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第78話 『虹の蝶』に帰還

(※11/19)連載再開初日なので2話更新しました!


「えー本当に素晴らしいものでございました、演奏をするミロス様は精霊と言っても過言ではありませんでしたな」


「「「い〜〜なぁ〜〜」」」


「この私、アリアは不躾ながらサインを要求したら心良く承諾してくれたのも感激でした……その実際のサインがこちらでございます」


「「「おお〜〜……!」」」


 『虹の蝶』の酒場の一角で、アリアと大海のミロスファンが集まっていた。

 今回のヒヒイロカネ調達と精霊弓アムシオン修理のクエストでの出来事は、彼らにとって興味があるのは当然だった。


「アリアの口調が変わってるじゃないの」


「もはや宗教みたいになってるな」

 

 その光景を見ていたカウンター席のマキナとステラが共に呟く。


「それはそうと残念よね〜、お宝を探す余裕がなかったんだからさ、ぷはぁ!」


 ステラは頬杖をつき、エールを喉に流す。

 『鉄血の獅子』のこともあり、ヨロイ島を早々と撤退したことを悔やんでいた。


「待ってくれ、巨兵(ゴーレム)があっただろ?」


「あれをお宝と呼べるのはアンタしかいないわよ、普通は敵なんだから」


巨兵(ゴーレム)には失われた超技術がふんだんに使われているんだ、充分お宝だぞ」


「でも、人襲うでしょ」


「襲う」


「駄目じゃないのよ」


 ステラがツッコミを入れる。


「そうならないように自宅で調整してるんだ。分解したから腕や脚を繋ぎ合わせるのも一苦労だ」


「鍛冶スキルでも全部はカバー出来ないのね、そう考えるとすごいかも知れないけどさ……」


「明日には終わらせるつもりだ、次のことにも取り掛かりたいしな」


「もしかして、楽園竜(アイランド・ドラゴン)のミスリルのこと?」


「そうだ、まだ武器も決まってない」


「なら槍にしときなさい、槍は良いわ……1番優れた武器よ、ぷはぁ!」


 ステラは更にエールを飲み、口の泡を拭う。


「リーチが長いから剣より先に攻撃が出来りゅわ、突きの威力もピカイチなんらから」


「まぁ確かにな」


「じぇったいに槍よ! はい、けてーい!」


 マキナと肩を組み、高らかに叫ぶステラ。

 どうやらアルコールが回ったらしい、完全におっさんである。

 お酒が強くないのにエール好きという、中々にキてるパターンだ。


「うーむ」


「男ならバシッと決断しなさいよ〜」


「――大剣はどうだ、マキナ?」


 ベローネが酒場にやってきた。

 彼女はギルドリーダー代理人として、『虹の蝶』の会議に参加していた。


「ミスリルの大剣ならば、その性質を余すことなく活かせるだろう。透き通る巨大な剣身、ぜひ見てみたいものだ」


「見た目も映えるだろうな」


「だろう? 一度考えてみてほしい」


「らによ〜ミスリルの槍らってキレイらのよ!」


 ステラは酔っ払ったまま抗議する。

 

「ミスリルの槍も美しそうだ、それも気になるな」


「ふふん。ベローネ、アンタ意外に話がわかるじゃないの」


「だが私は大剣を推す」


「秒で裏切ってんじゃないわよ!」


「――やっぱり双剣でしょ!」


 いつの間にかマキナの隣にいたアリアが提案する。

 どうやらミロスファンクラブの会合が終わったらしい。


「光に反射するミスリルの短剣、それが2本もあるならきっとカッコいいよ!」


「それも捨てがたいな」


 三者三様、未だ決めかねてるマキナにとっては貴重な意見が出た。


 ただ、


「じぇったいに槍!」


「大剣だ、マキナ」


「双剣にしようよマー兄〜!」


 このタイミングで決断するのは不味い気がする。

 争いが起きる気がしてならない。

 ミスリルには限りがある、別々の武器を作るのは不可能だ。


「皆さーん!」


 修羅場状態のマキナに近寄る、黒い三角帽子を被った魔導師の少女。


「あ、ラティナちゃん!」


 ラティナと呼ばれた少女は頬を緩ませる。

 彼女は『虹の蝶』所属の冒険者、マキナたちと同じようにパーティーで活動している。

 ちなみに闇ギルド壊滅から帰った際、真っ先に出迎えてくれたのもこの子だ。


「ヨロイ島でのクエストお疲れ様です、皆さんご無事で何よりです!」


 ラティナはぺこりと頭を下げると、落ちそうになる三角帽子を慌てて直す。

 挙動こそ辿々しいが、礼儀の良さが伺えた。


「ありがとうラティナ」


「もう流石としか言えません……特にマキナさん!」


「俺か?」


「はい、マキナさんの活躍を聞くと、私も頑張ろうって思えるんです! とても冒険者になって数ヶ月とは思えません!」


 ラティナは息を巻く。


「ラティナ、今日の君たちは討伐クエストと言ったところかな?」


 ベローネはラティナの装備を見ながら言った。


「はい、今日はバトルライガーの討伐、明日はヨムギ草の採取に行きます」


「ヨムギ草……まさかラティナちゃん、今年もアレ(・・)を作るんですな?」


「そうだよアリアちゃん、アレだよアレ、上物が出来るよ……!」


 アリアとラティナは悪い顔をしながらほくそ笑む。

 まさか非合法の薬物か?


「ラティナちゃんの作るヨムギ餅は絶品だからね! 楽しみだよ!」


「アリアちゃんはいっぱい食べるから去年の倍は用意するつもりだよ!」


「ひゃ〜ありがたや〜!」


 どうやらお菓子の話らしい。

 何で2人とも悪い顔をしたんだ。


「ラティナのヨムギ餅すごく美味しいのよね。去年はつい食べ過ぎちゃったわよ」


「そんなに美味しいのか?」


「そうか、マキナは『虹の蝶』に入って数ヶ月だったな。彼女のヨムギ餅は絶品なんだぞ、この時期の定番だ」


「マキナさんにも是非召し上がって欲しいです!」

 

 ラティナはにっこりと微笑む。


「ありがとう、俺も楽しみだよ」


「はい、腕に寄りをかけます!」


 ラティナはパーティーメンバーと共に酒場を後にした。

 『虹の蝶』の仲間とのふれあい、いつまでも続いてほしい。


 そう願うマキナであった。

 


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