おばあさんは色々考える
くだらない小ネタばっかり浮かんできて本編が進まない病発症中です。
ちょっとシリアス入ります。お約束ではありますが。
あれから数日。
小さな体
思い通りにならない声
初対面なのに慈愛に満ちた美女
それから・・・
肌触りの良い衣服
上質な布地のうさぎ
滑らかな木の檻
私を取り巻くすべてが異質極まりない。
ここまで来ればさすが私も分かる。おそらく私は私であって私ではなくなったのだ。老婆は赤ん坊にならないし、知らない場所に一晩で移動したりしない。今の私の手に届くすべてが上質でここに来る前の生活ではとても手に入れることはできない。どころか、ここまで上質のものを生産できていたのかもあやしい。
ここは私が生活していた国よりも技術が大いに発達している。かつ、美女の体型を見るに食の充実しているようだ。まあ、これに関しては彼女が上流階級の人間である、という可能性も捨てきれないが。
彼女の話す言葉も不可解だ。「あまねちゃん」とはおそらく私の呼称だと推測できるが「まま」やら何やら私が知っている日本語とは大いに違っている。 ここは日本ではなく海の向こうにあるという国々のいずこかと考えられる。
つまり、まぁ、私は・・・
ポックリ逝ったんだろう!
死して私の魂が新しい器に入ったと考えれば、私が赤ん坊になっていることも、日本にいないことも説明できるのではないか。
―――――――――――――――
それにしても、ポックリ。
前にあの人とも話したことがあるが、これは理想的な死に方ではないだろうか。大病に苦しむこともなく、人生に満足しきって抜け殻のように生き続けるでもなく。多少の未練を残しつつ、周りには突然の別れに大いに悲しんでもらえる。
私も年だったしいずれはこの別れが来ることは分かっていた・・・
分かっては・・・いた、けれど・・・こんなにも胸が締め付けられる。
結局料理は上達しなかった。
仕事が未完成のままだった。
子供の教育をちゃんとできなかった。
・・・あの人と、もっと生きていたかった。
たくさんの未練が襲ってきて、私は今世で初めて
自分の意志で泣いた。
(´A`。)ほろり