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「ね、どうして?」
ただ黙っている僕をみて、ガクさんはきょろきょろ見ながら、話を続けた。
「もしかして、いじめの事?」
誰がそんな話までしたんだ?最悪だよ。本当に。
「それなら、大丈夫よ。この学校にはいじめはないし、あったとしても、、」
「あったとしても?」
「そんなの絶対ないって。信じて。ね!」
どうしよう。断りたい、でも断れない。あれこれ悩んでるうちに、チャイムが鳴った。
「放課後、部室で待ってるから。絶対来てね。ね。」
そう念を押してガクさんは自分の席に戻った。
もともと勉強のできる人じゃないから、授業を聞いても聞かなくても同じだけど、今日はバンドの事で悩めるから、集中しなくてもいい口実ができた。
やっと最後の授業も終った。ちらりとガクさんのところを見たら、ちょうどガクさんもこっちを見た。軽く会釈して教室から出て行った。
いろいろ悩んでるうちに、もう校門に着いた。一緒に帰り道を急ぐほかの生徒を見たら、羨ましくなってきた。よっし!行こう。部室へ。
恐る恐る部室のドアを開けた。
僕を見つけたガクさんは走ってきて、僕の手を握りながら言った。
「本当に来たんだよね、ありがとう!」
その後からは自己紹介したり、練習したり、楽しく過ごした。これって本当の学校生活かな。
部活が終ったのは20時すぎだった。
「ススム君の歌って、本当にうまいよね。」
バスに乗って席に座ってから、ガク君は僕にそう言った。他の部員は歩いていくらしい。
「それほどでもないよ。」照れながらは言った。それからはたわいのない話で時間つぶしをした。
「つぎはXX前に止まります。つぎはXX前に止まります。」
ガク君はボタンを押した。
「私ここで降りるの」ガク君は腰を浮かしながら、「じゃ、また明日ね。」
「うん。また明日。」
家に着いたけど、ママはまだ戻ってないみたい。台所のテーブルにはメモが残されてある。適当に食べてねって。
適当に食べようとしても、冷蔵庫を開けてみたら、食べれるものなど全然ないじゃない。今夜はコンビニの弁当だな。
でもその前に見たい番組があるから、先ずそっちから。ソファに横になって見てると、いつの間にか寝てしまった。