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第51話 鉱山のロックトレント


「おいで下さりましてありがとうございます」


 アスガルド家の屋敷にやってきたマキナ達は、とある一室に案内された。

 豪華なシャンデリアに艶のある煉瓦(れんが)色のテーブル、調度品の一つ一つにもこだわりを感じさせる。


「明日、俺達は鉱山エリアに行こうと思いまして、その報告に来ました」


「行く前に声をかけて欲しいって言ってたもんね!」


「はい、その事で皆様に伝えたいことがあるのです」


「……リサーナ様、如何されましたか?」


 すると、

 リサーナは頭をゆっくりと下げる。


「『虹の蝶』の皆様、どうか私の依頼するクエストを受けて頂けないでしょうか」


 突然の事でマキナ達は目を見開く。


「今、楽園竜(アイランド・ドラゴン)に危機が迫っているんです」


「詳しく説明してもらえませんか?」


 マキナはただならぬ雰囲気を感じ取る。


「はい、実は今、鉱山エリアにとあるモンスターが文字通り根付いているんです」


 リサーナは頭を上げると、1枚の写真を取り出す。


「これ、もしかしてトレントか……?」


 ――トレント。

 樹木の姿をしたモンスターで、見た目通り本来は森に生息する。

 しかし、写真のトレントは樹木というよりも人間に近く、かなり大きい。


「この姿、だいぶ成長が進んでいる」


 そう、トレントは上位種になればなるほど人間に近い姿になり、大きさも通常とは比べ物にならない。


「約1ヶ月前にトレントの種子がこの鉱山エリアの中腹に降り立ってしまい、芽を出したのです」


「トレントの種子となると、今の楽園竜(アイランド・ドラゴン)の位置的に……魔の森から流れたものですね」


「その通りです、その森が進行ルートの側に位置していたので間違いないでしょう。タイミングも一致します」


 魔の森は大陸切っての植物系モンスターの巣窟とされる危険な森だ。

 そこから気流に乗って偶然この楽園竜(アイランド・ドラゴン)に流れ着いたのだろう。


「それにしても、トレントってたった1ヶ月でこれだけ成長するんだっけ?」


「恐らく......この楽園竜(アイランド・ドラゴン)本体に蓄えられた栄養分を直に取り入れている為です」


「なるほど」


「この大陸に来るのが3年早くなったのも、楽園竜(アイランド・ドラゴン)がトレントに寄生された苦しみで休まずに走り続けていたからなんです」


 トレントは植物系モンスターの例に漏れず、地面に根を張り、そこから栄養を取り入れることで生きる。

 鉱山エリアにいるトレントはその根をどんどん侵食させ、やがて本体に及んだのだろう。

 まして楽園竜(アイランド・ドラゴン)程の巨大なモンスターなら、その栄養分も計り知れない。

 この禍々しく成長した姿にも納得がいく。

 

 そしてもう1つ気になる点があった。


「身体中に岩を纏っている……鎧のようにも見えます」


「そう、この個体はロックトレントと化しているんです」


 トレントは芽を出した環境に合わせてその姿を変える。このトレントは栄養補給の際、鉱山の岩や礫も取り込んだ為だ。


「アスガルド家騎士団で討伐を試みましたが、凄まじい強さに撤退を余儀なくされました……犠牲者が出なかったのが不幸中の幸いです」


 リサーナは俯きながら続ける。


「暴走したままではやがて本来のルートも外れてしまうかもしれません。進行先に何があろうと……街や都市も関係なく踏み潰してしまうことでしょう」


「そんな!?」


「一大事じゃないの……!」


「つまり、このロックトレントの討伐を俺達に依頼したい訳ですね」


 狼狽するアリアとステラを横目に、マキナは本題に触れる。


「はい、我が騎士団が誇る砂塵のベルフェムトを下し、草原エリアでのフォレストホーン討伐。そして、わずか1日で地下水脈ダンジョンのミスリルを獲得した『虹の蝶』の皆様の力を、どうかお貸しして頂けないでしょうか?」


 すると、アリアが真っ先に声を上げた。


「やろうよマー兄、私達なら勝てるよ!」


「確かに、アタシらだったら何とかなりそうよね」


 ステラも続けて言う。

 これから相談するつもりのマキナにとって予想外の展開だった。


「えらく即決だな」


「我々全員が君の武器を装備しているんだ、負ける通りがない。マキナ、君の意見も聞きたいな」


「やる」


 無論、マキナの意見も同じだった。

 目の前の危機を黙って見ている訳にはいかない。


「ありがとうございます……アスガルド家も全力でサポートさせていただきます!」


 泣きそうな顔になりながらリサーナは微笑む。


「よし、そうと決まればまず人数がいるな」


「え、どうして?」


「下手に戦う人数増やしたら逆に危険じゃない?」


「逆だ、戦うのは俺達だけになるように他の冒険者が入れないようにしたい。探索エリアの入り口とそうだな……念の為鉱山エリアの周りを封鎖するように大勢の見張りをつけたいんだ」


 そうすれば、他の人間が巻き込まれることはまず無いはずだ。


「この楽園竜(アイランド・ドラゴン)に住んでいる人達にロックトレントの存在が知られたらパニックになる。だからなるべく外部に漏れず秘密裏に倒したい、そうですよね?」


「え、ええ、その通りです」


 マキナの的を射た発言に、リサーナは頷く。


「騎士団の皆さんにも封鎖に協力をお願いしたいです。ただ、それでも足りなそうだ」


 何より広大な探索エリアだ。

 いくら規模の大きな騎士団と言っても、全てをカバーするには限界がある。


「そこで彼らの出番な訳だな」


「ああ、アイツらは口も堅そうだ」


 マキナは部屋の窓を覗く。

 屋敷の門の前で、性懲りもなく後を尾けてきたゴロツキ集団を視界に移すのだった。


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