第95話 ゴーレム出撃!
マキナは洗脳から解けた『鉄血の獅子』を連れ、『虹の蝶』ギルドに向かう。
例によって戦闘は激化し、モンスターが侵攻を進めている。
「あれは、ローズ団か!」
女頭領のローズが率いるローズ団を中心に、『虹の蝶』がギルドの防衛に当たっていた。
ベローネの指示が伝達され、前衛職の者が次々と戦火に突入していく。
「負傷者は後退しな、アタイらが倒れたら元も子もないんだよ!」
ローズは棘付きの鞭を振るい、迫り来るモンスターに対し果敢に立ち向かう。
休む間もない襲撃に、疲労が滲み出る。
「ローズ!」
「マキナかい、助かった……って後ろの面々は誰だい?」
「『鉄血の獅子』だ」
「な、何だって!?」
ローズの声が裏返る。
「手短に伝える。『鉄血の獅子』に出会ったらソイツらは敵だ、魔導武器で操られている。獅子のブローチを破壊すれば洗脳から解ける。今しがたコイツらも操られてたんだ」
「何てこったい、スタンピードだけでも手一杯だってのに……『鉄血の獅子』とも戦う羽目になるのかい、勘弁してほしいね」
マキナは背後に目配せする。
「真っ直ぐ行けば『虹の蝶』だ、早く行け」
「な、何かすまねぇ!」
傷を抑えながら『鉄血の獅子』は『虹の蝶』ギルドに走って行く。
「元は敵だったヤツらも助けるってのかい……マキナ、アンタもお人好しだねぇ」
「今回に関しては被害者だ、正気に戻して放置ってわけにもいかない」
「分かってるよ。流石、将来アタイの旦那になる男なだけある」
「何の話だ」
「アタイの『ローズ団』も『マキナ団』に名を変える日が近いってことさ!」
「そんな日は来ない」
マキナは直近の出来事を振り返る。
「でも、何かおかしいよな」
「どうしたんだい?」
「今回のスタンピードといい、『鉄血の獅子』の暴走といい、同時に起こるなんて有り得ない」
通常、スタンピードはモンスターによって起こる自然現象。
その発生を予知することは不可能、黒操鎧エレザールによる『鉄血の獅子』の同時襲撃となれば、相当の準備期間が必要となる。
「つまりどういうことだい?」
「――スタンピードも『鉄血の獅子』が仕組んだ物だとしたら」
「な!?」
ローズは最悪の可能性を想像する。
「俺の読み通りの魔導武器を使ってるなら、人間だけじゃなくモンスターも操れる。黒操鎧エレザールならな」
「エレザール、古の魔導武器の名じゃないかい。神器だけじゃなくそんなものまで……!」
ショオオオオッ!
すると空から、獅子の体に鷲の頭と翼を生やした大型モンスター、グリフォンが現れる。
前脚の鉤爪を広げ、マキナとローズ目掛けて突進する。
「今言ったことを証明する!」
マキナは【収納】を使用。
それは取り出すというより、もはや召喚に近い。
現れたのは、青銅の外装を持つ巨兵。
マキナは剥き出しの操縦席に飛び乗り、頭部と胸部が彼を包むように閉じると、巨兵の目が緑色に光る。
「さっそく初陣だ」
青銅の巨兵は、空の王とも揶揄されるグリフォンの鉤爪を簡単に握り、地面に叩きつける。
石畳は割れ、グリフォンは断末魔の叫びを上げる。
すぐさま背中に懸架されたメイスを装備し、グリフォン目掛け振り下ろす。
「終わりだ」
マキナと巨兵は、Aランクに指定されるグリフォンを、いとも簡単に討伐した。
頭部と胸部が展開し、操縦席に座るマキナが姿を現す。
「よし、悪くない」
「な、何てめちゃくちゃな強さなんだい……それが前話してたヨロイ島の魔導巨兵なのかい?」
「そうだ、あのままだと【収納】で持ち運べないから小型化も施した」
マキナは何とも言えない多幸感を感じながら操縦席から飛び降りる。
グリフォンの亡骸を調べると、背中には獅子のブローチが付けられていた。
「やっぱりか」
「マキナ、どうやらアンタの読み通りらしいね」
的中してはいけないことが現実に起きてしまった。
このスタンピードも、全て『鉄血の獅子』の策略による物。
マキナは巨兵に呼びかける。
「『虹の蝶』ギルドの防衛に加わってくれ。モンスターが討伐対象、危機が迫った人間を優先的に守れ、皆の盾になるんだ!」
「――了解!――」
巨兵はひとりでに歩き出し、持ち場に着く。
迫るモンスターをメイスで薙ぎ倒し『虹の蝶』を援護する。
「自動操縦にもなるなんてね……とんだ代物じゃないかい」
「これで少しは楽になるはずだ」
マキナは手袋を着け直す。
「俺は元凶を叩きに行く」
「目星は付いてんのかい?」
「『鉄血の獅子』ギルドだ、あそこぐらいしかない。黒操鎧エレザールを破壊すれば、この侵攻は止まる」
マキナは本能的に、自分が戦うべき相手を理解していた。
役目を分かった上で、彼は危険な場所に踏み込もうとしている。
「誰かがやらなきゃいけないんだ、俺が行く」
「全くこの男は……絶対生きて帰ってきなよ」
すると、遠くから衝撃音が鳴り響く。
街の時計台がゆっくりと倒壊していくのが見えた。
マキナは衝撃音に混ざった、大剣に刻み込まれた斬撃音を聞き逃さなかった。
「あの音はストームブリンガー……ベローネ……!!」
マキナは時計台に向かって走り出す。
あのベローネに勝てる可能性のある者は、マキナにとって1人しかいなかった。
同じ頃、街の時計台前広場にて。
ベローネは刀傷を刻まれたストームブリンガーを足元に、瓦礫が辺りに散らばる中で力無く倒れていた。
節々は流血し、戦闘不能に等しい状態だ。
刀神器ムラサメを持つアスナは、そんな彼女を赤い双眸で見下ろすのだった。
【※読者の皆様へ】
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思った方は、ブックマーク、評価をしていただけると幸いです!
広告下の評価欄にお好きな星を入れてください。
★★★★★
よろしくお願いします!




