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24. April
出発早々、この手紙を書いている。
発つ前にきちんと別れを言わなかったことが心残りだったと言ったら、君は笑うだろうか。
これまでと違い長い期間家を空けることになるというのに、いつもの調子で出てしまった。このような柔軟性のなさが、私たちの欠点だろう。
私たち。
そう、君にも言える。
君もいつもの調子で送り出すものだから、私も普段との違いに気付けなかった。
子どもたちは、なんと素っ気ないことだと思ったことだろう。私の愛情が疑われていないと良いのだが。
つまらぬことを気にしていると思うだろうか。
だが、独りになってはじめて、私は寂しさを感じている。君がいないこと。子どもたちがいないこと。それがこうも心もとないものだとは思わなかった。
そして、私がそのように感じることも、また。
きっとまた、私はこの〝寂しさ〟に突き動かされて、手紙をしたためることだろう。
どうか愚かなことだと切り捨てないで欲しい。
今この作業をしている瞬間だけは、私は君たちとの別れを忘れることができるのだから。