第31話 ジュダル、マキナと再会する
「にしても、まさか俺様があの鉄屑弄りを探す羽目になるとはな」
あれから数日。
ジュダルはクエストに出向くことはせず、街に長時間潜伏することを繰り返していた。
理由はそう、マキナを見つけるためだ。
「この辺りでも一番栄えてる街だ、肉屋や青果市だってここにしかねぇんだ。張り込んでりゃいつかは必ず出会う……!」
ジュダルは時計台前広場のベンチに座り、しきりに辺りを見渡す。
頭上の太陽は絶好調と言わんばかりにその陽光を降り注ぐ。
「あちい、あちいよ畜生、だが早くしねぇとな……」
彼は焦っていた、
『白銀の翼』のノルマ達成の期限が近づいていたからだ。
半分も達していない状況、だがジュダルは今の限られた期間でノルマ達成を余裕で超える成果を出してきた。
マキナの武器さえあればそれらを全てクリアする自信があった。
「くそ、なんで俺がこんなことしなきゃならねぇんだ!」
頭をボリボリと掻きむしる。
ジュダルはいつも面倒なことは全て部下にやらせていた、他に1人でも残っていたらきっとその団員に命令していただろう。
「結局、俺以外の団員は腰抜けだったわけだ、『白銀の翼』は元から俺1人で引っ張っていたようなもんだな」
全くの見当違い。
この男には反省という2文字が存在しない。
「しっかし、マキナ以下の鍛冶師は意外にいるもんだな。武器を1回使っただけで壊れちまうのは流石にねぇよなー。オマケに俺の武器の使い方が悪いと言いやがる」
頭の後ろに両腕を回し、背もたれに寄りかかる。
そういえばマキナは今を何やっているのだろうか。
アイツのことだ、どうせ鍛冶師でも続けているのだろう。
自分のような華々しい冒険職とはまるで違う、手の鉄臭さが男の勲章とでも思わないとやってられない底辺職だ。
「ま、それも『白銀の翼』の鍛冶師に戻ることで少しはマシになる。むしろ俺はアイツを助けてやるようなもんだ」
時計台は昼の12時を指していた。
あと7時間は粘れるな、だが腹も空いた……茹だるような暑い時にはアイスって相場が決まってるんだ。
ジュダルはなけなしのお金を携え、街のアイスクリーム屋に向かった。
すると、
「……マ、マキナッ!?!?」
ジュダルはアイスクリーム屋で、今まさに買い物を済ませたマキナの後ろ姿を見た。
隣には桃色の髪の可愛らしい女の子が、山盛りのアイスに舌鼓を打っている。
あの白髪、背中の炎剣、間違いない。
「……美味いな」
「ねー! 美味しいでしょ!?」
「ああ、にしてもこの街にアイスの有名店があったなんてな、アリアは前から知ってたのか?」
「この街の女の子冒険者なら皆知ってるよ〜、マー兄も晴れてアイスクリーム女子の一員だね!」
「いや、それはおかしくないか?」
「細かいことはいーの!!」
あの野郎、
楽しくデートなんてしてやがる……!
俺はお前を見つけるためにこんな苦労してるってのによ!!
「……マキナッ!!」
ジュダルは呼びかける。
マキナは顔を向け、少し驚いた表情を見せた。
「ジュダルか……?」
「ああ、そうだ、俺だ、俺様だ。昼間からデートとは随分と良い御身分だなマキナ」
「デートって、お前なぁ」
「……マー兄、この人知り合い?」
「ああ、彼は――」
「――俺が最強の武闘派ギルド『白銀の翼』のリーダー、ジュダル様だ! マキナ、俺はお前に話があってここまで来てやったんだ! 感謝しやが……ん??」
ふとジュダルは、マキナの胸の紋章に気付く。
「お前、冒険者に? 『虹の蝶』に入ったのか?」
「ああ、お前に追い出された後すぐにな」
コイツ、言葉にしたくもないくらい目障りな連中の仲間になってやがったか。
少し予想外だったが……まぁ今何をしてるかなんて些細な問題か。
「大方、名前が聞いたことあるってだけで入団したんだろ? どんなにギルドの名が知られていてもお前自身が強くなったわけでもない、食っていけるわけでもない、分かるなマキナ?」
「話が見えない、何が言いたいんだ?」
「マキナ、お前を『白銀の翼』の鍛冶師に戻してやる、盛大に感謝しやがれ!!」
「……は?」
「ふ、まぁ驚くのも無理はない。この俺様が他人に這い上がるチャンスを与えてやるんだからな」
ジュダルはしたり顔で続ける。
本当は最後の望みのため慎重を要するが、本来の力関係を崩したくないという思いがあった。
「どうせ武器弄りしかしてこなかったお前だ、モンスターを倒すことなんて夢のまた夢なんだろ? それじゃあ日銭を稼ぐのも無理ってもんだ、特別に俺が救ってやるよ」
マキナはきょとんとする。
くっくっく、無理もない。
俺のようにこんなに人を想える人格者は他にいないからな。
どうだ、感動で声も出ないか!
俺が神にでも見えているんだろ!
「早速今からだ! 『白銀の翼』ギルドで武器の製作に取り掛かれ!!」
「……お前何を言ってるんだ?」
当然の台詞だった。
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