第12話 退魔の剣と迅雷の弓
マキナの整備された道のお陰で登頂は順調、かつ安全に進むことができた。
そして山頂、
2人は壁一面に紫色の魔石がびっしりと張り巡らされた空間に辿り着いた。
「よし、やっぱり誰も来てないな」
「こ、これだけの魔石、今まで見たことがないぞ??」
ベローネは唖然とした。
そんなマキナは気にも留めずにスキルを発動させた。
「鍛治スキル【鑑定】」
鍛治スキルの1つ【鑑定】は、触れた素材の状態を確認することができる能力だ。
マキナは魔石1個1個に触れていく。
魔石(A)、
魔石(S)、
魔石(A−)、
魔石(A+)、
魔石(A)、
……。
このマキナの採取ポイントは魔石が多く存在するだけでなく、最低でAランクが保障されていた。
定期的に出向いているからこその賜物である。
「見つけた、魔石(S+)だ」
マキナは鍛治スキル【収納】で採掘道具を取り出す。
魔石は見つけることより、その後の採掘が重要とされている。
万が一傷を付けてしまうとそれだけでランクが下がってしまうからだ。
ザク、ザク……。
慣れた手捌きで魔石と岩の間に道具を差し込み採掘していく、そして。
ガコンッ、
ものの2分で魔石が外れる、
【鑑定】で再度確認。
よし、ランクも維持できているな。
「ふいー、やっぱり神経使うな……」
「ベテランの鉱夫でも20分掛かる工程を……何という手捌きだ」
「こればっかりは手作業だからな、慣れるのに苦労したよ」
「……」
「どうしたベローネ?」
「……美味しそうだな」
「本気で言ってんのか」
紫の魔石を見つめながらベローネは言った。
初対面の冷静沈着なイメージがどんどん崩れていく。
「まぁいいや、ロングソード貸してくれ」
魔石は採掘して時間が経ってもランクが下がってしまう。手に入れたら直ぐに加工するのが良いのだが、運搬と設備の都合で普通なら現実的ではない。
だがマキナの鍛治スキルならそれをクリア出来る。
「鍛治スキル【作製】」
ロングソードと魔石が光り、交わり、1つになる。
そして、古代文字が刻まれた黒き大剣、ストームブリンガーが現れる。
「よし、一丁あがり」
「す、すごいな、本当に作り出してしまうのだな。アリアから聞いてはいたが、いざ目の前にすると言葉が出ないな……」
「少し前までこれが本業だったからな。ほら、大事に使ってくれよ」
ベローネにストームブリンガーを手渡す。
「……本当にありがとうマキナ、君に頼んでよかった」
「いいってことよ、役に立ててよかった」
その時、
上空から金切り声のような鳴き声が聞こえてきた。
翼を羽ばたかせ、竜の頭を持つ巨大なその姿。
「ワイバーンか!」
ワイバーン、飛竜種と言われる小型のモンスター。
しかしこれはあくまでドラゴンの中ではだ、目の前の個体は間違いなく15メートルはある。
ギャギャギャアアアアア!!!!
ワイバーンは空からファイアブレスを吐く。
マキナ、ベローネは即座に回避する。
雪は勿論、露出した岩盤も熱で溶け出していた。
「こんな時に飛竜種とは、骨が折れるな」
「大丈夫だ、問題ない」
飛竜種との戦いのセオリーは、何よりもまず地面に撃ち落とすこと。
「鍛治スキル【収納】」
マキナはスキルを発動させ、右手にボウガンを装備する。
――迅雷弓ミカヅチ。
稲妻の意匠が施された、対飛翔モンスター用の武器だ。
「俺が引き摺り落とす」
ミカヅチをワイバーンに向け、放つ。
繰り出されたのは巨大な電撃の矢。
そしてそれは分散し、大量の矢になって振り掛かる。
ワイバーンは避けようとするが、広範囲にまで及ぶ矢の雨がそれを許さない。
翼に穴が開き、胴体に2本、3本と刺さる矢が増えていく。
ギャギャギャア!?!?
ズシン、と雪の地面に落ちるワイバーン、しかし流石ドラゴンだけあってまだ少し息がある。
「これだけやれば充分だろ、後は任せていいか?」
「君は本当に底が知れんな」
ベローネはストームブリンガーを両手で構えた。
「……参る!!」
そして、駆ける。
普通の人間ならば目で追うことが出来ないスピード、雪の地面をもろともしない。
アリアのオルトロスとは違い、ブリンガーには素早さを上げる効果はない。
ベローネ本人の身体能力の高さが窺えた。
ギャギャギャア!!!!
ワイバーンの渾身のファイアブレス、しかしベローネは避けることなく突進する。
「甘いな!!!!」
ストームブリンガーを振り抜き、炎を斬り裂く。
ファイアブレスは枝分かれするように左右に散り散りになった。
あらゆる魔法耐性を持つストームブリンガー、それは魔法の原理で繰り出される竜のファイアブレスも例外ではない。
「はああああ!!!!」
そして全身を切り刻み、
ワイバーンは力なく倒れた。
「すごい……これが、ストームブリンガー!」
鎧のような竜の鱗も、まるでバターのように切れる。
「どうだ、俺の武器は」
「……最高だ。君の武器も、君自身もな!」
ベローネは赤い長髪を舞わせながら言った。
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