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第45話 思わぬ出会い


「怪我はないか?」


 少年はイフリートを仕舞い、座り込んだままのニコルに声を掛ける。


 「は、はい」


 こ、この人が、アニキの言っていた『白銀の翼』の元鍛治師ッスか......!?

 ニコルは思いもよらない対面に緊張していた。


「マー兄、大丈夫〜!?」


 少し遅れて奥の茂みから桃色の髪の少女がやってくる。


「何とか間に合った、問題ない」


「よかったー!」


「アリアもよく頑張ったな」


「でしょ〜、どんなもんだい!」


 アリアと呼ばれた少女は胸を張ると、ニ振りの白い短剣を鞘に仕舞った。


「立てるか?」


 白髪の少年は右手を差し伸べる。

 ニコルはその手を握り、ゆっくりと立ち上がる。


「あ、ありがとうございますッス」


「激昂状態のフォレストホーンに襲われるなんて、お互い災難だったな」


「え、それって……」


「私達もさっき泉の近くで遭遇したんだー、びっくりしたけどマー兄がすぐやっつけてね、他の場所でフォレストホーンに襲われてる人達も助けてきたとこなんだ!」


「こ、こんな強そうなモンスターを何体も!?」


 ニコルは目を見開く。

 自分では太刀打ちなど到底無理なモンスターを、今のだけでなく数体倒した後だと言うのだから無理はない。


「ああ、数は覚えてないけどな」


「私は2体で、マー兄は10体倒してたよ!」


「じ、10体!?」


 さ、流石はジュダルアニキの炎剣ッス……。

 ニコルは炎魔剣イフリートを見つめる。

 その視線に気付いたアリアはニヤニヤとした顔を浮かべた。


「……やっぱり気になっちゃう、気になっちゃうでしょ〜? マー兄の武器、炎魔剣イフリートが!?」


 アリアは少年の背中の剣を指差す。

 ここでニコルは、ジュダルが言っていた事を思い出した。


 炎剣を所持している『虹の蝶』の冒険者は、『白銀の翼』の鍛冶師をクビになった腹いせに、ギルドの武器を全て盗んだ最低な奴だと。

 そして、炎剣を奪い返せば自分の闇ギルド在籍の汚点を消して貰えることを。


 そうだったッス……! いくら助けてくれたと言っても本当は悪い人なんス、オイラは騙されないッス!


「……すごく気になるッス!」


 ニコルは隙を見て、盗賊スキルを使うことを決意した。


「でしょ〜では私が説明しま――ッ!?」


「そんな時間、後でいくらでも取れる」


「あう」


 少年はアリアの頭にストンと手刀を乗せた。


「それにしても、お陰で助かったよ」


「へ、どういうことッスか?」


「君が悲鳴を上げてくれたからここにいるのが分かったんだ、ありがとう」


「え」


 今、この人、お礼を言ったんスか……オイラを助けてくれた方なのに?


 予想外の言葉にニコルは驚きを隠せなかった。


「……それ、もしかして君の武器か?」


 白髪の少年はニコルの足元を指差す。

 破損したクローが、折れた先端と共に落ちていた。

 鞄に仕舞っていたのが何かの拍子にこぼれ落ちたのだろう。


「あ、これ、オイラのッス」


 ニコルはクローを手に取る。

 自分の武器がジュダルに壊されたことを思い出し、ガクリと肩を落とした。


「大事な物みたいだな」


「はい、爺ちゃんから貰った武器なんス」


「なら早く治さないとな、俺に貸してくれ」


「へ?」


「マー兄の鍛冶スキルなら余裕だよね!」


 言われるがままにニコルは壊れたクローを渡す。

 少年はそれを両手で包むと、手の隙間から光が漏れ、瞬く間に修復されたクローが現れた。


「よし、これで大丈夫だ」


 少年はクローをニコルに返却する。

 完全に元の状態に戻っていた、修復の跡もない。


「へ、へぇぇ!?」


「やっぱり最初はびっくりするよね〜」

 

「あ、ありがとうございますッス! えーっと」


「マキナだ、気にしなくていい」


 聞いていた話とまるで違う。

 ジュダルはこれほどの鍛冶スキルを持つ彼を役立たずと言っていた。

 そして自分をモンスターから助けてくれて、武器まで直してくれる優しさを持っている。


 ほ、本当に、悪い人なんスか? いや、でも。

 ニコルは頭をぐしゃぐしゃ掻きむしる。

 今の彼では、ちゃんとした判断が出来なかった。


「どうした、何があったか?」


「いや、何でもないッス!」


「もしかしてどこか痛みだした!? なら手当てしないと!」


 すると、遠くの方から声が聞こえてきた。


「……その声はアリアかー!?」


「……いるなら返事しなさいよー!」


「あ、ステラちゃん、ベローネさん!! こっちだよ〜!!」


 その呼び掛けの中に、ニコルにとって聞き覚えのある名前があった。


 もしかして、壮麗のベローネのことッスか、この人達のパーティーメンバーだったなんて……!?

 今一番出会ってはいけない人物が、この楽園竜(アイランド・ドラゴン)にいる。


「それじゃオイラはこの辺で……!」


「ええ、1人だと危ないよ〜!」


「俺達もそろそろギルドに戻るんだ。念の為、街まで送るぞ?」


 2人が純粋に自分を心配してくれている事が痛いほど伝わっていたが、留まるわけにはいかなかった。


「全然大丈夫ッス! むしろ元気一杯ッス! 本当にありがとうございましたッスーーーー!!!!!!」


 ニコルは物凄い速さでその場から立ち去る。


 分からないッス、オイラどうしたらいいんスかぁ〜!?

 頭の中がこんがらがったまま、森の中を駆け抜ける。


 一方その頃、ジュダルは。


「ひぃいいいい! ごめんなさいいいぃい!」


 ヂュー!!

 ヂュー!!

 ヂュー!!

 キバネズミの群れにうっかり鉢合わせになり、袋叩きにあっていたのだった。


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