9話「疑心暗鬼と安心」
一度失いかけた信頼は簡単には戻らない。たとえ本人に裏切りに意思がなくてもそう思われれば信頼は簡単に消え失せる。信頼を手に入れるのは難しいけどその信頼が崩れるのは一瞬、たった一言。たった一歩で簡単に崩れゆくもの。
それがすでに心を壊した少女になら尚更である。
ナツメside
俺は琥珀を傷つけたって思っていた。琥珀に流石に言いすぎたってあれを本気だと捉えててもおかしくないなって思った。だからプレゼントで苗字をあげようかなって思った。実際には忘れてただけなんだけど。
うーん。俺の苗字が瀬戸だからなぁ。俺は瀬戸ナツメ。それで琥珀は….うん!直感で一ノ瀬琥珀かな。すごいお嬢様っぽい名前になったけど琥珀綺麗な子だしピッタリでしょ
俺そういえば。昔絶対に守りたい大事な子がいた気がするんだよなぁ、まるで今の琥珀みたいに。琥珀のことは可哀想だから俺の正義が守れって言ってるんだけどそれでもなんか違う気がする
その子が消えたのは中学生くらいで…親父はともかく母さんだけは俺みたいな子供にも誰にでも優しかったのに母さんはその子の話をすると怒鳴って避けたんだっけ。母さんはその子のことを思い出すのが嫌いなのかな。というか母さんどこにいるんだろう。
しばらく経って足音と電子音が鳴る
「お前はここだ。それじゃあまた明日迎えにくる」
琥珀side
ナツを迎えに来るってことか。
ナツは多分この話を聞いて私がまたひどい目に遭うって思ってる。それを逆手にとって本心を聞き出したい
「ナツ。私怖い」
「…..大丈夫だから。俺が守る。俺管理されてて下手にお前の味方してあげられねぇ。だからお詫びで苗字をあげようって思って。琥珀。お前はこれから一ノ瀬琥珀。」
「っ!ありがとう。それでナツにいくつか言わないといけないことがあるの。ナツの母親はもう父親によって殺されていて….それでそのナツは実験体でそのあの」
「…琥珀落ち着いて一個ずつ丁寧に教えて?まずは母親のことから」
それから私は言われた通りゆっくり伝えた
クロウからナツの母親のことを聞かされて離婚に持ち込んだ母親がナツを連れて行こうとしたから殺したって。
ナツは私と似たような実験体だって。私の能力を増やしてナツと私が持てるようにできるかというか他人に能力の植え付け。新しい能力の開発ができるかどうか人工的にそれを行えるようになるのかの実験だって。ナツは能力の植え付けをされるんだって。言った・この能力融通は効かないし。心からの願い以外には反応しないし反応したら羽がバサってなって化け物扱いされるからその場にはいられなくなる。
だからナツにはそんな思いしてほしくない。絶対心からそう願っているのに首輪のせいで発動はしない。それなのに羽だけは中途半端に反応している。願いは叶わないけど羽はバサッとなる。一番最悪だった。
「ごめ…ん羽が。」
「なんで謝るの?綺麗じゃんこの羽」
綺麗?羽が?汚くて醜くて気持ち悪くて化け物のこの羽が?なんでそう言えるの?なんでそう優しいの。ナツは嘘の目をしてない。こんな生活してるせいで顔色を窺って生きてきたから何考えてるかなんて目を見ればほとんどわかる
ナツって本当に….自分の正義を貫く優しい子。
私はそんなナツが大好きだから。
でもナツってなんか特別というか?なんか違和感があるんだよね、いやぁ昔外にいた時に聞いた恋ってやつじゃない。それは違う。そんな感覚とはまた違った感じがする。恋とは別の感情。
ナツと私は不思議な関係な気がする。
「琥珀。俺は実験受けたって構わない。力を手に入れて琥珀に普通をプレゼントしてやる」
ってナツははっきり言い切った。自己犠牲精神。私はありがたいけどナツがどうなるか
私はもう力のせいで心も体も壊れてるも同然だからいいけどナツはまだ元気なんだからその体や心を大事にしなきゃいけない
「なぁ俺…実験されるんだよな?明日。で琥珀はお留守番か?」
「うん。そう言ってた」
「そうか、」
そんなそっけない会話をしつつ夜になって寝てあっという間に次の日になる。
疑心暗鬼の琥珀を安心させようとするナツメ。
琥珀は新たに苗字をナツメから与えられる。それにより琥珀は徐々にナツメを信頼できるようになっていく。