宝石泥棒は恋敵(1)
突然の集中豪雨に喜びを感じる。
日中の暑さを雨が洗い流し、夕方の涼しさを作ってくれる。ただし、中途半端に降ると蒸し暑い夜になってしまう。
お店の軒先で雨宿りをしながら空を見上げる。
「早く止まないかなぁ」
「しっかり降らないと、涼しくならないよ」
雨に濡れた髪と白いワンピースに視線を向ける。
僕はリコと2人で王都に旅行に来ている。残念ながら仕事を兼ねてだ。
「ショウ、見てみて!綺麗だよ」
「宝石、リコは興味あるの?」
「もちろん、ちょっと見てみようよ」
「でも、Gの前にゼロが並んでるよ」
「見るだけよ」
雨宿りする店を間違えた。
2人で宝石店に入った、店の店員は僕達を冷やかしと判断して声をかけない。
今日は観光の予定なので、防具は装備してないし弓も宿に置いている。しかし、エルフの宝刀に万が一の事があってはならないので、白夜は装備している。
『武器を持って宝石店に入る・・・大丈夫なのかな』
『知らないけど・・・何も言わないから』
小声で話しながら、店内の見て回る。
たくさんのランプの光が宝石を輝かせ、美しい煌めきを演出している。
『誕生日プレゼントにしても高いなぁ』
『ショウ、これ10000Gだよ』
店員はこちらを気にしてないが、奥にいる男達がこちらを見ている。
用心棒かな?と言った雰囲気の男が3人、様子を・・・ヴァン!
「やっぱりショウだった、もう、こっちに着てたのか」
「何してるの?明後日の仕事と関係あるの?」
「違う、小遣い稼ぎさ、それより、その子は?」
「前に話した、彼女のリコ。冒険者仲間のヴァン、剣術士だよ」
「こんにちわ」
ヴァンは僕の肩に手を置いた。
『カワイイじゃん、俺の彼女もカワイイぜ』
『え!彼女できたの?』
先日、王国軍から依頼の手紙が届いた。
内容は、宝石泥棒から女王陛下のティアラを盗むと言う予告状が届いた為、王宮の警備に付く事と竜族との交渉の報酬を取りに来て欲しいだった。
「報酬か、忘れてました」
「お金の事はキッチリしないと駄目よ」
「でも、困りました。8日後の予告当日がリコの誕生日なんですよ」
「あら、だったら一緒に行けばいいじゃない」
「王都で放置するのは・・・うーん、どっちも・・・同じかな」
「安心なさい、泥棒は夜、お約束事よ」
エミリさんはまだ帰っていない。4ヶ月以上も出かけている。
ポルトトにダリルを迎えに行った時、魔族が絡んだ事件に遭遇した。アグレイさんも偶然ポルトトに来ていて、『パパと魔族を追うからダリルは1人で帰す』との手紙が着いた。
しかし、ダリルは帰ってないので花屋のフローラさんは不機嫌、さらに『30前の男を迎えに行くなんて、随分長い花婿修行だな』トーマスさんの発言で、ご近所付き合いがピリピリしている。
「ショウちゃんにお店を任せて、私が行こうかしら」
「それは、ちょっと」
「フフフ、冗談よ」
リコは以前から王都に行きたがっていたので問題ないと思う。問題は両親だ。
いざ、話しをすると、即、了解して王都で恥ずかしくないように、新しい服を買いに行った。僕にも『旅の商人の様な服ではいかん』と流行のシャツとズボンを買ってくれた。
「なるほど、それで『田舎のお坊ちゃま』みたいな服なんだ」
「僕は『昔の紳士の休日』と名付けたよ」
「馬に乗ってゴルフするヤツな」
雨が止み、4人で夕食へ行く事にした。
ヴァンの彼女は魔導具の店で働いている。閉店後も仕事があるので、行く店を伝えて酒場で先に始めている。
この国の成人年齢は15歳なので、未成年者はハーブティーを飲んでいる。
「あ、来た、サンドラ!こっち」
長い髪を団子状に後でまとめ、バンダナを巻いている。頬のそばかすが可愛らしい少女だ。
「俺の仲間のショウとその彼女のリコちゃん」
「サンドラです。魔技師見習いです」
「ショウです。錬金術師見習いです」
「リコです。道具屋見習いです」
「俺は見習いじゃないぜ」
サンドラはリコと同じ歳だった。
リコは明後日、サンドラは秋に14歳になる。見習いが3人で歳も近いと、話しが盛り上がる。特に苦労話しに花が咲く。
「魔技師ってどんな事するの」
「魔導具を作る仕事だよ、学術スキルが低いから、雑用ばっかりで・・・」
「配達とか大変だよね」
「そうそう、紙って重たいのよ」
「魔導具は高いから、違う重さがあるよ」
「薬も同じだよ」
「ショウさんは薬剤師の修行もあって大変ですね」
「学術スキルは数学と化学だから、基本的な事は似ているよ」
「リコさんは父親が師匠ってどうですか」
「リコでいいよ」
「じゃ、私もサンドラで」
「父親でも厳しいのよ、説教は長いし」
「うちの師匠も厳しくて、この前なんか頭から水をぶっかけられたよ」
「僕も熱湯かけられたな」
「え?熱湯!厳し過ぎるでしょ」
「耐性強化って言って、修行の1つだよ」
盛り上がる3人の横でヴァンは退屈そうにしている。
話題を変える為、宝石泥棒の事を聞いてみた。
「怪盗アレクね。今この話しで持ちきりよ。怪盗アレクは悪人からしか盗まない正義の盗賊なの」
悪徳商人が大切にしている宝石を華麗に盗んで懲らしめるの。大抵の悪徳商人は脱税とか密輸をしているから、アレクの予告状が来ると税務官に目を付けられる。泥棒は犯罪だから衛兵が警備に来るでしょ、その時に密輸品が見付かったりして、黒い商売がばれてしまう。
「アレクは盗みが目的ではなく、悪徳商人を世間に知らせるのが目的なのよ」
「へー、あれ?今回は女王陛下の」
「シー、耳かして」
『だから、女王陛下に黒い交際があるって、噂になってるの』
「なるほど、明後日の仕事が楽しみになったよ」
「私と師匠も行くから、よろしくね」
「怪盗アレクの予告状のおかげで、俺達知り合ったんだぜ」
「へー、僕達は『人さらい』のおかげだよ」
「ショウ、それは言わないでよ」
「え!なにそれ、聞きたい」
話しが盛り上がり、4人で夜遅くまで語りあった。




