第80話 『虹の蝶』は決意する。
マキナたちは急いで『虹の蝶』に向かう。
すぐさま治療室に入ると、怪我をした数人が治療を受けており、いずれもラティナのパーティーメンバーだ。
そして、
ベッドに横たわるラティナの姿。
彼女の側には、外した三角帽子が置かれている。
「おい、大丈夫か!?」
「うう、アイツら、いきなり森で魔法を撃ってきやがった」
「もしネイルが来なかったら俺たちどうなってたか」
「でもラティナが……アイツら絶対にわざとだ!」
アイツら――誰の仕業かは向かう途中でアリアから聞いていた。
「『鉄血の獅子』だな」
「ああ……マキナ、俺たち悔しいよ」
腕の怪我を抑えながら言うメンバー。
ラティナのパーティーは、ただヨムギ草を採取していただけだ。
その最中に『鉄血の獅子』に襲われ、全員が怪我を負わされた。
明らかに度が過ぎている。
これは正規ギルドのやることではない。
「……マキナさん?」
すると、マキナの名を聞いたラティナが起きあがろうとする。
「駄目だよラティナちゃん、安静にしてないと!」
「大丈夫、でも、2人には謝らないと」
ラティナはガサゴソとポケットを探る。
小さな手に握られたのは、1本のヨムギ草。
「これしか持って帰れませんでした」
ラティナは無理矢理笑い、心配をかけまいとする。
「私って鈍臭いから、逃げる時に落としちゃったんです」
マキナはヨムギ草を受け取る。
「2人ともごめんなさい、ヨムギ餅楽しみにしてたのに……」
笑顔のまま、ポロポロと涙をこぼす。
「あれ、ごめん、何でだろ、そんなつもりじゃ」
何度拭っても、涙は止まらない。
「ごめん、本当にごめん……」
◇
マキナは治療室を後にする。
部屋の外には『虹の蝶の死神』――ネイル・ショットがいた。
彼女はラティナたちが森で襲われている場面に遭遇し、魔導銃で『鉄血の獅子』を追い払っていた。
仲間の救助が優先のため、『鉄血の獅子』を捕らえるには至っていない。
「皆ネイルに感謝してた。無駄じゃない」
「……!」
ネイルは壁に拳を叩き付ける。
駆け付けるのが遅過ぎた、その悔しさに顔を歪ませる。
そのまま3人がギルドホールに向かうと『虹の蝶』に所属する冒険者が集結していた。
ギルドリーダー代理人であるベローネが、メンバー全員に招集をかけたのだ。
ベローネが中心となり、事情を話す。
「知っている者もいるだろうが、改めて私から説明する。ラティナたちの件だ」
その内容に皆が険しい顔のまま黙りこむ。
『鉄血の獅子』の蛮行、それにより仲間が傷付けられた。
「これは到底許される行為ではない」
ある者は拳を震わせ、
ある者は武器を握り、
ある者は抑えられず声を荒げた。
「仲間の痛みは、我々家族全員の痛みだ」
ギルドは家族同然の存在。
皆の意志は聞くまでもない。
それら全てを汲み、己の気持ちを込め、ベローネは言う。
「――我々『虹の蝶』は、戦争をする」
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