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第77話 浜辺にて

本日から連載再開です! よろしくお願いします( ^ω^ )

温泉宿で一泊中のマキナは、早朝の浜辺を歩いていた。


「何か変に目が覚めたなぁ」


 月の光が海に反射し、幻想的な雰囲気を醸し出している。


 すると、1人の女性が海を眺めていた。

 

「……ミロスさん?」


「あら、マキナさんですの?」


 大海のミロスが白いローブ姿で佇んでいた。

 艶やかな青い髪がそよ風に揺れる。


「意外な出会いですわね」


「遠くからでも分かりましたよ」


「そうだ、ほんの少し、私の冒険に付き合って下さいません?」


「……冒険ですか?」


「ええ、冒険ですわ」


 ミロスは波打ち際を歩き、裸足でぱしゃぱしゃと水を弾く。

 その後ろをマキナはついていく。


「実を言うと……わたくしは引退するつもりでしたの」


 ひとしきり歩くと、ミロスは口を開く。


「新しいヒヒイロカネを手に入れる、と言うのは言葉では簡単ですわ。ただ、今回のように危ない所に人を向かわせることになってしまうでしょう? なら、このまま幕を下ろした方が良いと思ってましたの」


 けれど、とミロスは続ける。


「何だか胸が落ち着きませんでした。この先も歌い続けたい、皆に音色を届けたい、そんな気持ちが強くなって……思い切って依頼しましたの」


 ミロスはくるりと振り向く。


「どうやらわたくし、辞める勇気もありませんでしたの」


「優しい人なんですね」


「マキナさん達に危ない場所に向かわせたのです、優しいはずがありませんわ」


「そういう風に考えられるから優しいんですよ」


 マキナは言った。


「ミロスさんは俺たちに仕事を与えてくれた、生きていく手助けをしてくれたんです」


 冒険者は不安定な職種だ、上と下の差は激しく、個人で大きく変わる。

 クエストの一つ一つが大事なのだ。

 

「俺はミロスさんみたいに歌も演奏も上手くない、だけど戦える力はある。得意なことで役に立たせてくれたことに感謝してます」


「マキナさんは冒険者を、『虹の蝶』をやめようと思ったことはありませんの?」


「ありません」


「命の危機だってあったでしょうに、何故なのです」


 マキナはベローネとの会話を思い出す。


「家族がいるから、ですかね」


「家族……ですか?」


「少なくともパーティーのことはそう思ってます。きっと俺みたいな人って多いですよ」


 最初は冒険者になろうと考えてなかった。

 あの時、街でアリアと再会していなければどうなっていたんだろうか。

 充実で溢れた、生きている実感の日々。

 仲間が出来たのが、何より嬉しかった。

 離れることなんて考えられない。

 

 ――『虹の蝶』は、自分の居場所なんだ。


「俺は、『虹の蝶』には感謝してます」


 マキナははっきりと伝えると、海から太陽が顔を出し、砂浜の2人を照らす。


「……マキナさんは『虹の蝶』が大好きなのですわね」


「はい、今の俺があるのは『虹の蝶』と、そこにいる皆のお陰です」


「そう、ですか」


 ミロスは吹っ切れたかのような微笑みを浮かべ、マキナにゆっくりと手を差し伸べた。


「改めてお礼を言わせて下さい。今回のクエストの件、本当にありがとうございます。マキナさんのお陰で、わたくしは歌を届けることが出来ます」


 マキナは彼女の柔らかな手を取り、握手を交わした。


 ◇


 その頃、月夜の浮かぶヨロイ島では。


 小太りの中年男は、見るに堪えない金属のカケラを拾い上げ、その歪んだ金色の剣身を睨む。


「ワシの魔導武器コレクション上位、バルトロの銃剣がこのザマとは……ガヴェイン以下、ヨロイ島で呑気に気絶しておったメンバーは全員クビじゃ」


 突如、近場の火山が噴火する。

 黒煙が上がる火口から竜の顔が覗き、2つ、3つと顔が増えていく。


 やがて、九頭を持つ蛇の身体がマグマと共に流れ出す。


 ジャアアアアアア!!

「グラハム様、お逃げ下さい!」

 

 ガヴェインたちの増援として来た『鉄血の獅子』はグラハムを守るべく武器を取る。

 

 グラハムはその場を動かず、仮面の女剣士が巨大なオロチに立ち塞がる。  

 

 ジャアアアアアア!!

 大口を開けたオロチが迫る。

 女剣士は腰に下げた刀を抜き、一振りする。


 ズシャッ!

 巨大なオロチの身体は一瞬でバラバラになり、跡形もなく崩れ去る。

 ギルドリーダーのグラハムを除き、皆が呆気に取られる。


「流石、我ら『鉄血の獅子』最強の女剣士であり、刀神器の継承者……!」

 

 グラハムはつかつかと女剣士のそばによる。


「幼い頃にスタンピードで故郷を失ったお前をワシが拾ってやった、村の名前は……何じゃったかのう?」


ミリシャ村(・・・・・)です、リーダー」


「そうじゃったのう、今でも悲しい気持ちはあるのかね?」


 仮面の女剣士は納刀し、栗毛を揺らしながら振り向いた。


「特には」


【※読者の皆様へ】


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