第49話 ミスリル争奪戦!
4人はダンジョン内の洞窟を引き返し、マキナの目星の付けていた別の道へと再び進む。
途中で何度も分かれ道が行手を阻むが、マキナは冷静にルートを見極め、確実に奥へと近付いて行った。
そして、遂に最奥部へと到達した。
地下とは思えない程ぽっかりとくり抜かれた広い空間、天井から岩が巨大な氷柱のように幾つも生えており、その下は底が見えないほどの暗闇に包まれていた。
「よし、着いた」
「こんな辿り着き方、君にしか出来ないな」
「正攻法で攻略しようもんなら何週間も掛かってたわね……!」
周りには誰もいない、マキナ達が1番乗りのようだ。
「見て! あれがミスリルなんだ!?」
アリアが指を差す。
最奥の方で、ミスリルが青白く光り輝きながら空中に高く浮いていた。
「あれを取りに行くのは至難の業だな」
ベローネは頭を抱える。
ミスリルを視認こそ出来るが、余りに位置が遠過ぎる。
「大丈夫だ、こういう時に最適な物がある」
「おお、流石マー兄」
「今回は武器じゃなくて魔道具の出番だな」
マキナはスキルで魔道具を取り出そうとすると、すぐ側の別の洞窟から『ローズ団』が現れた。
「ようやく着いたね。ここにミスリルがあるって訳かい」
「へいアネゴ!」
「しらみ潰しにルートを調べた甲斐があったってもんさ、こんな所に来れるヤツらなんてアタイら以外にいやしないよ……ってあれ!?」
ローズがマキナ達を見て仰天する。
「に、『虹の蝶』!? 何でアンタらがここに!?」
「何でって、普通に攻略してきたんだよ」
「へへ〜ん、どんなもんだい!!」
「馬鹿な!? アタシらが1ヶ月かけてようやくこの場所を見つけられたって言うのに、何か法則性でも見つけたっていうのかい!?」
「ダンジョンだろうと、環境は嘘をつかないってだけだ」
「な、何を訳の分からないことを……!」
ローズは歯噛みする。
「アネゴ、落ち着いてください!」
「ミスリルはまだあそこにあります! ほら、あの浮いている奴です!」
そう、マキナ達はあくまで辿り着くのが早かっただけで、ミスリルを手にしたわけではない。
「そうだったね……諦めるには早い!」
ローズは一気に駆け出した。
鉤爪ロープを取り出し、その先を天井から生えたつらら石に目掛けて投げつけ、固定する。
ローズはロープを掴んだまま、そのまま臆する事なく飛び込む。
「ここから先は分かりやすい競争だよ『虹の蝶』!」
それを繰り返し、確実にミスリルとの距離を詰めていく。
「どうだ、アネゴのロープ捌きは!」
「あの腕前と度胸があるから俺達はアネゴに惚れたんだ!!」
『ローズ団』の団員は威勢よく言った。
「確かに凄いな、流石トレハンギルドのリーダーだけあるな」
「感心してる場合じゃないでしょ!」
「あのままじゃ取られちゃうよ〜!?」
マキナの呑気な発言に、アリアとステラが焦りだす。
「もちろん、黙って見てる訳には行かない」
そう言いながらマキナはある物を取り出した。
先端部には可動式の4本の大きな爪、後部には持ち手が付いている魔道具だった。
「マー兄、何それ?」
「俺の考えた魔道具、その名もガルーダショットだ」
マキナはつらら石に目掛けてガルーダショットの爪を向ける、すると鎖に繋がれた先端部が勢い良く射出された。
「行ってくる」
爪が展開しガチンッ! と岩に固定されると、続けてマキナも同じように飛び込む。
「気をつけるんだぞ、マキナ」
「無理しないで!」
「まずいと思ったらすぐ戻りなさい、絶対だからね!」
そしてマキナはガルーダショットを駆使し、ミスリルの元へと向かって行く。
鉤爪ロープに比べてガルーダショットは固定、解除が圧倒的に早い。
マキナはすぐさま距離を詰め、先を行くローズに追いついた。
「な、もうアタイのすぐ後ろに!? それに、見たことない道具を使っている!?」
「その様子だと、追い抜かれることも想定してなさそうだな」
「舐めてもらっちゃ困るんだよね……このローズ様を!」
ローズは更にスピードを上げるが、それ以上にマキナのペースは速い。
2人は横並びになると、ミスリルまであと僅かの距離となった。
すると、
ミスリルから発せられた青白い光が消え、重力に従い落下していく。
「まずいな」
「ちぃ! 随分意地悪なダンジョンだね!」
その時、
キンッ!
ローズの投げた鉤爪ロープの狙いが甘く、岩に弾かれてしまう。
落ちていくミスリルを見て、焦りが出たのだ。
「なっ!?」
支えを失ったローズはそのまま落下する。
「――きゃああ!!」
「――アネゴぉぉぉ!!」
様子を見ていたアリア達の悲鳴が響く。
それを見たマキナはすぐさま方向転換し、自身が近くの岩に直接飛び付くと、ガルーダショットをローズに目掛け射出する。
ガチン!
ローズの身体を完全に捕らえ、間一髪で救出に成功した。
鎖を勢いよく巻き戻し、彼女を引き上げていく。
「ど、どうしてアタイを助けたんだい……!?」
「助けられる位置にいるのは俺だけだったからな」
「そんなこと聞いてるんじゃない! ミスリルを無駄にするほどの価値なんてアタイには無いって言ってるんだよ!」
「ならあのまま死んだほうがいいっていうのか。アンタの仲間が聞いたら悲しむだろうな」
マキナは後ろの『ローズ団』に目を向ける。
「よがっだあああ」
「アネゴおおおお」
団員達は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに汚していた。
「全員、アンタが無事でいてくれたことに対してあんなに泣いてるんだ。少なくとも部下に信頼されたリーダーだって分かる」
「ふん、何にせよ自分がミスリルを手に入れるチャンスをフイにしちまったんだ! 馬鹿な男だ!」
「何言ってるんだ、俺はまだ諦めてないぞ」
「はぁ?」
「落ちたミスリルを回収する」
マキナはローズを完全に引き上げる。
「ここまで上げたら充分だろ、後は自前のロープで何とかしてくれ」
「あ、ああ」
ローズは鉤爪ロープを使い、マキナと同じ岩に自身を固定させた。
「底は真っ暗だよ、一体どうするつもりだい?」
「うってつけの魔道具がある」
マキナは片手で岩に掴まったまま、スキルで新たに魔道具を取り出す。
カンテラの下部に水晶を取り付けたようなデザインをしていた。
「マグネサーチャー、これならいける」
マキナはマグネサーチャーの水晶部を下に向け、持ち手を強く握る。
すると水晶が青く光りだし、可視化されたオーラが一本の線になって暗闇に注がれて行く。
「確かこの辺りだな」
オーラを動かし、場所を探る。
そして、水晶の色が青から赤に変わった。
「見つかった」
マキナが出力を上げると、暗闇の底からミスリルがオーラの線に沿って姿を現した。
ガチィン!
そして音を立ててマグネサーチャーにくっ付いた。
「な、何だって!?!?」
ローズの声が裏返る。
「ミスリルはごく僅かに磁力を持っている。空中に浮いていたのは、岩壁から発せられた磁力の影響による物だ」
マキナは両脚で器用に岩に掴まり、マグネサーチャーに付いたミスリルを取り外す。
「なら、強い磁力を使えば引き上げることも可能だろ?」
「まさかそんなことが可能なんて……って!?」
「どうした?」
「そんな魔道具があるなら最初からそれを使えば良かったじゃないか! 何でわざわざこんなリスクを犯したんだい!」
「最初はこれで獲ろうと思ったんだけど、すぐにアンタがロープで飛び出してったから使うタイミング無くなったんだよ」
「は?」
「ほら、だって萎えるだろ、一生懸命ロープで進む人間がいるのにこんなの使ったら」
「そんな理由で、アタイのやり方に合わせたって言うのかい……」
「ま、それでも先に手に入れるつもりだったけどな」
マキナはミスリルを【収納】で仕舞う。
「あっはっは、アタイの完敗だよ! 確かマキナって言ったね。馬鹿な男ってのは訂正させておくれ、アンタは最高の男だよ!」
大笑いするローズ。
こうしてマキナ達『虹の蝶』は地下水脈エリアを攻略し、ミスリルを手に入れたのだった。
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