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ちょっと変わった話を差し上げます  作者: 武佐井 玄
赤信号を無視しないでください
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『次はXX駅、XX駅です』というアナウンスが聞こえてきた。


いよいよ本番になるんだ。


ウキウキしていた気持ちもだんだん緊張の気持ちへと変わっていった。


4番出口も前にはバンドメンバ全員がついていた。親がついてきたのは僕だけ。なんか恥ずかしい。


「みんな頑張りましょうね!応援する!」


ママが元気よく話かけてくれた。


「ありがとうございます」


カク君が答えてくれた。


「じゃ、行きましょうか」


カク君が先頭で歩きだした。


今からオーディション場につくと、15分ぐらいの練習時間がもらえるらしい。


みんなと一緒にいるという事実が僕の心を落ち着かせた。緊張しないようにしないと、練習の成果が全部無駄に終わる。


「この交差点の向こうにある建物がオーディション場だよ」


カク君の指さす方に視線がいった。


有名レコーディング会社だけあって、立派な建物だ。こんな有名会社の主催したオーディションに受かって、デビューでもしたら・・・。


僕は一人、先のまた先のことを考えるのに夢中になった。


ピーピー。


信号が変わろうとする音が僕を現実世界に連れ戻した。


青信号が点滅している。ほかのみんなはもう横断歩道を渡った。僕一人を置いて。

道幅は長くはないので、早く渡れば間に合うと思った僕は、足を動かした。


すると、松葉杖がグレーチングの穴にはまってしまった。どんなに揺らしても抜けようとしない。


青信号の点滅が加速したような気がした。


思いきり引っ張ってみたら、抜けた。


余った力のせいで、僕は前にのめりこんでしまった。


この時だった。


車のクラクションとともにママとバンドメンバの叫び声が耳に入ったのは。


・・・。


重たい瞼を開けると、ママの顔が一番に映ってきた。


「ススム、ススム!起きたね。今すぐお医者さん呼んでくるから」


僕が答える前に、ママの姿が視線から消えてしまった。


起きようとしたけど、体中が痛くて、動けない。


頭も動けないので、目ん玉だけ動かして自分のいる部屋の様子を確認した。どうやら病院らしい。


最後の記憶が突然、頭の中でひらめいた。


僕は車にはねられた。オーディションに行く途中。


そういえば、オーディションはどうなったのだろう。


応援よろしくお願いします!

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