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神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
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第一章 第十五話 襲撃


 父さんに戦闘訓練をつけてもらっていた頃を思い出した。


「対モンスターと対人の違いは分かるか?」

「えっと…敵が考えるか考えないか?」

「残念。間違いだ」


 見事に問題を外した。


「人の強みは思考の多さとその複雑さ。そこから来る同族が殺しに来たという根源たる恐怖。言い表せぬドス黒い感情。その有無」




 言っていたことが物凄く理解できた。


 僕にとって訓練以外での対人戦。

 山賊は恐らくこちらの命を奪いに来る。


『【アニマ・ヴェール】』


 六角形が多面的に重なり合い、展開される【アニマ・ヴェール】が見事に山賊の先制攻撃を弾いた。


 野宿の際に無詠唱で発動していたのを見ていたのもあって、事前の作戦等が無くとも連携できる。

 ヴェイエさんは、障壁を展開する僕達の盾。


「一気に抜ける!!」


 その反面カインさんが攻撃を担う。

 三人の中で最も前に立ち、最も接敵回数が多い。


 既に山賊を2人は斬っている。


 向かう先は馬を待機させている泉。

 ハクア村が危ない。

 早急に戻る為に僕も戦わなければ。


「ハッ!!」


 ヴェイエさんとカインさん、二人の壁から抜けてきた一人の山賊。

 狙いは間違いなく僕だ。


 【フィア・ブリンガー】を握りしめる。

 だが僕に人を殺めることができるのか?

 答えは「否」。


 ならば殺さないように戦えばいい。

 ヴェイエさんのように守りに徹していれば済む話だ。


「っっ!!」


 しかし剣を触れない。

 身体が言う事を聞かない。


 この戦場は命の奪い合いだと分かっている筈なのに。



 ならば何故か。


 ()()()()


 ドス黒い感情が理性や判断を絡め取り、沼に引き込んでくる。


「クッッ!!」


 結果、ギリギリでの回避。

 普段のイルファルドならば、もう少し早く反応して回避することもできる程度の攻撃。

 そんな異常は疑似的なパーティーメンバーでもある、カインとヴェイエにも伝わることになる。


 イルファルドが足を引っ張ているのは間違いない。

 自分だけでなくパーティーメンバーにも危険が及ぶこの状況なら尚更。


 しかしイルファルドを攻めることは誰もできない。


 それほどまでに生死を賭けた戦は、人の判断を鈍らせてしまうということを分かっているから。

 その相手が人というなら気持ちを分かってしまう。


「イルファルドを中心に陣形!!ヴェイエは後ろを!!」

「了解!!」


 このメンバーならば三人体制(スリーマンセル)で中心になるのは、ヴェイエさんの筈。

 だがまともに動けない僕では、最後尾は務まらない。務めさせられない。


[まだ敵は5人以上居る。僕も戦わなければいけないのに]


 走り続けてる足は何ともない。

 ただ両手だけが恐怖で竦んでいる。


「イルファルド」


 それは僕の肩に手をおいたヴェイエさんだった。


「安心して。私が守る。さっき守ってくれたお返し」

「っ!!」


 不甲斐ない気持ちで一杯だ。


 何をやっているんだ、と自分を罵りたい。

 大事な何かを失ってからでは遅いというのに。


「走っているだけでいい。このような賊に遅れは取らない」


 最も負担の大きいカインさんも僕を責めない。


 ここに立っているのが僕ではなくセシルだったら。

 父さんだったら。


 こんな姿にはならない筈だ。


「あのガキを狙え!!そしたら止まる!!」


 山賊も見逃す筈がない。

 これじゃただの弱点だ。


『【ホーンヘイム】』

「がっっ!!!」


「はぁあああ!!」

「ぐっっ!!」


 僕はこの時知った。


 強さの種類が武力の実力だけではないという事に。

 胸の内に強固な信念を持つ二人の強き者は、僕にはない覚悟(つよさ)を持っていた。


「障壁を!!」


『【アニマ・ヴェール】』


 カインは攻撃を止め、代わりに今日一広い守護魔法を後方に展開した。

 既に前方に敵は居ない。


 後は追っ手を振り払えばいい。


『戦列せし騎士の誇り 強固たる誓いを胸に剣の契約(ゲッシュ)を』


 カインの保有する魔法。

 障壁に守られながら紡がれる詠唱と共に大剣に白き光が纏われる。


『【グランテス・ホーリー】』


 魔法を発動した瞬間、カインは足を止め一気に最後尾へ。


 迫る3人の山賊。

 足を止め、両手で力強く大剣を握る。

 しかしまだ大剣の間合いではない。


「あのバカは何をやってんだよ」

「怖い怖いでちゅね」

「作戦変更だ!!あの騎士を殺せぇ!!」


 山賊も素人ではない。

 しっかりと大剣の間合いと弱みを理解して、三方向に別れた。


 すると次の瞬間。

 カインの両手、両足に魔力が流れ出す。


「騎士の誇りにかけて」


 横に薙ぎ払う。

 大剣の間合いには誰一人としていなかった。

 大きな空振りと崩れた体制に山賊の顔には笑みが宿る。


「もらっっ…」


 されど身体は一向にカインの元に届かない。

 どころか身体が押し戻される。


「貴様等では肉塊になる。だから直接当てなかった」


 巻き起こる強風。

 消えゆく白き光。


「後悔して吹き飛べ」


「がぁアアアア!!!」


 魔法名【グランテス・ホーリー】


 世間では生真面目な奴に開花する魔法と呼ばれている契約魔法。

 魔法により違いがあるが()()、一つだけ共通の条件がある。

 それは魔法を発動した際に、契約(ゲッシュ)と呼ばれる条件を守らなければならない。


 もしも守らなければ全身に魔力が流れ、まともに行動ができなくなる激痛を伴うことになる。


 しかし魔法の発動にここまでのリスクがある反面、その分大きなリターンとして強力な効果を持っているのも特徴である。


「凄い風…!!」


 カインの起こした強風は、周りの木々を大きく揺らす程。

 山賊達とは真逆の位置にいるイルファルド達にも届く。


「急ぐぞ!!」


 ここでの戦闘はカインの魔法で一度落ち着いた。

 倒した山賊も直ぐには追って来れないだろう。


 結局僕は何もしなかったしできなかった。


「お役に立てず…すみません」

「謝るな。責任を感じる事ではない」


 山賊を振り切り、森をようやく抜けようとしていた。

 既に眼前には泉とグリガ達が見える。


「気持ちを切り替えて。村に戻ることだけ考えよう」

「ヴェイエの言うとおりだ」


 二人は僕を慰めるように言葉を掛けてくれたが、心に纏わりつく感情が消えない。

 だがカインさんが言うように今は、ハクア村に帰ることだけ考えなければなければ。


 みんなが危険だ。


「……っ!?」


 咄嗟に振り向き、周りをぐるりと見回す。

 特に異常はなく、魔力や殺気、気配を感じた訳でもない。


 ただ誰かに視られていた?


 人を刺すような。

 まるで動物を管理するようにじっくりと観察され、深淵を除くような冷徹な眼差し。

 到底理解することができない無機質さを孕みながら、人やモンスターでは真似できない技。


 空を飛ぶ鳥は一羽も居らず、どこを見ても特に異変のない木々。

 ならば泉からか、はたまた地面からか。


 産毛が逆立ち、額から汗が零れ落ちる。

 唾を飲み込む自分の喉がやけにゆっくりと動く。


「どうした?」

「いえ…ただ誰かに見られていたような気がして…」


 …気のせいなのか?

 特別そういった第六感が強い方とは思ってはいないが、そんな考えすらも弾く確信に近いものがあったのだが。


 山賊の件でおかしくなった…?

 この場に居る皆が何かあったのかと僕をまじまじと見つめていた。


「大丈夫です。行きましょう」


 グリガに乗り徒歩とは桁違いの速度で向かう。


 感じた()()()は忘れよう。

 今はもう一度山賊と遭遇(エンカウント)した時に何をして、今度こそ戦うことができるのかを考えなければならない。


「二人は速攻で村人を守ってくれ」

「カインはどうするの?」

「決まっている。その為の道を作る」


 現在地からして全速力のグリガ達がハクア村に着くまでに30分はかかる。


「時間との勝負…」

「そうだな」


 それ以上の言葉が発されることはなかった。

 僕を含め全員が沈痛な面持ちで馬を走らせ、手綱を力一杯握り締めるだけ。


────────────────────────────────────


 私はまだ何にも分かっていなかった。


 一月前。

 ハクア村に来たアリシアお姉ちゃんの姿を見て、初めての想いに出会うことができた。


 ()()


 お母さんが私に教えてくれた言葉である。


「ガハッッ!?」

「弱いな~。それでも騎士かよ。なんにも守れてませんよ~」


 自分で言うのもなんだが私は、周りよりもちょっぴり怖い物知らずでそんな自分が好きでもあった。

 だってみんなが沢山頼ってくれるんだもん。


 いつかは冒険者になってみたいし、強くもなりたい。

 勉強もしたいし、色んな食べ物も食べたい。


「守るべき奴らが怯えてるぜ~…ん?」


「な、なにをして…!?」

「ミネア!!戻ってきなさい!!」


 私は諦めたくない。

 みんなで居たいよ。


 助けて。


────────────────────────────────────


 この丘を越えたらハクア村が見える。

 もう少しで。


 そうして丘を越えた。


「そん…な…」


 いくつか立ち込める煙。

 建物だって壊れているのが分かる。


「っっ!!」

「おい!!イルファルド!!」


 僕は反射的にグリガを走らせていた。


 1人で何ができる。

 戦えもしないくせに。

 でもそれ以上に身体を突き動かす想いに背くことができない。


 そんな僕の気持ちを汲み取ったのかグリガの速度も増してゆく。


「早い…!!」

「確かにグリガは優秀だったが。あそこまで…」


 2人との距離が広がる一方。

 芦毛(マキア)とカインの乗るミラーシュも訓練されながら育てられた為極めて優秀なのだが、グリガの速度は一線を画していた。


 残り一分もすれば村に辿り着く。


「ごめん。グリガを巻き込むことになるかも」


 勇逸の理性といえばいいのだろうか。

 僕はグリガに謝っていた。


「でもグリガの力が必要なんだ。だから…お願い」


 するとグリガは返事をするように鼻を鳴らし、もう一段階速度を引き上げた。


「帰ってきたか!!」


 その声は村の入り口で今も山賊と戦闘を繰り広げているシェルさん。


 鎧は傷つき、生傷だってある。

 カインさんと同じくらい強い筈なのに。

 それだけ山賊は準備してきたのだと流石の僕でも分かった。


 きっと森での出来事も山賊の作戦。


 合流することができなかったシュルトさんも巻き込まれているかもしれない。


「イルファルドと言ったな!!今すぐにこの先へ向かってくれ!!」

「分かりました!!」


 ハクア村に入ると何人か倒れている山賊と変わり果てた景色。

 その二つが飛び込んできた。


 草木が荒れ、柵なども壊れている。


 しかしそんな被害も村の外側付近だけでありシェルさんが奮闘した結果だ。

 今朝復興の手伝いをしていた場所は特に何も起こっていない。


 これなら皆も。


「皆さん!!」

「君はイルファルド君…!!」


 ハクア村の中央には、村長を含め沢山の村人が避難していた。


「うぇーん!!イルファルドにいちゃーん!!」

「こわかったよー!!」


 良かった。ルア達も無事だ。


 だがこの場に居る何人かが倒れこんでいる。

 違和感はそれだけではなかった。


 ルア達は四人。


 ()()()()()


「ミネアぁ!!ミネアぁぁ!!」

「ルミア…今カイン様達が帰ってくる」


 おかしい。

 カルミリアさんは?

 皆はなんで船酔いをしたように倒れている?


 ミネアは?


「無事か!?」


 カインさんもこの場に着くなり、馬から降りて周りを確認した。


 そして僕と同じく異変に気付いた。


「カイン様!!カルミリア様が!!ミネアが連れ去られました!!」

「「!!」」

「山賊の長()()()()と名乗った男が我々を襲撃し…!!カルミリア様が私達を…!!」



 時間は少し遡りこの地でコープスが暴れた時。


「人質を取る…なら…!!村人ではなく私にしなさい…」


 カルミリアはボロボロの身体になろうともコープスと戦った。

 腕は折れ、大量の血を流し、戦闘が得意ではないのにそれでも村人を守る為に抵抗していたのだ。

 天地が引っくり返っても勝つことができない戦力差。


「そこまでの価値があるのかね~」

「ガハッッ!?」

「弱いな。それでも騎士かよ。なんにも守れてませんよ~」


 騎士の肩書を穢すように首を絞めながら住民に晒す。


「守るべき奴らが怯えてるぜ~…ん?」


 既にカルミリアに意識はない。

 刈り取られてしまった。

 そうしてそのまま首をへし折ろうとした時。

 コープスの足へ優しい打撃が入った。


「な、なにをして…!?」

「ミネア!!戻ってきなさい!!」


 拳を握り締め、コープスの膝を殴っていた。


 まだ幼く身体も発達段階。

 傷を付けるなんて不可能


 ミネアはそれでもコープスを叩き続けた。


「なんで…こんなことするの!?なんでみんなを…きずつけるの!?」


 恐怖もあっただろう。

 両目からは大量の涙が零れるがそれでもミネアは殴り続けた。


「なんで!!なんで!!」


 少女の悲痛な叫び。

 それは村人達を奮起させた。


 まだ幼い女子が抗っているのに何故大人がそれに続かないんだと。


 皆が震える身体に力を籠めた。

 すると。


「動くな」


 ゾッッという本能を崩すまでの殺意が放たれた。


「ひっっ…!!」

「オイガキ。勇気あんなー」


 コープスはそう言うと右手に掴んでいたカルミリアを離し、ミネアの頭を撫でた。


「ふふっ。いいな」


 不気味な笑みにミネアは何も言葉を出せなかった。

 自分は死ぬんだと悟ってしまったように。


「安心しな。殺さん…よっ!!」


 村人達には何が起こったのか分からない出来事だが、この時のコープスがしたことはただの魔力放出。

 ミネアを魔力酔いにさせただけ。


「村人共よ」


 コープスは気絶したカルミリアとミネアを担いだ。

 目的は彼女等を人質にするためだ。




「カイン様!!奴は村の東へ行きました…!!まだ村から出ていないと思われます…!!!どうか…!!どうか…!!!」

「くっ!!」

「イルファルド!!全く…考えるよりも先に身体が動きやがって…!!」


 誰よりも早く走り出したイルファルドが、後先何も考えていないことはカインにも分かっている。


「ヴェイエは村人を!!」

「分かってるよ。カインはイルファルドを追って」

「ああ!!」


 イルファルドを追う形で走り出したカイン。


「こんなこと許しちゃいけない」


 きっとセシルなら僕と同じように迷わず動く。

 守るためにせめて今は足を動かせ。


「急がないと…!!」


────────────────────────────────────


次回 覚悟


────────────────────────────────────


あとがき


 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 今回は時間にかなり余裕が無かったため世界観解説はありません。


 そして遅れてしまいました。

 申し訳ございません。


 時間の確保はできていたのですがやるべきことが多く遅くなりました。


 かなり急いだので誤字なども多いと思います。

 お手数ですが誤字、脱字などがありましたら今回もご報告ください。


 文も変になっているかもしれません。

 その場合は寝た後にサイレント修正しときます。


 なるべく良いものが出せるように努力していきます。


 今回も最後になりますが、ブックマークやフォローなどとても励みになりますので是非ともお願いします。


 小説家になろうの場合、この下にある星マークでの評価もお待ちしております。


 何卒お願いします。


 それでは失礼します。


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