ランキング
あの誓いからどれほど月日が過ぎただろう。
晴人はそう思った。もう一週間は人を殺さず逃げ回る日々を繰り返していた。生き残るとは言ったものの、全く行動に移せず気づいたら、残りのポイントは半分以下だった…
そんな自分を情けないと思いながら、着々と迫って来る死の恐怖が晴人を襲う。
ポケットからスマートフォンを取り出し時刻を確認する。23時17分。
(今日も何も出来なかった…)
この後悔を何回、経験しただろう。自分の残りポイントを見たら7ポイントしかなかった。そして、もうすぐでその数字は6になる…
人を殺せ。簡単に言われても自分には出来ないと思う自分と、やらなくてはいけないと促す自分が心の中で葛藤している。
この数日間、晴人は考え続けていた。人を殺す事は罪なのか…
しかし、自分で考えて、考えて、考えても答えなど出ず、ただ人を殺す行為を自分で正当化したいだけだったと思っていた。
ポケットからアラーム音が聞こえ我にかえる。日付が変更したら鳴るように設定していたのだ。
晴人はスマートフォンを取り出し、アラーム音を止める。その時、メールが1件届いた事に気づく。
スマートフォンをタップし未読メール開く。件名にはランキング発表と書かれていた。
(これは…ルールに書いてあったあれか!)
月の終わりにポイントランキングを発表します。
その文章が頭に浮かび、すぐさま未読メールを読む。その内容は、ずらりと被験者名と獲得ポイントが記載されていた。
晴人はその数字に驚く。上位層は軽々と50ポイントを越えていた…
下にスクロールし続けてもポイントは自分の倍以上の数字が並んでいる。
焦り。晴人は自分の名前がいっこうに出てこない事に対して焦っていた。額からは汗が吹き出し、スマートフォンを握る手は手汗で濡れていた。
ようやく自分の名前を見つけるがその名前は最下位層にいた。
思ってもいなかったのだ。他の被験者が簡単に人を殺すことを。そして、思い込んでいた。自分と同じように人など殺せないと。
劣等感が晴人を襲い、全身の生存本能が無意識に晴人の体を動かす。長い間、しまっていたサバイバルナイフを取り出し、呟いた。
「誰か殺さないと…」
もう迷いなどは無かった。3ポイント払い、自分と同じように一人も殺しておらず、弱そうな感じの奴を選び個人情報を購入する。
「こいつだ」
敵の位置を確認して、電車に飛び乗る。一連の動作はとてつもなく早かった。そして、電車の中でまた彼は呟いていた。
「殺さないと…」
そんな晴人の口元は何故か笑っていた。