第72話 撃剣のガヴェイン
「『鉄血の獅子』……?」
「王国の武闘派ギルドの1つだ、確かその実力は……君のいた『白銀の翼』の次点に当たる」
『白銀の翼』は、あくまでマキナの武器によって底上げされていた。
冒険者個人で考えると、リーダーのジュダルですら一定の実力には達していなかった。
つまり。
「実質的なナンバー1ってとこか」
マキナは結論付ける。
『鉄血の獅子』――間違いなく本物の武闘派ギルドと言っていい。
「我々から逃げた冒険者を追ってみればその蝶の紋章……『虹の蝶』か。全く、海賊共は一体何をやっているのだ!」
「海賊……お前らと何か関係があるみたいだな?」
「貴様らに説明することは何もない!」
ブロンド髪の男はふんと鼻を鳴らす。
「海賊には、我々『鉄血の獅子』以外のギルドがヨロイ島に近付かないように見張りを頼んだのだ! だが……見ての通り貴様らが来てしまっている。あの船長ランザスとかいう男、信用ならん!」
「あの人全部言ってるよ……」
アリアがヒソヒソ呟く。
滅多に無いぞ、アリアが引くなんて。
「思ってた以上にマヌケなんじゃない?」
「聞こえているぞ、そこのはしたない女!!」
「誰がはしたない女よ、引き摺り回すわよ!!」
ステラが叫ぶ。
というか海賊と繋がりがあるのか、ろくなギルドじゃないな。
「君達『鉄血の獅子』はヒヒイロカネのある火山の神殿にたむろしてると聞いた、一体何故だ?」
「ふん、だから何故言わなければならんのだ」
「頼む、無知な私達に教えてくれ」
「ヒヒイロカネを守る番人がいるのだよ、巨兵がな」
また言った。
ベローネが下手に出ただけでこれだ。
「この『鉄血の獅子』の精鋭、鉄血の四銃士の序列1位である私――撃剣のガヴェインはヒヒイロカネを手に入れるべくヨロイ島にやって来たが……神殿に潜む巨兵は強い。増援を要請したが、それが来るまで他のギルドに取られるわけにはいかん、いかんのだ!」
ガヴェインと名乗った男はブロンドの髪をたくし上げる。
「という訳だ。この情報を知ってしまった以上、貴様らを帰すわけにもいかん」
「全部お前が教えてくれたんだよ」
「黙れ白髪!」
ガヴェインはまるで焦っていない。
部下達も同様だった。
「これがガヴェイン様のジンクスだ!」
「敢えて極秘情報をさらけ出すことで自分を追込み、その情報を知った人間を必ず始末する……!」
「今のガヴェイン様は無敵だ!」
「そう、そして私は……この魔導武器と共にある!」
ガヴェインは腰に下げた奇妙な形状の剣を抜く。
「ひいい!?」
「あれだ、俺たちの怪我は、全部あの武器のせいなんだ」
ガタガタと冒険者が震える。
「あれは……銃剣か」
銃剣――文字通り銃と剣が一体化した武器。
距離を選ばず戦えるため、汎用性が非常に高い。
ガヴェインの銃剣は、黄金の装飾が散りばめられていた。
「また珍しい武器使うなぁ」
製造が難しいため、クフラル王国じゃ滅多に見ない。
「このバルトロの銃剣は、魔導武器最強と言っても過言では無いのだ!」
「……最強?」
マキナの耳がピクリと動く。
「あ、マー兄」
「それ言っちゃうか、マキナの前で」
アリアとステラが額に手を当てる。
「その武器、最強なのか?」
「無論だ。クフラル王国、いや大陸最強の魔導武器と言ってもいい!」
ガヴェインは高笑いをしながらバルトロの銃剣を掲げる。
「3人とも」
アリア達は何となく全てを察した。
「少し熱くなる」
マキナは背中の柄を握り、引き抜く。
火炎の剣身が現れ、熱気が舞う。
炎魔剣イフリート――基本性能、マキナの熟練度、共に最強の魔導武器。
「や、やっぱり〜!?」
「火山なんだからちょっとは抑えなさいよ!」
「ふふ、こうでなくてはな」
三者三様のリアクション、しかし『鉄血の獅子』はというと。
「な、何だその魔導武器は!?」
ガヴェインの頬に汗がタラリと流れる。
「こいつらは俺達が抑える、お前らは逃げろ」
「あ、ありがとう!」
「『虹の蝶』、アンタらのことは忘れないよ!」
「『虹の蝶』のこと宣伝しといてね〜!」
アリアが手を振って見送る。
「おい白髪、私を無視するな!」
――ドキュゥン!
ガヴェインが発砲、魔力弾が放たれる。
しかし、マキナの火炎の斬撃によって消滅する。
「な、何!?」
「これ、不意打ち、だよな?」
マキナはイフリートを構える。
続けてアリアはオルトロス、ステラがリンドヴルム、ベローネがストームブリンガーを構える。
「仕掛けてきたよな、お前ら?」
マキナの圧に『鉄血の獅子』が後退りする。
こうなった以上、話し合いでは済まない。
「――いくぞ、皆」
「がってんしょうち!」
「たっぷり暴れてやるわ!」
「腕がなるな」
今、このヨロイ島で、『虹の蝶』対『鉄血の獅子』の戦いの火蓋が切られたのだった。
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