平和のためには…
平和、経済的に豊か、技術力が高い、礼儀正しい…
日本の世界から見たイメージはどれも悪いものはない。
でもそれは昔の話。今は違う。
世界が持つ共有イメージそれは…
野蛮。
戦後、日本は大国に肩を並べる経済国になった。
しかし、ある事件が起きる。それは原因不明の犯罪率の急激な上昇。
毎日のように凶悪な事件が起きてはその次の日も事件が起こるを繰り返しそのたびにメディアに報道されこの印象がついた。
さらに国の借金の増税により大幅な増税が必要になった。
これに対し国民が猛反発。一部の地域では暴動が起きるなど国はどんどん悪い方向へと傾いた。
危険な国になれば観光、貿易、外交、内政まで幅広い範囲に影響をおよぼすため、国は犯罪率の低下のため原因解明に力を入れ始めた。
しかし、犯罪者の共通点が全く見つけられず解明活動は難航した。
そんな中、国は一つのものに目をつけた。それは人々の心に問題があるのではないかというものだ。
そして国は金と人を費やして原因解明の為の研究グループを作成した。
「資料後ろまで回りましたか?」
ここは日本屈指の研究機関、「日本犯罪心理学第一研究機関」である。
そして今話しているこの男、木島遼は今回の研究のリーダーである。
「えーと、じゃあ第一回ミーティングを始めたいと思います。まず資料に書いてある実験方針を見てください」
そう言われ周りの人々は資料に目を通す。が、
それを読んでいくにつれ驚愕の声や表情が表れていく。
そして室内は騒然とした空気がただよい始めた。
「あー静かに。質問は挙手で」
木島が場を静めると一人の男が手を上げた。
「どうぞ」
「あの、これは冗談ですか?」
男は少し笑いながら問う。
「いいえ、冗談ではありません。これが一番効果的で結果が出ると考慮した上でこの実験方針になりました」
それを聞きさらに人々がざわつき、質問した男が声を上げる。
「確かに効果的であるかもしれません!しかし、道徳的には許されない行為じゃないですか!」
男は机に資料を叩きつけ、方針の方向性を訴えた。それと同時に多くの人々が反対の声を上げ室内は混乱し怒声が響き合う。
木島は「ハァー」とため息をつき、その光景をただ呆然と見続けてたいた。そして木島は殺気がある声で言った。
「黙れ」
怒声で溢れていた室内はだんだんと静寂を取り戻した。それを見計らい木島が説明を続ける。
「今から説明するから聞け」
木島が考える実験方針は単純にいえば
犯罪者同士の殺し合いである。
それは犯罪者の殺しの心理を直接的に理解でき原因の解明が簡単に行えるためである。
「それを基礎として考えて多くのバリエーションを加える。例えば犯罪者の性別や年齢をかえて子供も参加させるとかだ」
木島が話す実験方針は残酷なものだった。
しかし、そんな風に淡々と説明を続ける木島の姿に人々はだんだんと取り込まれていった。木島が話せば話すほど人々は実験内容に感動していき、気がつけば反対の声は一つも上がらず皆、真剣に木島の話に耳を傾けていた。
「まだ決定じゃないがこんな感じだ」
20分で全ての説明をし終えた木島はやりきったかのように椅子に座り込んだ。少しの間が空き静かさが室内を包む。
すると、一人の者が拍手をし始める。それを見た他の者達がつられるように拍手を始めた。
最後には全ての人が、あの反論していた男までもが木島にいつの間にか取り込まれ狂ったように拍手をしていた。
「じゃあ、皆賛成ということで」
そう言うと人々は座り込む木島を見つめ続けながら今日一番の拍手を室内に響かせた。
木島は笑いながらその姿を見ていた。その笑顔はもう人ではないような、狂気的な笑顔だった。