表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
15/20

第一章 第十話 始まる冒険


『【アニマ・ヴェール】』


 ヴェイエさんは詠唱が完了するなり結界魔法を展開した。


「凄い。結界魔法も使えるなんて」

「そうかな?」


 僕達、人間二人カラス一羽の凸凹パーティーは、ヴェイエさんの外泊用アイテムのおかげもあり川岸付近で夜を過ごすことになった。


「私にとっては当たり前だったから。それにこんな守護魔法…私にはまだ守りたいものなんてないのに」

「守護魔法?結界魔法じゃないんですか?」


 以前父さんから聞いた結界魔法と性質は同じように見える。


 魔法の使用者を中心に魔力の壁を張り巡らせる。


「これは守護魔法を結界のように展開してるだけ。イメージで言うとここを蓋で閉じてる感じ」

「それって結界魔法と違うんですか?」

「違うよ。結界魔法は中から外、外から中の移動を術者次第で自由に行き来できるけど、私の守護魔法は蓋のような形状で壁を作ってるだけ」


 ん?

 それってとんでもない魔力を消費してるってことじゃ。

 しかもさっき見えた範囲だとかなり広かった筈。


「でもここまで範囲を広げると流石に壁が薄いから偶に突破されるけど」


 ヴェイエさんにとって当たり前なこの魔法は、世界を知らない僕にとっては凄技そのもの。

 魔力総量はおおよそ中域から高域。

 僕からすれば大きすぎるくらいだ。


「イルファルドに一つ質問。守りたいものって何?」

「守りたいもの?」


 守りたい。

 物。

 者。

 色々ある。


 でも案外直ぐに答えは出てきた。


「糸のように繋がっている心。絆ですかね」

「絆?」

「はい。今の僕が居るのは沢山の人達のおかげです。育ててくれた家族、兄弟、友達。それに僕が知らないだけで間接的に関わった人達。その全ての絆を守りたいです」

「そっか」


 ヴェイエさんはまるで花のような人。

 花が空から光を頂くように静かに見上げていた。


「僕からも一ついいですか?」

「答えられる質問ならね」

「成り行きみたいな感じになってしまいましたけど良かったんですか?僕を守護魔法の内側に入れて」


 当たり前のように同行して守護魔法の内側に入ってしまった。

 今更ながらに気づき冷や汗をかいている。


 だって滅茶苦茶失礼じゃん!!

 人の家に勝手に上がるみたいなものじゃん!?


 そんなこんなで僕は内心大焦り。


「別にいいよ。パーティーだし」

「ぱーてぃー?」


 ぱーてぃー。パーてィー。


「パーティー!?」


 確かに一緒に行動していたけど、かなりあっさり!!


「それに私もイルファルドと一緒に天空大陸に行くから」

「え?エエエエエエエエエエエエエエエェェェェェ!?」


 イルファルド・ランクルス、ヴェイエ・スール。パーティー結成。


 +カラス一羽


────────────────────────────────────


 すっかり朝日は昇り暖かい日差しが大地を照らす。

 そんな時間に僕達は川の流れをなぞる様に走っていた。


「前はお願い」

「はい!!」


 キャラクタル大陸に存在するモンスターは多種多様。

 モンスターは主に竜種系、物質系、魔獣系、幽霊(ゴースト)系、自然系、海洋系、昆虫系の7種類に分けられるがキャラクタル大陸は全ての種がバランスよく存在し、生態系を成している。


 モンスターの種類は天空大陸よりも多い。


「スライム…!!」


 冒険者の登竜門、戦闘練習(チュートリアル)モンスター。

 体内に大量の魔素を有するのは自然系の特徴だが、ことスライムに至っては物質系の枠組みであり、戦闘練習(チュートリアル)モンスターという二つ名通り怪物等級(モンスターランク)はF。


 しかしそんなスライム自体が天空大陸では希少。

 土地が相性最悪という理由もあるが、天空大陸という土地は主に魔獣系が生態系のほとんどを占めているからであり、そんなこともありスライムとの遭遇(エンカウント)は初めて。


 しかしモンスターはスライムだけではない。

 コボルトやゴブリン。


「ふッ!!」


 早急に討伐する。


 今も僕の背中を守るようにヴェイエさんが戦闘している。

 それは二人体制(ツーマンセル)において基本の形であり、負担の大きい前衛を崩さない守りの陣形。


 だがその反面二人体制(ツーマンセル)は常に近接戦闘を要求してくる。

 つまり魔法使いであるヴェイエさんに相性が良くない。


 だから僕の全力をもって戦う。


「カカカ マダアマイ」


 カラスはイルファルドとヴェイエ、その真ん中の位置を飛行し空から戦況を見ている。

 だから分かる。

 イルファルドはまだまだ経験不足。


 現に目の前で起こっている。


「くっ!!」


 視野が狭かった。


 スライムの討伐を優先しようとした結果、コボルトが右側の死角に入り込んでいた。

 ギリギリで急所は避けたが右腹部からは血が滲んでいる。


「はあああああああっっ!!」


 一撃では仕留めきれない。

 この辺のモンスターは強い。


『ガアアアアアアア!!!』


 否。


 僕が弱くなっている。

 昨日まで残っていた試験での感覚が今では何事も無かったかのように消えている。


 攻撃も素早さも落ちている。


第一席(ファースト)!!』


 まずはここから抜け出さないいけない。

 決死の思いで【フィアナイフ】を木に向かって投げた。


「っ!?」


 しかし魔法のようなあの能力は発動しない。

 現在地に一切の変更なし。


 現状を打開する切り札は使えない。

 それどころか抜け出せるように投げたせいで武装も失った。


[回収するためには…!!まずはモンスターを倒さないとッ!!]


 息も切れてきた。

 今だって片膝を突いてしまっている。

 かと言ってヴェイエさんも未だ戦闘中でこちらの援護は不可能。

 ここは僕だけの力で突破するしかない。


「ドウスルカ」


「ッッ!!」


 イルファルドが走り出したのはゴブリン。

 この場に居るモンスターでは勇逸、武装しているモンスター。

 武器は石の斧。

 決して研磨されているわけではなく鈍器に近い。


「カカカカ」


 カラスが気づいたのは左手に持っている小石。


[ハシリダシタトキニ イシヲモッテイタカ]


 【フィア・ナイフ】を失ったのは決して良いことではなく、間違いなくイルファルドを追い込んでいる。

 だがそれでも勇逸のアドバンテージ。

 単純に暇な手が出来た。


 ならそれを活用しろ。


 イルファルドは地面に向け、身体強化を乗せ一石を投じた。


 すると飛散する石片と舞い上がる砂で煙を立ちこませる。

 されど一瞬で消え去る。


 だがそれで充分。

 能力が拮抗しあう現状で、ゴブリンの反応は僅かに遅れた。

 ならば当たる。


 イルファルドが狙うはゴブリンの足。


『ガッ!!』


 一気に討伐まで行ける訳がない。

 ならば少しずつ、力を削ぐ。


 能力が足りないならその分頭を使え。

 この考え方も今までの経験あってこそ。


 間髪を入れず更に追撃を掛ける。


 まだコボルトやスライムだっている。

 常に認識を更新し続ける。

 危険とチャンスを見分けて戦え。セシルや父さんのように。


「キミラシイ タタカイカタダ サァ モットミセテクレ」


 強者の考え。

 戦いの論理(ロジック)を真似て自分に当て嵌める。


 コボルトとゴブリンには斬撃を。

 斬撃に耐性のあるスライムには…


『【ホーンヘイム】』


 魔法を。


 一瞬にしてスライムは炎に包まれた。


「ごめん。手間取った」

「ヴェイエさん!!」


 スライムはもう大丈夫。

 コボルトとゴブリンならここを抜け出せる!!


 走ることのみに重点を置き、身体に身体強化を乗せる。


『ガアアア!!』

『グルアア!!』


 ゴブリンの攻撃を弾き、コボルトの攻撃を回避とそれぞれの攻撃を捌きつつモンスターの包囲網を抜けた。

 視線の先には一本の木と突き刺さる【フィア・ナイフ】。


「これで…!!」


 突き刺さるナイフを抜き、それぞれの愛剣を構える。


「ヒトマズ カイケツカナ」


 スライムをヴェイエが受け持ったことにより、イルファルドに余裕ができた。

 これならば討伐は難しくはない。


 モンスターの攻撃はイルファルドには入らず、逆にイルファルドの攻撃は致命傷を与えられる。


 結果、一分未満で決着が付いた。


「ありがとうございます。危なかったです」

「気にしないで。元々私の負担を減らすためでしょ?なら私の責任でもある」


 僕はヴェイエさんの負担を減らせたのだろうか。

 結局最後は助けれたし。


「でもどうしたの?今日調子が悪そうだけど」

「それが…」

「カカカ。マダマダケイケンヲツムコトダナ!!」


 カラスさんは僕の肩に降り立ち翼をパタパタさせている。


「アノトキノ カンカクニ フリマワサレルデナイゾ」

「感覚に振り回される?」

「イツカワカル」


 アドバイスをくれたのだろうか。

 しかし僕には皆目見当もつかない。


「そういえばカラス。私はあなたをなんて呼べばいいのかしら?名前は何?」

「え?てっきりヴェイエさんは知っている物かと」


 僕も名前は聞いていなかったがヴェイエさんはてっきり知っていたと思っていたのだが。


「確かに私はカラスから色々聞いたけど名前は聞いてない」

「ソウダッタカ?」

「そうよ」


 確かに気になる。

 現在は何となくカラスさんと呼んでいたが、名前があるなら知っておいた方がいい。


 それに僕もカラスさんについてほとんど知らない。

 名前がそもそもあるのかすらも目的も魔力量の天井すらも。


「オシエテアゲタイケド マダ オシエラレナイナ」

「何で?」

「サアネ? イツカオシエルヨ ソレニ オシエテモオシエテイナクテモ ナニモモンダイナイダロ?」


 のらりくらりと僕達の質問を避けている気がする。

 信用はできない。

 普段「考えが甘い」「すぐに人を信用しすぎ」とミーナから言われるほどの鈍感だが、これに関しては流石の僕でも信用まで至らない。


「そう。誰にでも言えない秘密はある…か…」

「え…どうかしましたか?」

「ううん。何もないよ」


 なんで僕を見て言ったの?

 何かしちゃった?


「カカカ ソレヨリモ キヲツケタホウガイイヨ コノヘンハキケンダ」

「そうね。早く行こう」

「危険ってモンスターですか?」

「多分違う」


 ヴェイエさんは川岸に近づき、指を指した。


「これって毛皮?」

「うん。でも動物やモンスターのではない。衣服から破れたんだと思う」

「それが危険ってどうして?」


 周辺の村に住んでいる人が身に着けていた可能性や冒険者の装備の可能性もある。

 だがヴェイエが気にしていたのは、毛皮の端っこに付いている赤色の印。

 狼のシンボル。


 それはまるで装備のメーカーを記しているようだった。


 すると僕達の耳に、ドドドドッ、と一個体からは発せられない激しい足音が響き渡る。


「モンスター!?」


 人の足音ではないそれに僕は柄に手を掛けた。


 音は森から。

 数は反響しているのもあって数が分からない。


「ブキヲヌクナ」

「な、なにを…!!」

「イイカラ」


 カラスさんは勿論ヴェイエさんも妙に落ち着いている。

 モンスターではないのか?


 僕は何とか震えを抑え武器から手を離す。


 すると。


「そこの者!!止まれ!!」


 現れたのは重厚な鎧を装備した騎士。

 数は全員で三名。


「旅の者か?」

「そうよ」


 ヴェイエさんは両手を上げ、杖を地面に降ろしている。

 戦う意思はない事を証明している。


 僕もそれに倣うように武装を解除し、両手を上げる。


「この辺りには山賊が出現してな。念の為、荷物を確認させてもらう」

「いいけどこちらとしても本当に騎士団か疑わしいわ。先にそっちが証明して」


 決して油断はせず、鋭い視線で騎士を見つめる。


 改めて僕は実感した。

 戦闘以外でもヴェイエさんの経験値は高い。

 僕なら何も疑わずに荷物を見せていただろう。


「そうであったな。すまない」


 騎士三人はそう言うと馬から降り、懐から手のひらサイズの勲章を取り出した。


「我々は主君、アリシア・ペンドラム様、直属の近衛兵。【プランセル・オーダー】のカイン」

「私はミリアーデ」

「俺はクデア」


 アリシア・ペンドラム。

 誰だろうか。

 世間知らずな一面がある僕には誰の事だか分からなかった。


「誰かしら?その人は?」


 ヴェイエさんも知らなかった。


「何!?知らないだと!?」

「うん。有名な方なの?」

「有名って…アリシア様はこの国の王女だぞ」

「王女!?」


 僕はつい驚いてしまった。

 キャラクタル大陸の王族だ。無理もない。


「分かったわ。荷物をどうぞ」

「まったく…まさか知らないとは。一先ず調べるぞ」


 僕も知らなかった…と苦笑いを浮かべながら荷物を差し出す。


「君達は二人か?」

「えぇ。一匹ペット?みたいなのが居るけど」

「ペット?」


 カインと名乗った騎士団員が周りを見渡すが周りに居るのは僕とヴェイエさんのみ。

 いつの間にかカラスさん消えてるよ…


「変なカラスよ。なんか飛んで行ったけど」

「まったく…見つけたらちゃんと鳥籠にでも入れておけよ」


 カラスさんが原因で連行、みたいなことにならなくて良かった。


「騎士団員さん。近くの村で休みたいんだけどいい?」

「何故それを俺に聞く?」

「一応?」


 ヴェイエさんは首をかしげながら、荷物を確認しているカインさんに尋ねた。


「はぁ。今この付近は山賊が出現するんだ。荷物を見た限り普通だが、その判断は村の住民がする」

「なら案内できる?」


 「いつまでも外泊は疲れる」と最後に付け加え、チェックの終わった荷物を受け取る。

 それとほぼ同時に僕の荷物チェックも終わった。


「案内だと?」

「うん」


 ヴェイエさんは肝が据わっているのか全く動じない。

 かく言う僕は今も少しビクビクしているのだが、そんなのお構いなしだ。


 正直心臓に悪い…


 カインさんは周りの騎士団員と目だけを合わせ、警戒していることが分かった。


「分かった。だが怪しい行動をすれば斬る」


 腰に携えている剣を見せ、僕達に言った。


「分かっているわ。何もしない」

「はい。僕もです」


 何とか事がいい方に運べた。

 これもヴェイエさんのお陰だ。


 カインさん達は直ぐに馬に乗り、僕達を囲うように陣形を組み直した。

 理由は他でもない僕達に何もさせないため。

 逆に言えば守っられているも同然。


「ヴェイエさん。ありがとうございます。僕こういうの慣れていなくて」

「いいよ。これぐらい強気に出た方がいい時だってあるんだしね」


 フフン、と少し鼻を鳴らし自慢気にヴェイエさんが言った。


「聞こえてるぞ…」


 勿論聞かれていた。


────────────────────────────────────


次回 ハクア村


────────────────────────────────────


【魔獣系モンスター】

 主に動物のような容姿を持ちながら、体内に魔臓が存在する個体のことを指す。

 鳥や馬、狼や獅子といった存在に近い、【モルディル・キメラ】や【グリアル・リーベ】は魔獣系に属す。


 繁殖力が昆虫系と並んで高く、数が多い特徴を持つ。

 数が多いという事から群れを成すモンスターも多い。


【竜種系モンスター】

 モンスターの種族において最強の種。

 最も弱い個体でもCランク以上の強さがあり、かなり珍しいS級モンスターの4割は竜種。

 強みは多種多様な属性にあり、同じ個体で複数属性を使い場合もある。


 ちなみにドラグマ大陸に多く生息している。


────────────────────────────────────


 あとがき


 今回は一日遅れてしまい申し訳ございません。


 急な用事が入ってしまい遅くなりました。

 次回も4日程頂くと思います。

 すみません。


 少しでも早く投稿できるようにします。


 今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒お願いします。


 それでは失礼します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ