10話「苦しみの共有」
それは与えられた運命。
お互いを理解するのに苦しみの共有なんていらない。
そんなものなくなって人と人は互いを理解できるから
「迎えにきたぞ。ナツメ。こいつから聞いてたか?聞いてないか?」
「….聞いてないですね。会話もしたくありませんから。なんで俺なんすか?こいつのことを迎えにきたんでしょう?それともクロウ様が何かしらで俺を呼んでます?」
「まぁそういうことだ、こい」
ナツメside
琥珀はいつもこんな恐怖を味わってたんだ。と実験室に向かいながら少しだけビクビクしていた。
琥珀はよくこんなの耐えられたなって思う。
だって向かっているだけなのにすでに空気が地獄すぎるんだ
「ナツメ、ここで待っとけ。すぐに他の職員さんが来るから」
「は、はい」
俺は今日何されるんだろうな。もし琥珀の能力の植え付けに成功すれば俺にも羽が生えるのか?あの羽は飾りのようなもので飛べるわけじゃないって言ってたけど心から願えば…..無理か。琥珀が言ってたし心からの本当のお願いは簡単にできるもんじゃないって。
確かに心からのお願いだからとか一生の願い簡単に使うけど割とマジで思ってるパターンって少数だからな。
心を騙すことはできない。そういうこった
「ヤァ、ナツメか」
「親….クロウ様」
「ようやく染み付いてきたようだね?今日はナツメで実験をする。国に貢献できるんだ!素晴らしいことだよ?それでは私はまだやることがあるのでね。失礼するよ」
怖がらせにきやがったな。残念だがそれは俺はもう知っている
「あーひとつ言い忘れていた。お前は技術さえ成功すればほぼ100パー成功するよ。元の実験体との相性とかもあるんだ。この相性性をなくす努力と新たな能力を作る実験を今行なっている。今は相性性がよければ成功するのかと技術的な意味で完成しているのかを見る実験だよ」
「待て!おい!どういうことだよ!?俺とあいつが相性いいってことだろ!?」
「当たり前だろう?まぁここから先はまだお前が知ることじゃあない。だから自分で考えろ。研究員。実験開始だ。」
「はい」
「やめろ…!離せ!おい!!教えろおおおお!」
それから約10時間後
「はぁはぁうぅ。」
「ナツメ。体はどうだ?」
「クソダリィよ…..なんなんだよこれ」
そう俺が答えると研究員はまた機械をいじり出して
「数値に異常は見られません。化け物に使った能力強制放出で何かしらやってみます?」
「それじゃありんごを出させよう。」
「っ!あああ!」
すごくビリビリする。痛い。
琥珀はいつもこんなに苦しい思いをしていたのか?琥珀。ごめんな。俺守りきれねぇかも。この苦しみが恐怖に置き換わったら琥珀は壊れたんだよな。限界を何度も越した先が今の琥珀で。俺はそんな琥珀の苦しみなんて何ひとつ理解してなくて琥珀は弱いって勝手に思ってた。でも仮に心からずっと死にたい死にたいって願っていたとしても俺に殺してって弱音を吐かないだけすごいよ。こんなの何年も何年も3日に1回は必ずやられてたら壊れるどころじゃない。琥珀はつえぇ、俺よりきっと強いんだと思う。並外れたメンタルの持ち主だったんだよ。琥珀は。
仮にそうでなくても我慢できるすごい子。我慢のしすぎは毒だけど
俺自身琥珀のサポートが琥珀を救うことができるのか心配になってきた。琥珀は普通になることが救いに繋がる、でもそれは琥珀も心から願い続けてることだし実際それを考えた時は羽が出てしまうって言ってた。でも俺と話してる時も時々羽が出る。俺の話つまんないのか?それともそれとは別の違うことを願っているのか?
俺は琥珀の幸せ。救い。普通。そして俺が守れればそれでいいって思ってる。俺の願い。でもクロウの野郎をぶちころしてぇって思う。これも願いだったりする。復讐。琥珀や俺を母さんを苦しめたから。
そして俺の実験が成功してるかを確かめるために発動させた機械に俺はしばらく苦しめられたが能力が発動することはなかった。
「失敗か。化け物のとこにナツメを戻せ。明日は化け物の実験をする。」
「バケモンバケモンって呼びにくくないです?ナツメはナツメなのに」
「ナツメはあくまで人間だ。そしてクロウ様の子供だぞ?名前呼びは当然だろう。そもそも名前が存在する。化け物は化け物だ。人間じゃないゆえに名前が存在しない」
琥珀は….化け物なんかじゃない。人間で名前がある。琥珀という名前が。一ノ瀬琥珀っていう名前が!!そうは思ったけど装置を外されている最中な上ピアスは取れない。無駄か。というか俺学校はどうすんだ
復讐なんて意味はない。ただの自己満なんだってそれを理解していても...復讐心を抑えられるほど大人じゃないんだよ




