第74話 ヨロイ島のゴーレム
◇
「もうすぐ神殿だな」
『鉄血の獅子』を撃破したマキナ達は、再び火山の道を進む。
「元はアイツらが陣取ってたってことは他のギルドはいなさそうね」
「だが増援を呼んだとか言っていたな、神殿の巨兵を倒すためとな」
「のんびりもしてられないな」
『鉄血の獅子』の増援とまで交戦となると面倒だ。
ここは手早くヒヒイロカネを手に入れてヨロイ島を去りたいところ。
「でもヒヒイロカネが神殿にあるなんてね〜、知らなかったら今頃火山を歩き回ってたもんね!」
「本当に意外だった、これもガヴェなんとかのお陰だ」
マキナの頭から既にガヴェインの名前は消えかけていた。
彼はもう、あの奇抜な銃剣のことしか覚えてない。
そんな情報を全部話してくれた優しいブロンド髪に感謝してると、マキナ達はついに神殿に辿り着いた。
炎の装飾が、火山にある神殿というのが全面に強調されている。
魔術結界が張られているのか、意外にも周囲は涼しかった。
「こりゃまた凄いねぇ」
「この中に巨兵がいるんでしょ? アタシ戦ったことが無いのよね」
ステラは神殿を見上げながら言った。
巨兵は神殿や遺跡に配置される防衛用の人造兵器。
倒すには心臓部を担う核を破壊するのが1番の方法、だが身を包む分厚い装甲をそれを阻むのだ。
「私は数回戦ったことがあるが、あれは骨が折れる」
「ベローネさんでも大変なんだ……」
「当時の装備はロングソードだったがな、装甲の隙間から核を破壊した」
「凄いな、俺はそんな倒し方思いつかなかったな」
「マー兄はどうやって倒したの??」
「装甲の上から無理矢理叩いて壊した、破壊棍ダモクレスでな」
「絶対推奨されてる倒し方じゃないわよ」
型破りな撃退法にステラが唖然とする。
「今回は手っ取り早く済む武器があるんだ」
「おお、更なる武器の出番と言うわけですな!」
「このクエストが始まってから大盤振る舞いね」
「武器は使うに限る。ただ、ほんの少し手伝って貰うことになる」
「当然だ、お膳立ては任せてくれ」
マキナは作戦を説明する。
使用する武器の特徴に、3人は驚愕する。
そして、マキナ達は神殿に入る。
石壁の広い内部、周囲は松明が照らし、真ん中には起動前の巨兵が、ぐったりと首を垂れている。
奥には、金色に光る鉱石が祀られている。
「間違いない、ヒヒイロカネだ」
マキナは【鑑定】で確認。
ランクはSS、最上級の代物だ。
「ある程度近付いたら巨兵は動き出す、皆警戒するんだ」
マキナ達は武器を構えながら接近する。
すると、ゴーレムは目を赤く光らせ覚醒した。
ゴゴゴゴォ!
装甲で覆われた巨体が立ち上がり、4人を見下ろす。
所々が傷だらけで、長い間この場所を守っていたことが分かる。
大斧を振り上げ、襲い掛かる。
「アリア、手筈通りに頼む!」
「任せて〜!」
アリアが元気よく返事をする。
まず、双牙剣オルトロスによる高速移動で巨兵を翻弄する。
巨体から繰り出される一撃は強力だが、当たらなければどうということは無い。
その間、マキナは距離を保ち巨兵を観察する。
巨兵の製作者によって核の場所は違う。
装甲の配置、機体の動きを見て位置を探る。
「右半身の反応が僅かに早い……!」
魔力供給も早いと言うこと、つまり。
核は、右胸にある。
「――ベローネ、ステラ!」
「任せろ!」
「よし来た!」
左右から挟み込むようにストームブリンガー、リンドヴルムで畳み掛ける。
ガキィンッ!!
巨兵は両腕で防御する。
作戦は上手く進んでいる。
2人の攻撃は、あくまで巨兵 の動きを止めることが目的なのだ。
「最高だ」
マキナは【収納】で武器を装備。
――突撃角フォレストホーン、楽園竜で戦ったモンスターと同じ名を冠した、腕に装着するタイプの魔導武器だ。
マキナは駆け出し、巨兵の右胸に向かってフォレストホーンを叩き付けた。
そして、
――ズドォォォンッッ!!
フォレストホーンから巨大な螺旋状の角が射出され、装甲ごと核を撃ち抜く。
内蔵されたフォレストホーンの一角を高速射出する一撃必殺の魔導武器、それが突撃角フォレストホーンなのだ。
巨兵の目の光が消え、仰向けにズシン、と倒れる。
「よし、終わった」
「すごいわ、完全にぶち抜いてるわよ……」
「こんな簡単に倒してしまうのか、流石だな」
「皆の協力のお陰だ、俺一人じゃ無理だった」
実際、目標の動きを止めないとポテンシャルが発揮できない武器だ。
内容は呆気ないが、全員で掴んだ勝利と言うのには変わりない。
「この際だ、ヒヒイロカネのついでにこれも持ち帰ろう」
「へ、マー兄、今なんて?」
「前から欲しかったんだ、巨兵」
マキナは倒れた巨兵を撫でる。
「一から作るのは大変だし、 核を新造すればまた起動出来るしな。ただ丸ごと【収納】は出来ないからバラす必要があるな」
ガチャガチャと慣れた手付きで巨兵を分解していく。
「これ持ち帰ってどうするのよ?」
「とりあえず人が乗り込めるようにする、自動操縦だと危ないしな」
「いいね、その時は私も操縦させて!」
「絶対使わせん」
「いいじゃんケチ!」
「確実に事故るだろうが!」
「良い案がある。『虹の蝶』のマスコットにしないか、私が申請しておくぞ?」
「こんなゴツいマスコットいないわよ!」
こうしてマキナ達は無事、ヒヒイロカネ(+巨兵)を手に入れたのだった。
【※読者の皆様へ】
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思った方は、ブックマーク、評価をしていただけると幸いです!
広告下の評価欄にお好きな星を入れてください。
★★★★★
よろしくお願いします!
※武器の名前、サイレント修正するかもです。