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ちょっと変わった話を差し上げます  作者: 武佐井 玄
赤いインクの使用は控え目に
18/24

1

「お父さん、ありがとう」


手に取った万年筆を見つめながらお父さんに礼を言った。


「模試で、いい成績とっただろう。それのご褒美だ」


お父さんはテーブルに料理を並べながらいった。


お母さんは5年前に行方不明になった。捜索願をだしたけど、いまだに見つかっていない。もともとお母さんといってもお父さんの後妻だから、そんなに情があるというわけでもない。実のお母さんは私を生んでからすぐなくなったそうだ。


「お父さん、これ値段高いでしょう」


私はじろじろと万年筆を見つめながらお父さんにきいた。


「ちょっと踏ん張ったってことかな」


お父さんもテーブルの前にすわった。


「さあ、食べようか」


「うん、いただきます」


「いただきます」


朝ご飯を食べて、お父さんとバイバイして家をでた。今日はいいお天気。これからもいいことが起こるかもしれない。もうすでに一つのいいことが起こったから、もう一つ起こるなんて、贅沢かな。


学校へ行く途中で、アヤとマイに出会った。同じ学校のクラスメート。


「ハツコ、おはよう」アヤとマイは声をそろえて挨拶した。


「おはよう」


「あっ、そうだ」


早速今朝もらった万年筆を自慢した。


「素敵!」


マイが感嘆をもらした。


「そうでしょう。お父さんが模試のご褒美だって」


「いいな。あたしなんかさんざん叱られたよ。このままだと、いい大学へ行って、いい就職先をみつけて、いい人生を歩むことはできないって。でもさあ、玉の輿っていう選択肢もあるんじゃない?」


同意をみとめるように私とマイに視線を送る。


「それも、そうだね」


ぎこちなく答える私。


「それより、そっちはどうなった?」


マイが話題を変えた。


「なんのこと?」


アヤが聞く。


「オサムのことだよ。この間ハツコに告白したんじゃない?それで、ハツコの返事はどうなの?」


「そうだね、その後、ハツコは全然話してくれないから、どうなったのかさっぱり分らないもんね。ねえ、」アヤが私の腕を揺すりながら続けた。「ハツコの気持ちは?」


「私は、、、」


タイミングがいいか悪いか、後ろから呼び声がしたので振り向くと、うわさをすればってことだ。


「おはようみんな」


オサムは明るい笑顔をしながら走ってきた。


「お、、おはよう」さっきまでの話でオサムの顔を直視できない。


「ハツコはね、今までずっとあなたのことしか言ってないよ」


マイが面白半分に言った。


「マイ!」


私の声など無視してマイは自分の話を続けた。


「こっちに立って」そう言って、アヤの腕を掴んで、「邪魔ものはここで消えるね」

「ちょ、ちょっと。」


呼びかけても振り向かず走っていくマイとアヤ。アヤはなんどか残りたがっている顔をしてる。でも、マイの力には勝てなかった。


「あっ、はっはっ」オサムを見てから無理やり笑顔を作った。


気まずい雰囲気になってしまった。オサムはいろいろ話しかけてきたけど、なにを話しているかかわからないし、気分はもう遠い空の向こうの感じなので、ただ適当なところで相打ちを打った。


面白かったと思っていただけましたら、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価していただけましたら、創作活動の大きな励みになります!

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