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19. June
同行者とは、それなりに話が合っている。
我々と目的を同じくしているということもそうなのだろうが、娘が居るという共通点が、どうやら我々の話を弾ませているようだ。
彼はことあるごとに、自分の娘の思い出話を口にする。
今我々が訪れている湖も、娘にとって格好の遊び場になるはずだ、と何やら憂いてみせていた。とても活発な娘のようだ。
アリィは、家で本を読み、機械をいじるのが好きだった。外を駆け回るのは、専らリオの役割だった。
同じ娘でも、これほどまでに違う。
だが、そんな我々の間でも、いつも共通している認識がある。
それは、〝乙女心は複雑だ〟ということだ。
彼女たちは時折、我々の理解を超えた反応をする。
そのときの対応にひどく苦慮したことを、我々は分かち合っていた。
君と二人で過ごしていたときには、このようなことに悩まされたことはない。
それとも君も――君でさえも、彼女たちと同じように理解し難い情動をその身に抱えていたのだろうか。