕らえる。


「モルディ…」


 またしてもバシュ、と。


『カカカカカカカカカカ』

 奴は再び姿を消す。

 そのモンスターが目で捉えた場所。

 そこに向かうのだった。


──────────────────────────────────────


次回 領域狩猟 一



【冒険者資格(ライセンス)

 取得者はⅮランク以上のクエスト受注が可能になり、クエストクリアの際に冒険者ギルドから一定のボーナスと、資格(ライセンス)ランクを上げるためのポイントがもらえる。

 また資格(ライセンス)ランクは下から、【四級】、【三級】、【二級】、【一級】の四段階があり、大陸を統治する国王が認める冒険者は【英雄級】という特別なランクになる。


【翼の守り人等級一覧】


 団長

 一等級

 二等級

 準二等級

 三等級

に分かれている。


──────────────────────────────────────


あとがき


 第三話が日曜になるとは…

 遅くなりました。

 とりあえず少しづつでも執筆速度を上げたい…!!


 次の第四話は早くて水曜日になります。


 また近いうちにXアカウントを作成し、そちらでも更新の報告をできるようにいたします。


 では改めまして、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

 誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークなどもとても励みになります。


 何卒よろしくお願いします。


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