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第47話 ローズ団現る!


 マキナ達がクエストの報酬を貰い、ギルドを後にする頃には夕方だった。


「なんか夢みたいだね〜!」


「本当よ、2、3年は遊んで暮らせる額だもの!」


 意気揚々と街の大通りを歩くアリアとステラ。

 パーティー内の資産がいきなり膨れあがったのだ、無理はない。


「今日だけで思っていたより草原エリアは回れたし、明日は地下水脈エリアに行こうか」


 マキナは隣を歩くベローネに提案する。


「私は賛成だ、2人もそれで良いか?」


「いいよ〜!」


「この調子でとことん探索してやるわ!」


 拳を突き上げ、やる気いっぱいに答えた。


「『虹の蝶』の皆さ〜ん!」


 どこからか、マキナ達を呼ぶ声が聞こえた。

 巫女服のリサーナが、騎士団員を連れて前からやって来た。


「リサーナちゃん!」


 アリアは走り出し、リサーナと手を合わせる。


「その様子だと、楽しんでいただけているようですね!」


「うん、凄く楽しいよ!」


 例え貴族の当主だろうと、瞬く間に打ち解けられるアリアの性格に、マキナは少し羨ましいと感じた。


「ところで、リサーナ様はこれから何処か行かれるのですか?」


「ええ、これからギルドへ向かう途中だったのです♪」


 ベローネの問いに、リサーナは笑顔で答えた。


「『虹の蝶』の皆様が見つけて下さったワイバーンを引き取りに参った次第であります! この度はご協力ありがとうございます!」


 騎士団員は一斉に敬礼をした。


「リサーナちゃんも探索エリアに入るの?」


「いえ、私は付き添いです。『虹の蝶』の皆様が早速探索エリアに入られたと聞いたので、もしかしたら会えるかもって思ったんです♪」


「つまり、わざわざ俺達に会いに来てくれたってことですか?」


「はい! 何と言っても私は『虹の蝶』の皆さんのファンなのですから!」


 リサーナは上機嫌のまま屈託のない顔で言った。


「森でワイバーンを見つけてくれたという事は、今日は草原エリアを探索したのですね」


「見たことないモンスターばっかりだったから凄く新鮮だったよ!」


「明日は地下水脈エリアに行こうと俺達で話してた所です」


「そうですか……! 地下水脈エリアは何と言っても、洞窟内部が広大なダンジョンになっているのが特徴なんです!」


「ええ、ダンジョン!?」


 アリアが目を見開く。

 ダンジョンというのは魔力濃度の高い地形に出現する物だ。モンスターが住めるほどの多彩な環境に恵まれた楽園竜(アイランド・ドラゴン)の甲羅の上ならば、存在しても不思議ではない。


 それでも、モンスターの背中に街や自然だけでなく、ダンジョンもあるとは流石に考えもしなかった。


「そしてこのダンジョンでは、あのミスリルが見つかることがあるんですよ!」


「……何だって!?!?!?」


 マキナは驚愕し、リサーナの両肩を掴む。


「ひゃうっ!」


「本当ですか!? あのミスリルが!?!?!?」


 半狂乱のままマキナは問いかける。


「は、はい。5年前に1度だけ、ここのギルドに納品されたんです……!」


 ミスリルとは、大陸で確認された中で最高の硬度を誇る透明な鉱石だ。その特徴からして、一部の種族を除いて加工は不可能と言われている。


「遂に、遂に手に入るチャンスが……!」


 ミスリルを使った武器の製作は、元鍛冶師のマキナにとって1度は思い描いた夢だった。

 故に、彼の気持ちは昂っていた。


「マキナ、取りあえず離れる!」


 ステラはマキナの首根っこを掴み、無理矢理引き剥がす。


「全く、何やってんのよ」


「すみません、取り乱しました」


 正気を取り戻したマキナは、悪さをした猫のようにズルズル引き摺られていく。


「いえ、いいんです!」


 リサーナは少し頬を染めたかと思うと、うつむいて身体をもじもじとさせた。


「それじゃあ明日は地下水脈のダンジョン攻略だね!」


「あの希少なミスリルか、私も是非見てみたい物だ」


「俺達で絶対手に入れるぞ」


「――それは土台無理さ、何てったって手に入れるのはアタイらなんだからさ!」


 横の酒場から、1人の美しい女性が姿を現す。

 軽装の冒険服に身を包み、口紅で紅く染められた唇が妖艶(ようえん)さを醸し出している。

 リサーナは、女性に声をかける。


「貴女は確か『ローズ団』の方……!」


「これはリサーナ様、アタイのギルドの名を覚えていただき光栄の極みって奴だね」


 女性は軽く会釈すると、マキナ達に向き直る。


「アタイはローズ、名前の通り『ローズ団』の頭を張らせてもらってる。1ヶ月前にこの楽園竜(アイランド・ドラゴン)にやって来たのさ」


「『ローズ団』、私も聞いたことがある。確か西大陸で活躍しているトレジャーハント専門のギルドが同じ名前だったな」


「そう、それはアタイらのことさ。明日にはここのミスリルを手に入れるギルドの名前にもなる」


「勝手に横槍入れておいて随分な物言いじゃないの」


「ミスリルを手に入れるなんて可愛らしい話をしてたら入りたくもなるじゃないか、お嬢ちゃん」


「何ですって!?」


「わわ、ステラちゃんストップストップ!!」


 アリアが慌ててステラを静止させる。


「世の中には適材適所があるのさ、アンタら『虹の蝶』は戦闘に関しては凄腕らしいね。だけど、財宝獲得に関してはアタイら『ローズ団』の右に出るものはいないのさ」


 ローズは後ろを振り返る。


「だよね野郎共!!」


「「「おおおおおおおお!!!!」」」


 酒場で飲んでいた男達が一斉に声を上げた。


「ええええ!? これ皆『ローズ団』の団員なの!?」


「そうさ! アタイらで色んな財宝を手に入れてきたのさ。明日にはここのミスリルも頂いていくよ!!」


 ローズは大声で笑い出す。


「どうしようマー兄、流石に厳しいかも……」


「人数なんて諦める理由にはならない」


「へぇ、これを見ても気持ちが折れないとはね。アンタ名前は?」


「マキナだ」


「ふぅんマキナか、覚えておいてあげるよ」


「俺達は絶対にミスリルを手に入れる」


「アッハッハ! 中々良い目で言うじゃないか! 明日の悔しそうな顔が楽しみだよ!!」


 ローズはそう言い残すと、酒場に戻っていく。


「何よあれ、終始自分達がミスリルを手に入れる前提で話してたじゃない!」


「あの方達はここに来てからダンジョン内の財宝を次々に発見しています、恐らくミスリルの場所も突き止めているかもしれません」


「そんなぁ……!」


「だからと言ってみすみす譲るわけにもいかない。そうだろマキナ……マキナ?」


 マキナに目を移したベローネは異変に気付く。

 彼の背中は燃えていた。

 いや、燃えているように見えた。

 背負う炎剣よりも、熱く。


「皆、絶対に手に入れるぞ、ミスリルを」


 振り返るマキナの眼は、更に熱く燃えていた。


「マー兄、本気モードになっちゃった!?」



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