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家に帰ったらママが僕の帰りを待っていた。
「遅かったのね。昨日退院したばかりなんだから体をもっと大事にしないと」
心配そうなママの顔をみたら、なぜか元気なふりをしないといけない気がした。
「全然大丈夫って。ほら、もうピンピンしてるよ」
それでもママの顔は優れていなかった。
「それより、晩ご飯まだだけど、何か頂戴よ」
やれやれというふうにママは厨房に入った。
「今日の晩御飯は何?」
「カレーだよ」
「わ~、うれしい」
カレーにラー油をたっぷりかけて食べるのが僕の流儀だ。
カレー自体が辛いのになぜまた辛くするのかと聞かれると、僕の答えはいつも一つ!
「すっごくおいしいの!」
カレーにラー油をかける僕をみながらママはバンドのことについて聞いてきた。
「今週の日曜日がオーディションだったよね」
「そうだよ」
「練習うまくいってる?」
「ばっちり」
「オーディションの日まで喉を大切にしたほうがいいんじゃない?あんまり辛く食べると、喉が傷むよ」
「平気平気。今までずっとこんな風に食べてきたけど、喉を傷めたことなど一度もなかったんだもん」
ママはそれ以上何も言わなかった。
晩ご飯を満足に食べてから僕は部屋に戻って宿題に取り掛かった。
今日は、朝早く起きたし、電車で座れたし、帰りの急行にものれたし、好きなカレーも食べて、宿題もすぐ終わったし。
なんかついている気がする。
一日の日課を全部終えて、僕はベッドについた。
あんまりに辛く食べたせいか、体が熱くなってきたので、僕は窓を開けっぱなしにしたまま眠りに入った。