第56話 突貫、リンドヴルム!
「よし、こっちもいい頃だ」
グオオオオ……!
ロックトレントの身体の岩は、既に大部分が取り除かれている。
これで全員がダメージを与えることが可能になった。
「ここからは俺も白兵戦をやる」
マキナはイフリートに装備を替える。
魔導銃のリバイアスとバハムートのままでは、アリア達が銃撃に巻き込まれてしまう為、4人全員の近距離武器による連携で仕留める作戦にしたのだ。
「これで百人力だね!」
「もう負ける気がしないわ」
「君がいると更に頼もしいな」
マキナ達はロックトレントを取り囲むように距離を取る。
ウグオオオ!!!!
ロックトレントが咆哮を上げると、背中から更に2本の腕が生え、合計で4本腕となった。
手の形状も変わり、双剣、槍、大剣を模している。
「わ、見た目変わった!」
「間違いない、俺たちの武器を真似してるな」
トレントはモンスターの中では知能の高い部類だ。人語を理解し、会話も可能な個体もいるくらいだ。
戦闘を有利に運べる武器の形を学習し、樹木の身体で再現したのだ。
「厄介な形になったわね」
「先に俺が仕掛ける、仕留められそうなタイミングがあれば頼むぞ!」
マキナは駆け出す。
ロックトレントの懐を狙うが、双剣の腕に阻まれる。
長く巨大な2本の腕の剣戟、捌き切るのは容易ではない。
「マー兄!」
「くっ、見様見真似でよくやる」
マキナは大立ち回りで攻撃を避ける。
途中抜けられるタイミングこそ合ったが、大剣と槍の腕が睨み付けている為、迂闊には近付けない。
「はああああ!!!!」
いち早く察知したベローネが、ストームブリンガーでロックトレントに斬りかかる。
ガキン!
しかし、それは大剣の腕で受け止められる。
「く、そう易々とはいかないか!」
上から大剣の腕に押さえ付けられる形になるベローネ。
「ああもう、焦ったいわね!」
ステラも同じように槍の腕に阻まれる。
だがこれで、ロックトレント全ての腕を封じたことになる。
「アリア、いけるか!」
「任せて!」
アリアが飛び込む。
ロックトレントの隙だらけの懐に、高速の斬撃が舞う。
グオオオオ!!
ほんの少し、腕の攻撃が緩んだ。
アリアが与えたダメージの影響だろう。
その一瞬をマキナは見逃さなかった。
「おおおおお!」
イフリートを燃え滾らせ、双剣の腕を同時に斬り裂く。
続けざまに大剣の腕を斬り裂きベローネを援護、マキナは仲間を守ることを優先した。
「すまないマキナ、助かった」
「気にするな」
アリアの方はステラを援護し、2人で槍の腕を撃破した。
「どんなもんだい!」
「アタシ達なら楽勝よ!」
2人は拳を合わせる、まだまだ余裕そうな表情だ。
その時、
腕の無いロックトレントの周りに、巨大な木の根が大地を揺らしながら現れた。
自身を覆い被さるように生えたそれは要塞のような迫力があり、攻撃と防御を両立させたように見える。
「……中で回復するつもりか!」
「アタシやるわ!」
「ステラ?」
「リンドヴルムならあの木の根の壁だって貫ける、そのまま本体を攻撃してやるわ!」
ステラが名乗りを上げた。
リンドヴルムの一撃の重さは、マキナの全武器を含めてもトップレベルに高い。
仮に炎岩砲バハムートで木の根を排除したとしても、本体に攻撃を浴びせる前に木の根を再生される可能性がある。
木の根の排除と同時に本体を攻撃、ステラのリンドヴルムによる突進ならそれが可能だった。
「分かった、頼むぞ!」
「任せなさい!」
ステラはリンドヴルムを振り回し、脚を強く踏み締める。
竜の如き一閃が、鉱山を駆け抜けた。
「やああああ!!」
木の根の壁に巨大な穴を開け、勢いのまま内部のロックトレント本体に迫る。
ザシュッ!
ステラの一撃が、ロックトレントの横腹を食い千切った。
グオオオオ!!!!
「どう、アタシのリンドヴルムの威力は!」
しかし、ロックトレントは尚も動き出す。
決死の攻撃はダメージこそ与えたが、無情にも致命傷には至らなかった。
「な……!?」
グオオオオ!!
両腕を回復させたロックトレントは、孤立無援となった空中のステラに襲い掛かる。
「失敗した……皆ゴメン!」
リンドヴルムを強く握り、唇を噛み締めた。
「大丈夫だ」
マキナの声が聞こえた。
すると、ロックトレントが絶叫を上げた。
――グオオオオオオオオオ!!!!!!!!
マキナがロックトレントの胸にイフリートを深く突き刺していた。
彼は、ステラが木の根の壁に巨大な穴を開けたと同時に走り出していたのだ。
もしステラが失敗したとしても、確実にトドメをさせるように。
「元は樹木だ、炎剣は天敵と見た」
イフリートを燃え上がらせ、ロックトレントの全身が炎で包まれる。
すると周りの巨大な木の根も、中腹を覆っていた樹々も焼け落ちていく。
鉱山の地中でロックトレント本体と繋がっていた為だ。
ゴオオオオオオオ!!!!
するとロックトレントの口が大きく開き、何かが発射された。
マキナの頬を掠めたそれは、小さな種子のように見えた。
「……悪あがきか?」
しかし、マキナは攻撃の手を緩めはしない。
更にイフリートに力を込め、目の前の敵を消し炭にする。
そして、
ロックトレントは倒れ込むと、黒い灰となり四散した。
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