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第3話 美の女神と召喚士と召喚獣

<むぅ。つまり昴広は、ここリンドグレーンではなく別の世界のチキュウにあるニホンという国からきたというのか…。>


僕の話を聞き終えると、フェンリルさんは少しの間考え込んでポツリと言葉を漏らした。


まぁいきなり別の世界から来ましたなんて言われたら混乱するよね。僕もはじめ信じられなかったし。

あ、話している最中に名前を言ってないことに気づいてちゃんと自己紹介したよ。

自己紹介忘れてたとか人と会うことが多いサラリーマンとして失格だよね…。


コクリと首を縦にふって肯定する。


<信じ難い話だが、隣国では勇者召喚という悪しきことをしているというし、事実そなたのステータスにある称号に異世界人と書かれているから信じるしかないのだろう。>


パタンパタンと綿毛のようにふわふわした長い尻尾を遊ばせ、僕の目の前にいまだあるステータスに視線をむけた。


<ほぉ…。美の女神の加護を持っていってるのか。道理でいきなり髪が長くなった訳だな。>


何を言ってるんだろうか?僕の髪は短いはずなのだが…?


フェンリルさんは眉を寄せふしんげな表情を浮かべる僕をチラリと横目で見ながら尻尾で僕の耳の横髪をすくう。


「…え!!ほんとに髪伸びてる!!何この髪の長さ!」


いつの間にか僕の髪が腰ほどの長さになっていた。

唖然とした顔で伸びた髪を掴み凝視する。


動転して髪が伸びた事に気づかないとか…。

落ち着いて周りを見ようよ僕…。


ダメダメ過ぎて涙が浮かんできたが、泣いても意味が無いとグッと堪える。


<美の女神は気に入った者でないと加護を与えず、確か聞いた話だと加護持ちは生涯長髪だったと聞いたことがある。女神は髪が長いものの方が好きなのだろう。>


フェンリルさんは慰めるかのようにスリスリと顔を擦り寄せてきた。

毛先が首すじにあたってくすぐったく、思わずクスクスと笑い声がもらす。

美の女神様が僕のどこを気に入ったのかは分からないが、加護を与えて頂いたことは感謝しようと心の中で美の女神様に手を合わせる。


<いきなりこのように何も無い場所にきて心細い思いをしたな。俺が召喚獣になったのもなにかの縁かもしれぬし、ここで生活するうちはついててやろう。>


サラッと普通のことのように言われ、ハッとした表情でフェンリルさんの方に身体をむけた。


「あの!この世界のことも全く謎なのですが、フェンリルさんが召喚獣とはどういうことなのですか??あとついててくれるってどうしてですか??」


勢いよく向いたので、フェンリルさんが怖めの顔から目を大きくひらき口をポカンと開けた可愛らしい顔で驚いでいた。

あまりにも勢い良すぎたなと少し反省する。


<この世界のことはおいおい教えていく。


召喚獣とは昴広のように召喚士と呼ばれる者達が俺のような魔獣や精霊、妖精などと戦うかなにかしらで認めさせたりして契約し、配下になったもののことをいう。俺の場合は稀なことなのだが先程頭をうった際に契約したことになったらしく、今はただのフェンリルではなく昴広の召喚獣ということになっているからこの先昴広が死ぬまで一緒ということになる。>


僕がなにもしらないことを知っているので簡潔にわかりやすく説明してくれたのだが、頭をうたなければフェンリルさんを配下などにすることはなかったのではないかとふと思い、ザッと顔を青ざめさせた。


「ごめんなさい!頭をうたずにいたら僕なんかの配下になる必要なんかなかったんですよね!?これどうにかして解除とか出来ないんでしょうか?!」


ガバッと頭を下げながら謝る。


<昴広が気にすることではない。俺が頭を下げたときに当たったのだし、先程も言ったようにこれも何かの縁。

見るからに魔物を倒したりなどできないだろう昴広だけだと俺が心配なのだ。

フェンリルは長寿だからほんの一時、昴広が生きている間そばに居ることに全く問題はない。>


鼻先で降ろされた僕の頭をあげながら安心させるように優しげな声で否定された。

事実、約500年あまり(子供の頃を抜かして)独りでいたので本心からフェンリルさんは言っているのだが、昴広はオロオロとフェンリルさんに目線をむけながら頭を悩ませる。


「うぅ…あのじゃあ、本当にいいなら僕と一緒にいてくれませんか…?フェンリルさんがいうように平和な所で暮らしてたので魔物と戦うとかできないし、その前にこのままだと街にすらつけずにのたれ死んでいたかも知れません。」


数瞬した後、意を決して恐る恐るフェンリルさんに頼む。

フェンリルさんのいうことは事実であり、僕1人では不安なこともあたっている。

魔物もいるのなら僕だけでは生きていける訳がなく、出会った瞬間に、死ぬところしか思い浮かばない。


<承知した。これからよろしく頼む昴広。>


「僕の方こそ足でまといにしかならないと思うけど、よろしくお願いします。」


お互いに挨拶を交わしながら、微笑みあう。


<む。そうだ、ここを移動する前に俺に名前を付けてくれないか。昴広のステータス画面の俺のところを押したら変えられる筈だ。

フェンリルというのは種族名であり自分の名前ではないから昴広が決めてくれ。>


一緒に過ごすなら名前がないと不便だろうとフェンリルさんに促され、ステータス画面にあるフェンリルさんの文字を指で押してみる。



うーん…。フェンリルさんがこれから使っていく名前だからちゃんとしたのをつけないと失礼だよね。


独身で子供もいないので名前などつけたことなどなく、なににすればいいのかと頭を悩ませる。

今日はいつも以上に頭を酷使しているからなのか、なかなかいい名前が浮かんでこない。


さわさわと気持ちの良い風がふき名付けられ待ちしているフェンリルさんの体毛をゆらすのをみて、昔父から聞いた単語をふと思い出した。


「スハイル。スハイルって名前はどうですか?

僕の誕生星の名前にスハイルって入ってて、輝いているもの・栄光あるもの・美しいものって意味があるんです。

フェンリルさんのふわふわとした黒毛が、太陽の光でキラキラしてて綺麗だなって思ったので、浮かんだのですがだめでしょうか…?」


ドキドキと緊張しながら問いかける。


<む。スハイルか。名前の意味が大袈裟すぎるが気に入った。それにしてくれ。>


フェンリルさん、いやスハイルさんはパタンパタンと嬉しげな様子で尻尾をふる。


気に入ったという言葉に頬を緩めながらスハイルさんの名前を変える。


《名前をスハイルに変更しますか? YES / No》


ポンッと目の前に現れた問いかけのYESを押すとステータス画面にあった種族名の横にスハイルと名前が入っていた。


<名前もかえれたようだし、そろそろ昴広と同じ人種が多くいる所にゆくか。ステータス画面はステータスクローズと言えば消える。>


横で見ていたスハイルさんは伸びをしながら立ち上がり、僕がステータス画面を閉じるのを横目に確認し歩き始めた。



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