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汗で目が覚めてしまった。
ぐっすり寝たはずなのに、時計をみたらまだ午前中だ。時間が過ぎていくのは案外遅いかもしれないと初めてそう思った。
喉が渇いたので、ベッドから降りた。体に力が入らない。こんな気分いちばんいや。
本当はあったかい飲み物を飲むべきなんだけど、汗もかいて暑苦しくなってきたので、冷蔵庫を開けてみた。
こういう時に限って体に悪いものが無性に食べたくなる。
コーラのボトルを握って、一口二口、飲み込んだ。
冷たいコーラが喉を伝って体中に広がるような感じがした。
それとともに、喉の痛みもいっそう激しくなってきた。
人はどうしてやっちまってから後悔するのだろう。
僕はコーヒーポットにお湯を入れて沸かした。コーヒーを飲もうとするのではなく、お湯に蜂蜜を溶かして飲むために。
暖かい蜂蜜お湯を飲んだらまた眠たくなってきた。
風邪を引いたからいっぱい寝て早く元気になろう。
つぎに目を覚めたのは夕方になってからだ。
夕日が窓から自分の情熱を注いでいる。
まぶしい。
厨房で食器の音がした。ママがかえってきたのだろう。
「ご飯食べてないね」
僕の足音を聞いたママは振り向かずに尋ねてきた。
「寝てしまって」
喉はまた痛いけど、朝ほどではなかった。
「でも、声を聞くとだいぶ良くなってきたみたいね」
確かに朝よりは痛くない。
「起きたんだからごはんにしましょうね」
僕はうなずいた。
ママが作った夕食は味がしない。風邪をひいた僕のためにわざわざこんな風に作ったのだろう。
晩ご飯を食べていると、インターホンがないた。
「こんな時間に誰だろう」
と言いながらママが出て行った。
すぐ僕を呼ぶママの声が聞こえた。玄関まで来いと。
玄関に行った僕の前に現れたのはカク君だった。
「よっ!」
僕を見て軽く挨拶をする。僕も同じ返事を返したかったけど、声にならなかった。
「風邪と聞いてお見舞いに来たんだけど。どう?」
「大丈夫。ゆっくり休んでいればすぐ治ると思う」
かすれた僕の声にカク君は驚いた。
「喉の調子、ひどいんだけど」
「風邪だからね。明日にでもなればきっと大丈夫」
「本当?」
カク君は本当に心配している。オーディションのこともあるけど、早く治ってみんなとバンドしたい気持ちが一層激しくなってきた。
「本当。すぐ治って見せるから」
それからたわいのない会話を交わしてからカク君は帰った。
「いい友達を作ったね」
厨房に戻った僕にママは優しく話しかけた。
「早く治らないと」
「じゃママの買ってきた薬をちゃんと飲んでね。特効薬だって」
晩ご飯もすまし、ママが買ってくれた特効薬を飲んで、僕はすぐベッドに入った。
明日には治りますようにと神様に祈りながら。
トイレに行きたくて眠りから起きてしまった。時間はもうすっかり深夜の2時だ。
用事を済ましてから厨房に入って飲み物を探した。冷たくて甘い飲み物が欲しい。コーラは刺激が激しいので、飲まないことにした。
冷蔵庫を隅なく探してみたけど飲みたいものは見つからず。こうなったら近くのコンビニに行って買おうかと思った。
ママが買ってくれた特効薬のせいか、体もなんかすっきりしたような気がしたし。
僕はさっそく上着一枚を着てコンビニに向かった。
深夜の町は静かでいい。
コンビニはすぐ道の向こう側にある。
ちょうど赤信号になったので、待つことにした。急いでいないから。
しかしこの時冷たい夜風が吹いてきた。
「寒っ!」
思わず口にしてしまった。
車もいないし渡ろうと思って、僕は赤信号を無視し、コンビニに走っていった。
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