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緊張のせいか、普段より早く目覚めた。やったことのない喉のストレッチもした。
朝の空気は本当にうまい。
時計を見るとまだまだ余裕だけど、準備に取り掛かることにした。
僕と同じなのだろう、カク君からメッセージが送られてきた。
心配しないでという安心させるメッセージを返した。
胸がドキドキするけど、不安より期待感が大きい。早くオーディションが終わったらいいのに。
歌を歌わなくてはいけないので、朝ごはんは食べないことにした。
冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注いだ。
気合い入れて一気に飲み干した。
僕の気配に気づいたか、ママも厨房に入ってきた。
「ずいぶんと早いのね」
「まあね、ちょっと緊張しちゃって」
「足はまだ治ってないんだから、松葉杖でちゃんと歩きなさいよ」
「片足で跳ねるのが慣れてきたよ」
「それでも気を付けた方がいいよ。倒れてもしたら...」
「はい~」
早く松葉杖から卒業したいものだ。
そういえば、衣装について話し合ったことはなかった。統一感があるといいのだが、今みんなに話しても遅れた気がしたので、やめた。
何を着ていこう?
目立つような衣装は控えて、カジュアルな雰囲気を漂いながらも視線を集める服ってないかな。
悩んでいるとママが部屋に入ってきた。手にはビニル袋を持っている。
「これ、新しく買った服よ。今日のオーディションのために」
「本当?ありがとう、ママ」
僕はさっそく袋の中身を確認した。
シンプルなデザインのシャツだ。
「どう?」
「いいね」
「じゃ、着かえてね、ママも準備してるから」
ママの準備は時間が結構かかりそうだけど、まだ余裕だ。
玄関でママを待っているとカク君から電話がかかってきた。
「出発したの?」
「これからするつもり」
「じゃ、気を付けてきてね。待ち合わせ場所はXX駅の4番出口」
「うん、わかった」
電話を切ってママを呼んだ。
「ママ、早く~」
「わかった」
ママの声から察するにまだ時間がかかりそうだ。遅刻はしないけど、早くいかないとなんか、不安だ。
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