第69話 海賊襲来!
「なっ!? あれってまさか!?」
ステラが身構える。
海賊がタイミングよく姿を現した。
甲板には、船員と思われる男達。
まるで4人を待ち構えていたと言わんばかりに。
いや――。
「待ち伏せされてたってわけか」
マキナが冷静に呟く。
海賊船は『虹の蝶』の船の斜め後ろにつくと、1人の男が姿を現す。
船長帽子を被った大柄の男、一目でリーダーだと分かった。
「――聞こえっかぁ『虹の蝶』!! これ以上進むことは、この船長ランザス様が許さん!」
ランザスと名乗った男は叫び、巨大な曲剣の切っ先を向ける。
自分達のギルドも割れている、もう待ち伏せなのは確実だった。
「聞こえないのか! 止まれって言ってんだ!」
一切聞く耳を持たないマキナは、帆船を進め続ける。
「海賊に譲歩するつもりはない」
「別にお前らには何の興味もねぇ、ただヨロイ島に行くってのが駄目だ。このまま回れ右すりゃあ何もしねぇ、オレっちは優しい海賊なのよ」
「海賊に優しいも何も無いわよ、頭お花畑なんじゃない?」
ステラが反論する。
「おいおい、可愛い顔して随分トゲのあること言うじゃねぇかよ」
ランザスは笑いながら右手を上げると、船員達が旧式の魔導銃を構える。
「こんな状況でも同じことが言えるかな?」
「もう一度言う、俺たちは海賊に譲歩しない」
マキナは帆船のエンジンを吹かせる。
「――全員掴まれ!」
そのまま一気にスピードを上げる。
「なっ、アイツら!?」
「逃げやがった!?」
「狼狽えんじゃねぇ! 目標を捉えつつ攻撃しろ!!」
海賊船もすぐさま後を追う。
ランザスの檄を浴びた船員は、魔導銃をマキナ達に発砲する。
魔力弾が舞い、海面に飛沫が舞う。
「わ、撃ってきたよ!!」
「一旦距離を取る!」
マキナ達の帆船は海賊船に比べて小さい分、スピードと小回りが効く。
「何か策を思いついたようだな」
「相手の射程外まで離れて、俺の魔導武器で仕留める」
「なら流れ弾は私に任せてくれ」
作戦を理解したベローネは、海上を走る帆船の甲板後部に立ち、背中の大剣を抜く。
退魔剣ストームブリンガー――全ての魔法を両断する黒き大剣。
「はああああ!!」
飛来する魔力弾を斬り払い、帆船の被弾を防ぐ。
超重量のストームブリンガーを軽々と、それも猛スピードで走る帆船の上で、一切よろけること無く振るう。
「な、何で魔力弾が効かねぇ!? それにどんな体幹してやがんだあの女剣士は!?」
海賊船の上でランザスは動揺の声を上げる。
「もう少し離れたい、行けるかベローネ?」
「この程度、余裕すぎる」
「よし……ステラ、運転任せた」
「ええ、アタシ操縦したことないわよ!?」
「アリアには任せられないんだ、頼む」
交代で舵を握るステラ。
その手の上から、マキナが被せるように握る。
「舵を水平に保ってればいい。もう少しでアイツらの魔導銃じゃ届かなくなる。多少よれても進路に影響は出ない」
「う、うん……! マキナはどうするの?」
「ヤツらに目に物見せてやる」
マキナは海賊の攻撃が止む瞬間を見計らい、ベローネとポジションを交代する。
【収納】を使い、魔導武器を装備。
――海神錨ポセイダル。
巨大な金色の錨のような見た目をした魔導武器だ。
ズシン、と鎖に繋がれたアンカー部が甲板に沈む。
「この距離なら、あの趣味の悪い船だけ攻撃出来る」
マキナはポセイダルを振り回し、何度も放つ。
それは海賊船にはほど遠く、いずれも海面を擦れただけだった。
「ははっ何やってんだあの白髪、オレっちの船に全然届いてねぇじゃねぇかよ! 距離を取ってもこれじゃあ意味ねぇな!!」
ランザスは馬鹿笑いする。
だが、その表情はすぐに崩れる。
ポセイダルの通過した海面がみるみる内に渦を巻き、巨大な渦潮が出来上がった。
【海神の加護】を持つポセイダルは、海水を自由自在に操作出来るのだ。
「な、何だと!?」
海賊船が渦潮に突入し、その場で立ち往生する。ミシミシと音を立て飲み込まれていく。
「魔導エンジンを最大にしろ! さっさとやれ!!」
「ア、アイアイサー船長!」
ランザスは船員に指示を飛ばし、渦潮から脱出を試みる。
「させない」
マキナは更に追い討ちを掛ける。
【収納】で、海竜砲リバイアスに装備を変更。
連結した長銃身状態による精密射撃。
スコープ越しに、遠くの海賊船を確認。
「本当の魔導銃を見せてやる」
――ドンッ!
リバイアスの魔力弾が命中、船底に穴を開ける。
衝撃で海賊船が大きく揺れ、穴から海水が勢いよく入り込む。
「こ、今度は何だ!?」
「船長、船が浸水を始めてます!」
「『虹の蝶』の遠方射撃と見られます……!」
「はぁ、ヤツらはあんなに離れてんだぞ、あそこから狙える武器なんて存在しねぇ! それにこの船はシグマ合金製だ、ブチ抜けるはずが――!!」
「で、ですが、奴らの帆船から何か飛んできたのを見たって船員も……!」
「し、出力が40%に低下、船体を維持出来ません!!」
「「「――うわあああああ!?!?」」」
沈んでいく海賊船を尻目に、マキナ達の帆船はそのまま離脱していく。
「ふいー」
リバイアスを仕舞い、肩の力を抜く。
「マー兄すごい! まさか渦潮を作っちゃう魔導武器なんて……!」
「それだけでない、遠ざかっていく中で海賊船を撃ち抜くとは……流石だな、マキナ」
「ベローネが銃撃の雨を防ぎ切ったからこそあの戦法にたどり着いた、助かった」
マキナとベローネは拳を合わせる。
「ア、アタシも中々仕事したんじゃないかしら!?」
ステラが舵を握ったまま、誇らしげに振り向く。
「ステラも頑張ったな、このままヨロイ島まで頼む」
「無茶言わないでよ!」
ステラがツッコミを入れると、残りの3人が笑う。
マキナは遠くの海賊船を見る。
「運が良ければ、民間の船に拾ってもらえるかもな」
俺みたいに、とマキナは心の中で呟くのだった。
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