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事の顛末


 上空で視力を強化して、城下町を一望してると、南と西の大きな建物からどぉんという鈍い大きな音が響いて、砂埃が立ち上がる。


「あそこか、キース、お前は殿下を」


「わかってる!」


 追いかけて来たケンダルに答えた時はすでに、キースは西で立ち上がった砂埃の中へと突入していた。男たちの怒鳴り声が響く中、魔力で探知をかけ、ルテールの居場所を探っていく。


 砂埃が酷い中、あちこちで魔術陣が発動するときの光が煌めいている。何が起こっているかはわからないが、恐らく魔術陣を使っているのはルテールであり、彼が優勢だということは確実だった。向かってくる輩は、敵、味方関係がない。ルテールを危険に置く者たちは、すべてがキースの敵である。


 明らかに民間人も混じっているので、殺すことだけはせずに、その骨を折って動きを止めて進んでいく。数階建てだった建物の地下への階段を駆け下りると、妖しさ満点の扉が現れた。鉄製のそれは簡単には開いてくれなさそうなので、迷わず剣に魔力を纏わせて全力で破壊し、ルテールの気配がある室内へと突入した。


「テール!」


「誰だっ!?」


「ティジー、誰かが来たぞ!!」


 中には縄に掛けられた男たちと、それを見張るように武器を持ちながら警戒している者たちが溢れかえるようにしてそこにいた。入口を守っていただろう男たちが腰を抜かしているのを見て、近くにいた見張りの者が剣を手に一番奥にいる青年を振り返った。


 茶髪の青年が振り返れば、紫水晶の瞳がにんまりと三日月型を描く。


「早かったな、キース」


「早かったなじゃない、テール!!

 お前は何をやっているんだ!?」


「賊討伐。

 二か所同時征伐したから、これで大人しくなるだろ。

 ・・・ああ、よかった、ルーも終わったってさ」


 通信用の魔道具を使い連絡を取っていたのだろう。ルテールが何でもないように告げる。ルイーゼが無事ということに安堵を覚えながらも、キースは大部屋の地下室を見回した。


 あちらこちらに魔術陣が敷かれ、そこに光を纏って人が落ちてくる。おそらく、魔術陣を使用された男たちがそこに転移するように仕掛けてあるのだろう。悪人ほいほいっていう新しい戦略だよ、と楽し気に言うルテールに、キースは頭を抱えたくなった。


 この青年は、どうみても第一皇子には見えず、それを手伝っている輩は、この辺りの若者警邏隊の者から、腕っぷしのいい住民まで様々な背景を持ちながら、賊に辟易していた者たちらしい。彼らは勿論、ルテールが皇子だと知らないだろう。


「で、この賊はどの案件の奴らだ?」


 建物を全て点検し、どこにも残党がいない確認を手伝ったキースは、戻るなり賊たちの身なりを検査しながらルテールに問う。城下町で燻っている事項はいくつかあり、この規模だとすると色々な問題に首を突っ込んでいる賊だということは想像がつくが、それがどこまで何をしていたかはわからない。ルテールは、キリがないと肩を竦めながらも、説明を始める。


「まず、この頃頻発してた、幼児誘拐が僕やみんなが動いた理由。

 お金を脅し取られる程度なら、まだなんとか行政を待つだろうけど、幼児誘拐は今すぐに動かないといけないからな。

 で、調べたところ、奴隷売買にも手を出してるそこそこでかい賊だったから、一斉摘発するためにずっと様子を見てたんだ。

 根城が二か所あって、西と南で競う様にして幼児を誘拐してたから、僕とルーが幼子に変化して入り込んで取りあえず捕まってた子たちの安全確保をしたのが三日前だ」


 その時に、二人ともが城にいないのは問題となるので、違うことを目的に開発していた身代わり魔術を使い、城にルテールの身代わりを、南の根城にルイーゼの身代わりを送り込み、その様子を遠隔魔術で逐一ルテールが観察していたらしい。そのような器用で破天荒なことを思いつくのは、この双子しかいないだろう。


「で、ついさっき、身代わりの魔力が切れたから摘発に動いたわけ。

 元々、この夕方に大会議がそれぞれの根城で行われるのがわかってたから、丁度いいタイミングだった。

 こういう賊とかは、大会議とかいうのに参加しないヤツは裏切り者と認識される習慣があるからね、一斉に捕まえられるわけだ」


 身なり確認を終え、警邏隊所属の青年たちが事件の収集をしてもらうために騎士団へと通報をしに出ていくのを見ながら、ルテールはにっこりとキースに笑って説明を終えて見せた。


「僕は元騎士団のティジーだからね、頑張ったわけだ」


 仔猫の名前を自分の偽名に使うあたりは適当だ。ちなみにルーはルティだよ、僕が命名したんだ、と胸を張るルテールの額を小突いてしまったのは決してキースの責任ではないだろうと思いつつ、キースは再びルテールに協力しに集まったという男たちをまじまじと見まわした。


「にしてもこいつら、ツイてると思うんすよ、俺」


 ルテールの友人だと紹介され、仲間と認識されたキースに男たちが話しかけてくる。


「どこがだ?」


「だってな、兄チャン。

 こいつら、南に行ってたら捕まるだけじゃなくて、骨ばっきばきにされてるぜ?」


「あっちには腕っぷしの強い姉ちゃんが、暴れたりない奴らを纏めて連れてってるからな!」


「死なねえだろうけど、大怪我してるのは絶対だな」


 腕っぷしの強い姉ちゃんに心当たりがあったキースは、ああ、と今度こそ頭を抱え込んだ。


「ルーは昔から、暴力事にも強いからなぁ。

 南は大変だと思うよ、ほんと」


 くすくすと笑いながら会話に参加するルテールに、一気に男たちが盛り上がる。平民というのにも関わらず、ルテールはさして気にした様子もなく、同じ目線で話し出す。


 王宮で腹の探り合いをしている時よりも、よっぽど生き生きとした姿に、キースは思わず目を細めた。


 貴族の中にいるよりも、平民の中で慕われている方が輝く。そんな双子だからこそ、キースは何があってもやはり二人を主としたいと思ってしまうのだ。


「ん、なに、キース?」


 じっとキースが見つめていることに気が付いたルテールが、平民に向けていたその表情で、キースを見た。


「・・・いや、なんでもない」






 騎士団が大急ぎでルテールたちが捕まえた賊を捕え、西の整理が終わり、南へ移動すると言うのでルテールと共にそちらに向かえば、そちらは地下というものはなく、目の前にある大広場に賊たちは縄でぐるぐる巻きにされて転がされていた。賊たちは皆、一様に伸び切っており、どこかしら変な方向に曲がっているような状態である。


「うぃー!!

 お疲れさんです、ティジーさぁん!!」


「いぇーい!!」


「ティジーさぁんとぉ、ルティ姉さぁんにぃ、かんぱぁい!!」


 そして、捕縛に協力した男たちは、町の人々を巻き込み、すでにできあがってしまっていた。近くの住人たちは、賊の根城とは知らなかったが、賊がこの辺りの治安を悪くしていることに眉を顰めていたので、それが取り払われたと大喜びで皆で食事を持ち寄り、大広場で一種のお祝い状態になってしまったのだ。


「ルティちゃん、こっちおいで!」


「姉ちゃんかっこよかったよ!」


 男に臆することなく立ち向かったルイーゼは、物語の中で悪役をものともしないヒロインのように見えたのだろう。奥さんや子どもたちにわいわいと囲まれて、彼女も楽しそうに話をしている。


「ルー、お疲れ」


「あ、お疲れ様、テール。

 キース、来てくれたのね」


 ルテールが声をかけると、ルイーゼが輪から抜けてこちらへ近づいて来た。ルイーゼは魔力で体強化をすることで、男たちを軽く蹴るだけでも骨を折るほどの威力を得ている。だが、それは体に大きく負担をかけているのだ。体内出血してしまっている手の甲を見つけたキースは、迷わずその手を取って、そっと治癒魔術を施す。


「・・・たのむから、体を傷つけるようなことはするな」


「ありがと、キース」


「あと、勝手に自分たちで事を起こすのは止めてくれ」


 双子が自分たちで事を起こす理由は分っている。民の声は中々上まで届いてこない。届いて来ても、それを対策するには面倒な手続きを踏まなければならなく、重要な件であったとしても、迅速に事が動くことは少ない。だから、彼らは民に混じり、この国に住まう者の一人として解決しようと動く。だが、それにしたって近衛騎士であるキースに少しぐらいは話を通してくれてもいいはずである。


「さあ、それは約束できないな」


「やっぱりたまにはこういうことしないと、楽しくないもの」


 顔を見合わせ、似た笑みを浮かべた双子は、どうみても反省していなかった。


 再び何かあれば事を勝手に起こすだろうことを予想したキースは、微かにため息を吐きだして次の為の対策を取らなければならないことを悟ったのだった。





「幼馴染の護衛騎士急募ねぇ」


「キースの幼馴染って、たしか最北領を治めてる侯爵家の令息令嬢よね?」


「騎士団魔剣騎士隊に一人、魔術師団に一人、あとは娘が一人社交界の白百合って呼ばれてる子がいるな」


 翌日、遅番であったキースが、昨晩に書いた求人をあちらこちらに配ってからルテールの執務室へと向かうと、そこにはルイーゼの姿もあり、二人で一枚の紙を覗き込んでいた。


「侯爵家の子どもなら、専属騎士ぐらいいるでしょうに、キースは過保護ね」


「あまり過干渉な男は嫌われるよ?」


 ひらり、とどこからか手に入れた、キースが作り上げた急募の紙を見せつけ、からかう様に笑う双子にキースはひくりと米神をひくつかせた。


「キースも大変だなぁ・・・

 アリアナ嬢には、父親である侯爵がしっかりと専属騎士をつけてたから大丈夫だと思うけど」


 ケンダルがのんびりとした口調で、可愛い弟を見るような目を向けてくれば、ぷつりと何かが切れた音をキースは聞いた。


「護衛騎士不足は、ここに決まっているだろうっ!!」


☆追記あり☆

<急募>幼馴染の護衛騎士を募集 (担当 近衛騎士団所属 キース・レイナード)


 要項 幼馴染の護衛騎士を募集します


 条件 どんなことでも最後までやり遂げられる自信のある者

    魔剣騎士が好ましいが、上記を満たすのであれば、騎士種は不問


 給料 近衛騎士と同じ料金段階


 特筆 とにかく心が強く、折れない自信がある騎士を募集します

 


 追記 現実をしっかり見て、護衛騎士不足を切実に実感できる騎士のみの募集です





 読んでくださりありがとうございました。

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