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イヌ
聖地。
3000年前、当時の巨匠グランデウスとその弟子100人が20年かけて手掛けたとされる広大な庭園₁と。巨大な黒い十字架
それらは聖地の中心にある。
1匹のイヌ科のように見える生物が十字架に向かっている。
イヌは狂犬病の末期の様に見え、恐ろしい、強張った顔つきで牙を晒している。
ブクブクと泡と涎を垂らし、充血した真っ赤な目。
のそのそと目的に向かう。
ピタリ。イヌは口を閉じる。
庭園の花に飛び込み、しゃがみこむ。
再び、さっきよりノロい動きで目的に向かう。
まるで獲物を見つけた捕食者の動きだ。
狙われているのは、皇帝
今、新たな魔王の誕生を議題に国際会議が行われている。
総勢120人の首脳達が護衛に囲まれながら、十字架の前で円卓を囲んで激しい討論がされている。
会議開始から3時間、聖地に相応しくない汚い口調になった首脳達。
ずっと、魔王対処の責任の押し付け合いである。
護衛達は各国の上位の実力者だが、首脳達のつまらない話ばかりに耐えられるわけもなく、大体の者がウトウトしている。
だから、イヌの接近に誰も気づかなかった。